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両片思いの幼馴染

【短編版】両片思いの幼馴染〜きっかけはバレンタイン〜

作者: 芽依

梨沙 大学生。睦月とは実家が隣だった。憧れから恋へ。睦月のことが好き

睦月 梨沙の1歳上の大学生。梨沙とはあまり交流はなかったがいつも気にかけている。梨沙のことが好き

〜梨沙視点〜

街はバレンタインの色で染まっている。私はそれを見てほぉっと息を吐き出す。バレンタインに渡す用のチョコを買おうとバレンタインイベントに足を運んだが、あまりの人の多さに眩暈がした。

そう、梨沙は人混みが大の苦手なのだ。小さい頃はなんとかなっていたのだが、年齢が上がるにつれてあまり行けなくなっていた。

そんな梨沙がかなりの人混みが予想されるイベントに足を運んだ理由はただ一つ。好きな人へチョコを渡したいからだった。


現在大学生の梨沙は一人暮らしをしているが、高校卒業までは実家で暮らしていた。その実家の隣の家に住んでいたのが幼馴染とはいかずとも幼少期からずっと交流があり、梨沙が高校のときから好きな相手の睦月だ。

睦月は感情を表に出すのが大の苦手で、無表情でいるか表情を作って過ごしていることが多かった。ただ、自分と梨沙の家族は例外でいつも素の表情を見せていた。

最初は憧れだった。1つ違いの睦月はとても博識で、なんとなくかっこいいと思っていた。

いつからだろう、睦月に好意を持ち始めたのは。睦月を異性として意識して見るようになったのは。

初めての感情をどうすればいいのか分からず、梨沙はその感情に蓋をした。この恋は叶わない、と分かり切ったものを時間が解決してくれるだろうという心構えでいることはあまりに辛く、梨沙にはできなかった。

だが、“恋”という感情に蓋をしたからといって簡単にその辛さが消えるわけでもなく、没頭できる何かをして紛らわせないといられなかった。

梨沙はその感情の捌け口に勉強を使った。勉強しているうちは目の前にある問題以外考えなくて済むから、と言ってどんどん勉強を進めていった。

それからしばらくして、大学受験をした。私は難関私立大学と呼ばれる大学に学費免除付きで合格した。

それほどまでの学力を身につけた梨沙だが、睦月への恋心は無くならなかった。しかも、神の悪戯なのかなんなのか睦月が通っている大学に合格してしまったのだ。そこで梨沙は、大学生になってからも恋心を引きずることが決まった。


〜睦月視点〜

バレンタインで活気付いた街を横目で見ながら早歩きで帰宅する。とうとうバレンタインを明日に控えているからか街は緊張や興奮、ほんの少しの怖さなどを空気に含んでいる気がした。


ここ数年どころか自分には無縁だったバレンタイン。周りの女子たちがチョコや恋心など、色々と押し付けてきたことは多々あった。だが、基本バレンタインなどの行事ごとに興味のない睦月はその辺りは無縁だとずっと思っている。そんな睦月がそのような行事ごとに興味を抱くときは大抵、梨沙が絡んでいた。本人は気づいていないが。

俺は感情などを表に出すのがとても苦手だ。大体無表情か表情を作ることが多い。それでも、俺の家族と梨沙の家族は例外で、何もなくても表情筋が勝手に動いてくれる。

それに感謝していたのに、気がついたら素直に感謝できなくなっていた。理由は簡単で、梨沙に恋をしたからだ。両親に「梨沙ちゃんのことが好きなの?」と聞かれ、初めて自覚した。

自覚したのはいいものの、梨沙が俺に恋愛感情を抱いてくれるとも思えなくて、この気持ちに蓋をしようと決めた。

告白する前に決まった失恋。心にポッカリと穴が空いたようになり、しばらくは周りが心配するほど何もできなくなった。

時間が経って心の整理がされた、ということもなく、睦月はこのまま時間が過ぎていってもいいのだろうかと悩んだ。悩み抜いた結果、まずは勉強をしてみることにした。どの進路に進むにしても学力は大事だと自分に言い聞かせ始めた勉強だが余計なことを考えずに済み、勉強も悪くないんじゃないかとそのままのめり込んでいった。


