盲目探偵 菊池都姫
コッーン コッーン コッーン
あ、先生が来られた。
僕は小林、菊池都姫先生の助手。
ドアがノックされ、ドアの前にいる警察官がドアを開けて部屋の中にいる人たちに先生が来た事を告げる。
「菊池先生が来られました」
ドアを開けた警察官が身体を廊下側に引くと、盲人用の白杖を突いて先生が部屋の中に入って来た。
今まで難事件を幾つも解決して来た先生だけど、今回は駄目かも知れない。
だって今回の事件の重要参考人は2人とも、耳は聞こえるけど言葉を発する事が出来ず手話で意思の疎通を行っている人たちだから。
「お待ちしてました」
警部が先生に部屋の中にいる人たちを紹介する。
部屋の中に居るのは僕と警部に2人の重要参考人、それに手話1級の女性警察官明智巡査部長の5人。
先生は暫く考え込んでから話し始めた。
「参考人のお二人はお時間の方は大丈夫でしようか?」
2人の重要参考人は手話で返事を返す。
それを明智巡査部長が言葉にして先生に伝える。
「お二人とも大丈夫との事です」
「それでは私と明智巡査部長の2人にしていただけますか?」
「私ですか?」
「はい」
先生と明智巡査部長は1時間程部屋に閉じこもっていた。
それから2人の重要参考人の尋問が1人ずつ行われる。
2人の尋問が終わったあと先生は警部に伝えた。
「最初に尋問した参考人の方が怪しいですね」
何時もの事だけど先生は「犯人は誰々だ!」とは言わない。
だからこの後、警部っていうか警察が怪しいって伝えた方の重要参考人を徹底的に調べるのだ。
1週間後警部から電話が来て、怪しいと伝えた方の重要参考人に被害者を殺害する動機があった事を伝えて来た。
「今回は駄目だと思いました」
「あら、どうして?」
「だって2人とも言葉を発する事が出来なかったので……」
「小林君、私が聞いているのは言葉だけでは無いのよ。
鼓動や息遣いそれにちょっとした癖、例えば貧乏揺すりとかね。
それら耳に入る全ての情報を聞き分けて容疑者を特定しているのよ。
まぁ今回は明智巡査部長にお願いして、似たような動作がある手話を2人がした時に、態と間違えて伝えてくれるように事前に取り決めていたの。
耳は2人とも聞こえているから、明智巡査部長が私に間違えて伝えた時の容疑者の心音はそれまでとは全然違ったのよ。
だから分かったの」
「ハー、僕も音は駄目でもそういう小さな事を見つけられる観察眼を鍛えるようにします」
「頑張りなさい」
「はい!」