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トーマはナナのことを買い取った後、もう暗くなり始めていたので、知り合いがやっている女性物の服屋に直行。


そこで何着か買い求めた後、ギルドでカッコウを拾い、貸家へと向かった。


貸家はかなり大きなものだった。流石に貴族の邸宅ほどではないが、大商人は言い過ぎにしても、それなりの商人の家と言っても差し支えがないほど立派な、一軒の屋敷。


マミが家庭菜園をできそうな庭もあり、これならば彼女たちから不満がでないに違いないと、トーマは思った。


しかしながら、なぜ敢えて彼女たちからと限定したのかと言えば、トーマの方に不満があったからである。


トーマは思わず呟く。


「…ここってお化け屋敷じゃないか。」


「えっ…お化け屋敷?」


お化け屋敷。


それはもちろん遊園地とかにあるそれではない。


正真正銘、お化けがいると噂されている御屋敷だ。


なんでもここは外観のみ確認できるが、何人もその内部に侵入することすら叶わないのだとか…。


何人もという噂からもわかるように、所有している人物も不明。


「ああ、俺の屋敷だ。どうだ?広いだろう?」


…との話だったが、まさかこんな身近な人物の所有物だとは…。


「というか、なんでアンタ、こんな屋敷があるのに、ここに住んでないんだ?確かアンタの家って、普通の一軒家だっただろ…。」


「ん?そんなの決まってるだろ?こっちは娘と2人暮らしだぞ。あんなバカでかい屋敷、掃除が大変だろうが…。」


確かに…そうトーマは思い、ハッと思い出した。


『大丈夫か?1人で?』


と、ギルドに着くなり、カッコウが言っていたことを…。


トーマは思わずナナの方を見た。


「あ…あの…この御屋敷の管理を私がするの、トーマくん?」


ぷるぷる、ぷるぷる。


「えっと…でき…れば?」


「む、無理…無理です!!私には荷が重すぎます!!」


「いや、別に毎日全部屋掃除しろなんて言わないからね!基本は使っている部屋だけ!そんな鬼みたいなことは言わないって!!」


そうトーマは彼女の手を取り、力説した。どうにか安心させようと…。


「ほ…ホントですか?」


「ああ…ホントホント。」


そう半泣きだったナナにトーマが真剣に向き合うと、彼女は落ち着いたのか、眼尻を軽く拭った。


トーマは未だ彼女の片手を握ったまま。


要するに、依然として2人は至近距離で見つめあっていた。


「あ…あの…トーマくん…。」


「どうかした、ナナ?」


…まあ、トーマは現状に気がついていない…というか、現状に欠片もロマンス的要素を感じていなかったのだが…。


ナナの頬が先ほどとは違った理由で紅くなり、徐々にトーマとの距離が狭まっていく。すると…。


「コホン、イチャつくのは後にしろ。皆が待っている?」


「いや、別にイチャついてなんてないが…みなってどういう…。」


そうトーマが聞き返すと、ふとドアが開いた。


「キャンキャン!」


そして、駆けてくるアカ。


その後ろには、トーマの知り合いたちのほとんどがいた。


カナリアたち受付嬢というギルド関係者、定食屋に宿屋、肉屋に八百屋、はたまたその他にも…。


「どうやら間に合ったようね…。」


後ろからは先ほどナナの服の世話をしてくれた服屋もまた来てくれていた。


ふいにポンと背を押される。


「さっさと行ってこい。」


「あ…ああ。」


グルグルとトーマの周りを回るアカを抱っこして、屋敷の中へ。


「…ただいま。」


「「「「おかえり!!」」」」「わうわう!(おかえりなさい、主!)」「クマクマ!(おかえりなさいまし!)」「きゃんきゃん。(おかえりなさい、主。)」


トーマは照れくささに頬を軽く掻いた。


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