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トーマたちは王都に着くなり、すぐギルドに向かい報告を。


それから報酬の明け渡しが行われ、途中で依頼を放棄した人物たちの分まで貰えるのかその金額は1人頭大銀貨2枚となった。


どうやらそれはトラスタたちからすれば、大金であったようで、「これで新しい剣が買える!」「魔道具が!」「もう少し可愛い服とか…。」「…王都のお菓子…ごくり…。」というように飛び上がるほど喜んでいる者もいた。


報酬が渡されたのを確認したメアとリアはというと、トーマに明日、買い物に行くからと伝えて、馴染みの宿へと…。


そして、トーマはというと、なぜかトリギースに捕まって、ギルドマスターに挨拶をするべく、ギルドマスター室へと連れて行かれた。


トリギースが呼ばれただけだというのに…。



「失礼します。待たせたな…って、ヘイズ爺…なんでここに?」


そこにいたのは、3人。


割合は女性2人に男性…というか、爺さんが1人。


魔法使い風のローブにとんがり帽子を被った、立派な顎髭の、彼の名前はヘイズ。Aランク冒険者パーティー【ヒロイックエイジ】の治癒魔術師で、かつてトーマを囲んでリンチしようとした連中の1人だ。


「やれやれトリギース、ようやく来よったわい…って、おお!トーマ、よく来たのう!!」


「久しいな、爺さん。」


まあ、リンチというのは正しい表現ではない。あの戦いでやる気だったのは、トリギースのみ。他はというと、それほどやる気に満ちていたわけではなく、付き合いの延長程度だったので、トーマとしては他のメンバーに対して、特に思うところなどなかったのだ。


「…なんか2人して俺に対しての対応と違いすぎないか?」


「いや、そんなこと…。」


「まあ、そんなこと…。」


「ないとでも言うつもりか?」


「「いや、ある。」」


返答内容が被った。トーマは言わずもがな。ヘイズの方もどうやらトリギースに何かしら思うところがあるらしい。おそらく戦闘狂的振る舞いあたりで何か被害にでも遭ったのかもしれない。


「……。」などと、トリギースが無言の圧力などを送ってくる。しかしながら、そんなもの最早トーマやヘイズには通用しない。


「さて、トーマやい、トリギースも来た。儂らは先に飲みにでも行くとしよう。」


「ああ、そうだな。」


まあ、俺は酒は飲まないが…とトーマもそれに続こうとしたところ、トリギースに手を取られ、それは一旦中止となってしまう。


「待て待て、トーマ!あとジジイてめぇも待て!アンタがこんなところにいるってことは、なんか嫌な予感がするぞ。」


「?」


「チッ…聡いやつじゃ。ほれギルドマスター、儂はトーマとさっさと飲みに行きたいんじゃ。どうせ必要なのはトリギースのみじゃて、さっさと教えてやっとくれ。」


「あら?もうお話はいいの?へぇ…君がトーマくん?」


そう答えたのは、ヘイズの対面に座る、秘書を伴った、緑みがかった金髪の長い耳を持つ美しい女性、いわゆるエルフだった。トーマ自身何度か目にしたことがあったが、あまり長く会話したことがなく、ほんの少しだけ興味を引かれていた。


「まあ、よろしく。」


「こちらこそ、よろしくね、トーマくん。私はフリッカ。見ての通りエルフのお姉さん♪」


「は?」「なにっ!?」


トーマとしては、年齢的に少し痛々しいと思う程度で、まあ、美人なので許容範囲だったフリッカの自己紹介。しかしながら、2人は何かしら気に入らないことでもあったのか、思わずそんなことを口にし、どうやら彼女の怒りを買ったらしい。


