第12話
都でのことです。
高層ビルが建ち並んでいます。
「エリス・サインポスト。カノンの遺伝子、さらには我の細胞を持つとは……」
その高層ビルの中で1番高い場所にフードで全身を覆う1人の男がいました。
片目には縦に入った傷痕、右手には現代人には解らない文字が書かれた書物。
「その短い命、実に惜しい」
なんとも不気味な笑みを浮かべます。
すると、何を思ったか屋上から飛び降りました。
男の視線の先には廃墟となったビルや都に住む人々が捨てて行ったゴミの溜まり場がある区域がありました。
そこへゆっくり、パラシュートで着地する感じで。
「誰だ!?」
たまたま通りかかった赤い瞳の壮年が腰を抜かすように地面に座り込みました。
壮年の近くには裕福層の人間が捨てて行った生ゴミから資源ゴミまでが散乱していました。
「我はドイゾナー、錬金術の継承者なり。神の命により穢れ多きクローンに神罰を下す」
ドイゾナーと名乗った男の周りに複雑な文字や数式が組まれた謎の円陣が真っ白い輝きを放ちながら現れました。
まぁなんと神々しい。
「!?」
壮年の腹部に何かが突然突き刺さりました。
一瞬の事で壮年は痛みに気付きません。
「……」
太く鋭く尖った物が地面から出てきたのです。
腹部から背中を貫通しています。
壮年は体を痙攣させ白目を剥いたままで、口からは赤黒い液体が。
「我は神の代弁者、我を止める事即ち反逆者なり」
痛みも分からない内に息絶えた壮年に背を向けてドイゾナーは歩き始めました。
そんなこと何も知らない精悍な顔つきをした青年と深緑の瞳をした少女は研究所でいつものように本を漁っています。
「ん?」
青年の内ポケットから振動を繰り返す携帯電話。
「セツナ……か」
とりあえず携帯電話を耳に近づけます。
『リュウ、そこから逃げろ』
「相変わらず感情無いなあんた。で、なんでだ?」
『ドイゾナーはエリスを狙って都まで来ている。そこから逃げろ』
「ここから近い所はあるのか?」
『都から少し離れた所に湖の街がある。広大な湖に囲まれているからすぐにわかるはずだ』
「わかった、あんたはどうするんだ?」
『……』
リュウの問いかけに返事は返ってきません。
「?」
『……用事が済み次第だな』
そして通信が切れました。
「くそ、まだ探し終えてないのに……エリス逃げるぞ」
「ふぇ、逃げるの?」
エリスの腕を引っ張っては研究所から外へ。
「教祖自ら追いかけてくるとは相当だな」
車に乗り込んですぐに発進させました。
交通など気にせずとにかく都から何もない草原へと抜け出していきます。
「なぁ、お前には一体何があるんだよ」
「何って……知らないよ。作られた理由もわからないんだもん。ただ聖母の候補っていわれただけだよ」
「お前にも知られたくないような秘密があるから狙われてるんだろうよ」
リュウは思い切りアクセルを踏み込ませます。
「私も知らない秘密……なんだろうね」
「さぁな」
読んで頂ければ幸いです。




