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程良くイカれたこの世界で、俺だけはマトモだと思いたい  作者: 無味あり


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今回の依頼は領主の娘が王都に買い物に行くから、そこまでの護衛。


どうやら試験と聞き、緊張していたのだろう。こんな依頼と聞き、ほとんどの者が気が抜けたような顔をしていた。


しかし、トーマからすれば、試験内容がこの程度のことなのは、当然のことだと思っていた。


それはそうだろう…と。


なにせトーマたち試験を受ける者たちは、Cランク以上でなく、現在Dランクという冒険者基準で1人前未満の者たちである。


誰がそんな人物に、会談に向かう際の護衛や重要な商品を運ぶための…なんてものを頼むだろうか?


それこそ、そんなことを頼むとしたら、その依頼主かギルドマスターの指名でもなければ…と、トーマが思っていると、ふと小さく笑う声が聴こえてくる。


クスッ。


メアリーが上品に口元を隠していた。


どうやら笑い声の主は彼女らしい。


そして、そんな彼女がなぜかトーマのことを見ており、トーマはとてつもなく嫌な予感がした。


すると、メアリーがエマリアに耳打ちし、エマリアがトーマのほうを見ながら、その唇が開かれた。


「そちらの()()()男性、あなたに馬車の中での護衛をお願いします。」


「……あ…ああ、わかった。」


なんと嫌な予感が的中。相手は依頼主、しかもCランク昇格試験のだ。これは断るに断れない。


トーマは無言でトリギースを見ると、彼は腹を抱えるようにして、後ろを向いており、後で仕返しをすることを心に決め、なんとなくトラスタほどではないにしても視線が鋭くなった、一緒に試験を受ける仲間たちの間を通り過ぎ、2人に追随した。



馬車に揺られ、王都へ。


トーマは本当に馬車の中に連れ込まれ、メアリーとエマリアの対面へと座らされていた。


本当にのどかな旅である。


ティスラータを出るなり、わずか1時間で魔物との遭遇戦がすでに3回。


こうして、馬車は何度もその足を止め…、いやはや、これはなんとも記録的なことだろう。余程日頃の行いが悪いやつでもいるらしい。


…と、まあ、ジョークの1つでも考えてみるが、現実問題はどうやらトリギースが言っていたように魔物の動きが活発というところだろう。


トーマ自身、今朝まで相当数の魔物討伐の依頼を抱えていたため、そこら中に魔物がいるのをラッキーくらいに考えていたのだが、馬車の中という、端から見ると守られる側の立場になって、初めてそれを自覚した。


確かに多い…と。


幸いゴブリンなどのそれほど強い魔物たちが出てくるわけではないので、消耗は大してしていないだろうが、遭遇頻度が上がったり、上位種が出てきたりすれば、この旅路は厳しいものになるに違いない。


と、まあ、半分ほどそんな考えごとに頭を割き、無礼にもこの馬車から追い出されようと貴族の令嬢との会話をテキトーに流していたわけだが、どうやらメアリーはその生返事が気に入らなくなってきたらしい。


「ねぇ、トーマ!!」


彼女の顔がトーマの目の前にあった。それも最初は様付けで呼ばれていたのに、もう現在はそれすら省略である。


「…近い。」


…ちなみにこの発言もまた偶然にも一致して、3度目だ。


彼女はトーマがこのようにテキトーに流すなんてことをすると、こうして顔を近づけてくるのである。


それはまるでちゃんと私の顔を見てと言っているようであり、トーマはすでに自意識過剰かと、その考えを投げ捨てていたわけだが、今度もトーマから何も反応がないと、メアリーは大げさに「はぁ…。」と腰を下ろしたと思うと、頬を膨らませていた。


「…まだわかんないの?」


「?なにが?」


「私たち今回が会うの…というか、会話するの初めてじゃないのに…。」


「は?」寝耳に水である。


「さて…どこで会ったでしょう?」


メアリーはこれでもうわかるでしょ?と楽しそうに聞いてきた。どうやら彼女はこれだけ言えば、トーマに思い出してもらえると思っているらしい。彼女の目は、明らかにトーマが正解を答えることに期待していた。


…しかしながら、トーマにはまるで記憶にない。


トーマはマジで欠片もわからないのだが、期待しているメアリーにヒントを求めるのが憚られ、エマリアへと質問した。


「…もしかしてエマリアさん…とも?」


「ええ、それはもう何度も。」


そんな馬鹿な!!


メアリーは長い赤髪の可愛らしい美少女で、エマリアは紫がかった黒髪のクール系美女である。


「メアリーはともかくとして、エマリアさんみたいに綺麗な人を忘れるはずは…。」


そうトーマ自身、思わずメアリーを呼び捨てにするなどさらに雑な扱いして、確かになんとなく覚えのある感覚に首を傾げた。


「…ちょっと、トーマ聞こえてるわよ…。」


「まあ、お上手♪」


「お上手じゃないっ!!」


ガウッとエマリアの発言に噛み付くメアリー。


やはりこの感覚に覚えがある。


すると、エマリアは彼女を恐れるフリをして、トーマの隣へと腰を下ろしてくるなり、トーマの腕を抱きかかえてきた。


ふにゅん。


…この感覚も確かどこかで…。


「きゃ〜♪お嬢様が怒りました〜♪」


「え、エマリアっ!!あなた何をして…。」


「なにって、それは凶暴凶悪悪逆非道のお嬢様がこの幼気なメイドにバツを与えようとしてくるから、助けを求めているんです♪こんな風に♪」


ふよんふよん。


「っ!?エ・マ・リ・ア〜〜っ!!」


メアリーが軽くキレた。


すると、エマリアがさらにきゃ〜♪と悲鳴をあげて、トーマのことを引き寄せてくる。


「…おい。」


そうトーマが彼女のことを見ると、顎でメアリーに指示を出していた。


「?」と、トーマが反対側を見ると、ちょうど1人分ほどそこは空いていて…。


「はっ!」と、メアリーは声を上げると、トーマの横に座り、同じく腕を抱えるようにしてきた。


馬車の中で3人仲良く同じイスである。


「……。」なんだこれは…。



スカスカ。


ふよんふよん。


スカスカ。


ふよんふよん。


「……当たってるんだが…。」


そうトーマは()()()()()()()()()顔を向けた。


「ふふふ、当ててるんです。」


むぎゅっ♪


それを見たメアリーは再び不満だと声を上げてきた。


「ちょっとトーマ!いくらなんでもアタシの時と反応が違いすぎるでしょ!!なんで!!」


トーマはメアリーの言葉に思わず、彼女の平らかなそれを見てしまい、マズいと思った。


しかしながら、エマリアが「…プッ。」などと吹き出したことで、どうやらトーマのそれはバレなかったらしい。


「エ・マ・リ・ア〜〜っ!!」


「きゃ〜、トーマ様、助けてくださいまし〜。」


ふよんふよん。


エマリアはトーマの腕にその大きめの果実を押し立てた。


完全にメアリーに見せつけるように…。


「……。」


………ブチッ!


そして、メアリーは完全にキレたのだ。


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