「…アンタら今に見ておきなさい。地獄を見せてやるわ。」


「…なんて冗談じゃよ♪老い先短い老人のジョークじゃ♪見逃してたもう♪」


「お、俺も見逃してくれよ、ババ…フリッカさん!!」


今のトリギースの言葉で引っ掛かりが取れた。


なるほどそういうことか…。


エルフという種族は、以前王都の図書館で目にした本によると、人間より長命な種族で、尚且つ老い難いらしい。


まあ、これ以上は余計な想像か…。


「…トリギース、アンタはどちらにせよもう運命は決まってるわ。諦めなさい。」


「なんでジジイだけ許して、俺は許してくれねぇんだよーーーっ!!」


「なにもヘイズだけ許したわけじゃないわ。ヘイズ、アンタにはしばらく…。」


どうやら、じ〜〜〜と見続けるトーマの視線にフリッカは気がついたらしい。


ほう…そういう本性が…と、疑問の解消から人格分析に移っていたトーマが、フリッカには二面性があるとそう断じようとしたところ、彼女は取り繕ってきた。


「…な〜んてウソウソ。」


そう、フリッカが口にすると、トリギースたちは即座に期待に満ちた言葉を発してきた。どうやらまったく反省の色がないらしい。


「えっ…それじゃあ♪」「それならば♪」


「あっ…それは本当だから、マジで。」


「「そ、そんな…。」」


まあ、そうなるのが適当か…。


「でもでも、私は怖い人間じゃないんだぞ、トーマくん♪そこら辺はわかってね♪」


「…ああ、わかっている。そもそも悪いのはコイツらだ。女性の年齢に触れるのが禁忌たることはガキでと知っていることだろう。」


トーマは子供の頃に学んでいた。育ての母(若作り)に育ての父が余計なことを言っていたのを見て…確かあの時は顔の形が変わるのではと思うほどに、物凄くシバカレていた。


「うんうん♪」


「それに相手は美人に変わりはない。それをあるがまま認めるべきだ。」


女性の美に対して余計なことを言うものではない。それもまた、育ての父が叔母…お姉さんに対して、『最近化粧が濃く…あっ…。』余計なことを言って似たような目にあっていたのを見て学んだ。


「うん♪トーマくんは良い子♪ホントわかってるわね♪(どこかの若造と老害と違って。)これからもよろしくね♪」


「ああ。」


これでトーマとフリッカのはじめましてはこれで終わり。


そして、ようやくトリギースが呼ばれた要件が単的に伝えられた。


「さてさて、本題だけど…って、勿体ぶる必要もなく一言で終わるわね…トリギース、アンタの主人が明日の朝一で帰ってくるわ。」


「………………へ?」


さてさて、トーマはヘイズに誘われるまま、酒場へと連れて行かれた。


トーマの目の前には、もちろんノンアルコールな果実水や、茶などの飲み物が置かれ、それで一杯乾杯するなり、色ボケが進行しているヘイズはいつの間にやら呼んだお姉ちゃんたちと別のテーブルへ。


トーマも同じく誘われていたのだが、他の人物たちの「ここに居て!」という視線に押されて残ることになってしまった。


まあ、その理由というのは…。



「ううう…なんで…なんで俺がこんな目に…。」


…まあ、こんなことを言っている男がいるからだ。


そう呟いたのは、目元、それに頬と、まるで色でも塗られたように真っ赤なトリギース。


まあ、もう今は見ての通り、完全に酔っぱらっている。


トリギースはこの酒場に来るなり、強い酒を自ら頼み、さらに周りから勧められるがまま、それらを片っ端から飲んでいた。


そんなことをしていたのだ。まあ、おそらく呑まれたのだろう。


…コイツらも面倒だからとひどいことをする。


「ほらほら、トーマも飲んだ飲んだッス!」


そうビンから飲み物を注いでくれる短髪の女性はミシラン。このパーティーのレンジャーである。陽気でいつも笑顔の彼女はどこかで聞いたところによると、可愛いと評判らしい。


「間違って、酒を注ぐなよ。…それでトリギースの主人って誰なんだ?」


「うん♪わかってるわかってるっスよ♪えっと…ね…えっと…あはは♪誰だったっスか、ねぇ、カレラちゃん?」


そう話を振られたのは、魔術師のカレラ。彼女はそれなりに一定のペースで飲んでおり、前者2人のような無様は欠片も晒しはしない。


「ミシラン、飲み過ぎ。少し水でも飲みなさい。」


「え〜、お酒って酔ってなんぼじゃないッスか?そんなことより、カレラちゃんも飲め飲めッスよ!!」


「ちょっ…カレラ、それ強いやつ!!トリギースを潰す用!!」


潰す用って…そのワードだけを聴けば、まるで暗殺でもするかのように聴こえるが、まあ、結論は前述の通りである。


トーマはどうやらカレラはミシランの相手で忙しいと思い、トーマ同様ジュースを嗜んでいる、ヘイズの孫にして、まったく似ていない、純粋そうな真面目な弟子のトリシャに視線を送った。


「コホン、それはSランク冒険者のツララさんですよ。トーマくん。」


「Sランク?…なんでそんなやつの…。」


「あっ、それはですね…。」


聞くところによると、トリギースがその人に例のごとく喧嘩を売り、『もし俺に勝てたら、パシリでもなんでもやってやるぜ!!』と粋がって突撃し、そして無様にも敗北したらしい。


「…なんだ…ただの自業自得か…。」


「…まあ、そうなりますね、あはは…。」



「…ううう…。」


トーマは酔い潰れ、悪夢にでもうなされているであろうトリギースに、内心ながらこの言葉を送ろうと思う。


【俺たちの戦いはまだこれからだ!!】


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