第21話
「不死身って何勘違いしてんのよ」
白衣姿の少女アリアンは勢いよくポケットから鋭利の物を飛ばしました。
細く長い針。
「うがああああああ!!」
太い両刃の大剣がアリアンの横に落ちていきました。
その勢いで砂煙と風が一気に舞います。
2mは超える巨体の男ドイゾナーは真っ白な天井へ顔を上げて苦痛なうめき声を響かせました。
黒いローブに全身を隠していたドイゾナー。
「何!?」
背後から突き刺そうとしていたカナンは手を止めます。
「こいつの右目に核が入ってんの。ドイゾナーを作ったときにお父さんとお母さんが核を埋め込んだらしいわ。危険物はいつでも壊せるようにね」
砂煙が舞う中を無愛想な表情で脱出しカナンのもとへ。
「ふ、ふざけるなぁ!! 我は神の代弁者だ! 死なん!!」
「しぶとい、カナンこいつを倒して」
「うん」
カナンは白銀の刀を握り締め、ドイゾナーへ走り出します。
「遅いわぁ! この国ごと貴様らを消し去ってやる!!」
何を思ったのか、ドイゾナーは両手を地面に叩きつけました。
すると、地面が波打って手が沈んでいくのです。
「我は錬金術の継承者なり!!」
ドイゾナーを中心に広がっていく円を描く真っ白な光。
不可解な数字と文字が円の中に表示され、なにやら空中にも浮かび上がっています。
光はこの広大なホール全てを埋め尽くすほど。
全体が揺れ始めます。
「な、なんだこれは?」
精悍な顔つきをした青年、リュウは右手でエリスを抱き寄せて周りの状況を確認。
「ドイゾナー!!」
カナンは躊躇なく刃の切っ先でドイゾナーの右目へ突き刺します。
血液などは飛び散りません。
その代わりに電気が流れ、ドイゾナー自身が感電したように震わしていました。
「ぐぁああああああ、これで終わりだぁあああ! フハハハハ……!!」
最期まで不気味な笑い声を残し、力なくその場で倒れこみます。
息をしていないことを確認している暇はありません。
まだまだ地震のようなヒドイ揺れが収まる気配がないのです。
「最期の悪足掻きにもほどがあるわ! このままじゃホントにアタシ達消える!」
立つことが困難で、アリアンは四つん這い状態です。
カナンも壁に手を当ててなんとか立てている様子。
「これは……あの時と同じ。街で起きたのと一緒だよ!」
嫌になる、アリアンは不機嫌を露にして、
「あああ、もう、ノザカ、いるのならさっさと現れなさいよ! この状況をなんとかしろ!!」
叫びました。
それでも全く反応はありません。
「く、エリス、大丈夫か?」
「……」
リュウの心配する声に全く返事をしようとしないエリス。
まだ操られているのでしょうか。
「大丈夫だからな、俺は絶対何があってもお前を助けてやる」
返答などなくてもリュウは気にしません。
「この強力な練成、ノザカにしか解けない。ううんセツナなら解けたかもしんないけど」
「!」
カナンはアリアンの言葉にはっとしたのでしょうか、自身が握り締めている白銀の刀を見ます。
「もしかして、この刀を使えば止まるかもしれない」
「何言ってんのよ、てかどうやって使うのよ!!」
「どうって、きゃっ!」
とうとう地面に亀裂が入り始めました。
天井も揺れに耐え切れず沈んできたのです。
「練成の軸を潰さないと……セツナさんが望んだクローンの最終的結末を叶えないと、このまま全てを消すなんて絶対させない!!」
しかし、強力な震動で全く体を動かすことができません。
白銀の刀を手から離してしまいそうです。
こんなにも近くに円の中心があるというのに、カナンは苦い表情です。
「くそ、エリス待ってろよ。カナン、俺が」
その姿を見兼ねたリュウは無理にでも立ち上がろうとしますが、
「駄目です! リュウさんはエリスを守っててください!!」
壁を突き放して、カナンは走り出しました。
その間に壁は崩れ、地面も端から欠けていきます。
天井も崩れはじめ小さな破片が落ちてきました。
「お願いだから、止まって!!!」
白銀に輝く刀身の切っ先を練成陣の中心へ一気に突き刺しました。
その瞬間です。
白銀の刀身が真っ白に発光。
電流が何度も刀身と練成陣を行き来し、弾けます。
「くぅうう!」
両手が痺れた感覚に襲われます。
「カナン!」
アリアンはカナンの元へ駆け寄りました。
揺れる地面を蹴り上げて、バランスもとれないこの状況で。
カナンの手の上から柄を握り締めます。
「いくらサーガのアタシでもこんなのに巻き込まれたら死ぬに決まってるわよ! ノザカのばかああああ!!」
電流の激しさが増していくなかどんどん刀身は地面へと沈み、あともう少しで終わる。
あと少しで止まる。
ですが、あと少しが沈みません。
その様子を眺めているエリスは口を小さく開けてリュウの腕の中。
そんなエリスの眠たそうな瞳が徐々に明るみを増して深緑に戻っていきます。
「……カナンが……危ない!」
ようやく発した言葉。
「エリス!?」
リュウの体から離れたエリスも、駆け出しました。
震動が起きればバランスを崩して何度も転倒してしまいます。
「やめろエリス動くな!!」
リュウは無理にでも体を動かして立ち上がりました。
這ってでもエリスの近くへ。
彼女の足元付近の地面が、崩れかかっているのです。
次の強力な震動が起これば絶対落ちてしまう。
「くぅう……あっ!?」
予想通り、地面が剥がれ落ちます。
エリスの足が宙に浮きました。
「くそ!!」
落下していく寸前。
エリスの腕が掴まれました。
「あっ」
右腕しかないリュウの精一杯の力。
「このままじゃ、エリスが、リュウさんが死んじゃう! お願い、止まって!!」
瞳に溜め込む大量の涙。
「あの子、練成使えるでしょ!?」
「えっ?」
アリアンの突然の言葉にカナンは驚きます。
そんなこと初耳だと。
「あの子がうまく使えれば絶対止まるわ! だけど……」
アリアンは口を一旦閉じました。
とても言いにくそうに。
「……こんな強力な練成に対抗するのにはかなりの力がいるわ。エリスは試作用だから絶対助からない。命と引き換えないとこの国は助からない!」
「そんなこと……」
「できるかぁ!!」
カナンとリュウの言葉に、アリアンは予想通りだと苦笑。
「エリスはどうなのよ!?」
アリアンに問いかけられたエリス。
「私は……」
苦しそうにエリスの腕を握り締めているリュウの姿が視界に移ります。
恐怖感が一層エリスの内心を襲い掛かってきました。
生きたいという思いと自分がやらなければ助からないという思い。
「絶対そんなことさせるかぁ!! 俺はお前といないと駄目なんだよ!!」
胸を締め付けるような痛み。
「絶対この刀で止めさせないと、エリスにそんなことさせたくない!」
カナンの必死な言葉。
自然と涙が溢れてきました。
「ノザカのアホ、出てきなさいよ!!」
アリアンはまだノザカに対して怒鳴っています。
カナンとアリアンの手は限界に達してきました。
電流の激しさ、麻痺する感覚。
「お願い、止まって!!」
「このぉぉ!」
2人の険しい表情、エリスは思いきり目を閉じました。
「私、私!!」
決断のときです。
読んで頂ければ幸いです。




