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「…これ全部…【首刈りバニー】か…。」
トーマは依頼があった場所に着くなり、そう声を上げた。
ここは緑生い茂る丘だったはず。
しかし、現在は真っ白で覆い尽くされていた。
その全てが蠢いており、生き物であることを証明している。
「…確か100とか言っていたが…これはどう見ても200じゃ効かないだろ…。」
100くらいと書いてあり、それくらいならなんとかと受け入れたのだが、流石にこの数は時間が掛かる。
これは明らかにギルドのミスなので、帰ってもいいのだが、それをするとこの年中発情しているウサギたち(魔物なので成長速度がパない)がさらに数を増やし丘を降りて、街なんかに向かいかねない。
なにせもうここの草はだいぶ食い尽くされており、禿山ならぬ禿丘になりかけていた。
「…仕方がない…やるか…。行け、紅、セキ、アカ!」
方法は簡単。
まず紅たちが街と逆の方から、威嚇する。
そして、トーマが散り散りと逃げていくウサギたちを【隠蔽】を施した状態で【魔力糸】を使い、次々と【首刈りバニー】のお株を奪っていくだけ。
大変なのは、その回収。
首を刎ねると同時に【アイテムボックス】を発動させなければ、その死体が他のそれらに踏み荒らされてしまう。
トーマはその点に注意しながら、次々と刈っていく。
以前よりさらに斬れ味の増した一本の糸がジグザグに疾走っていく。的確に彼らの首目掛け…。
スルリとなにに邪魔されることなく通り過ぎていく。
ブシュッ!ブシュッ!
ブシュッ!ブシュッ!ブシュッ!…………………。
だいたい狩り終えると、丘はすっかり血塗れ。
なにも知らずここを訪れる者がいるとすれば、どんな惨劇が起こったのかと心配するほどだろう。
その惨劇を起こした主であるトーマは丘の状態を見て、頷く。
「…これくらいで大丈夫…か?」
【首刈りバニー】がかなりの数いなくなったその丘。そこにはやはりあまり草が残ってはいなかった。
そのため、普段より少し多めに数を減らしたのだ。
そのことをギルドに報告することを決め、トーマは紅たちに指示を出す。
「行くぞ、紅、セキ、アカ!」
「ワウ!」「キャン!」「キャン!」
次はゴブリン退治。
その次はオーク…それから…それから…と依頼を10ほど片付けた頃には、すっかり辺りは暗くなっていた。
こんなにも依頼をこなしたこともあり、紅たちもかなり疲れてはいたが、これならば昇格試験前に1日や2日休みが取れるのではと思った。
「おお!予想以上の成長速度だな。これならば、あの程度では物足りなかろう。」
…のだが…。
「いや、そんなことは…。」
「そんなことはある!か…。素晴らしい!それならば、これと…後これも…。試験前の総仕上げとしてAランク依頼も混ぜておいてやろうな。」
「おい…それはいくらなんでも…。」