そのまま大学入学試験で好成績を納め学費免除付きで合格したが、当の本人が一番「?」を浮かべていた。それはそうだろう。特に対策はせず、本人は現実から離れたくてただただ勉強していただけなのだから。


そんな過去を思い出していたら、家の前にいた。そのときにふと明日はバレンタインだし、このタイミングで振られる覚悟で告白するのもありだな、と考える。ただ部屋の中が寒過ぎてそのとき考えていたことはすぐに頭の中から消えてしまったが。

ちょうどそのとき、睦月の携帯が着信音を鳴らす。なんとなく画面を覗いてみると梨沙からの連絡だった。そこには一言だけ「明日の夕方って空いてる?」だった。手帳を見てみると明日は講義がない日。予定を向こうに合わせられることに安心しながら「空いてる」と返信した。


〜梨沙視点〜

今日は急遽、講義がなくなった。教授が体調を崩したり、色々と予定が重なったりで来られないらしい。睦月とは夕方に会うから時間がかなり余ってしまっている。私はこのあとの時間をどうやって潰そうかと考えながら本屋に向かった。


たまたま向かった先の本屋で睦月と遭遇した。お互いとても驚き、動きがポカーンとした。が、このままだと邪魔になると判断し、近くのカフェに移動することにした。


どちらも喋らずに気まずい空気が2人の間に流れたが、最初に破ったのは梨沙だった。

「睦月に会うのは久しぶりね。元気だった?」

「たしかに梨沙と会うのは1年以上ぶりか。俺は見たまんまなんだが、梨沙も元気そうでよかった」

と、すこしぎこちなさが残る会話だったが、これは一言目のことだと考えると滑り出しは順調であるように感じる


そのまま私たちは夕方になるまで色々と喋ったし、たくさんの場所を回った。だけど、お互いに本題には一切触れなかった。私は触れたら負けであるように感じたのだが、そんな私を知らずに時間はだんだんタイムリミットに近づいていく。

チョコを渡してそのまま告白しようと思っていたが、どこでしようかと悩んでいるときに視界の端に公園が映った。

「睦月、公園行かない?」

私は幼さがある発言だったと後悔し始めたが、睦月も睦月で同じことを考えていたらしく、公園に行くことになった。


お互い立ったまま、遠くの方を見ていた。誰もいない公園に大学生2人が立っているのは、とても不思議な感覚だった。

「ねぇ、睦月。ハッピーバレンタイン」

そう言ってチョコを渡した。そのまま顔を逸らしながら

「ずっと睦月のことが好きだった。今も好きなの」

と言い切った。これで振られても悔いはない!と思って顔を上げると、睦月は顔を片手で覆いながら真っ赤にしていた。私は睦月のその反応をみて固まった。まさかこのパターンがくるとは思っていなくて、シミュレーションをしていなかった。そうしているうちに睦月に抱きしめられた。とても幸せそうにしながら

「梨沙に先を越されちゃった。梨沙は告白する相手は俺でいいの?」

と聞いてきた。私は顔が赤くなっていくのを感じながらコクコクと頷く。そうすると睦月は嬉しいそうに

「俺もずっと梨沙のことが好きだった。だけど、俺が告白したら梨沙を困らせるかなって思って何も言ってなかったんだけどね。俺たちは世に言う“両片思い”だったのかもね」

と言った。

それから睦月は人が変わったように、表情がよく動くようになった。睦月にそれを伝えると「それは全部梨沙のおかげだね。」とさらりと言ってのけた。やっぱり前と人が違うんじゃない?とも思うけど、前と変わってないところもあって。私はすごく彼のことが好きだったのだなって改めて実感する。これから先もずっと一緒にいるとなると喧嘩したりするかもしれない。だけど、そんなことがこれからあったとしても、私はずっと睦月と一緒にこれからを歩んでいきたい。


勇気を出して睦月に告白して本当によかった、と素直に思えた。私はこの日のことを生涯忘れないだろう。


〜?視点〜

私は梨沙さんと同じ学部に所属する、しがないものです。え?あなただって優秀な生徒でしょう、と?確かに世間一般と比べたら私は優秀な方かもしれませんが、梨沙さんと睦月さんがいらっしゃる学部にいるとそう思える人はほとんどいないでしょう。いるのなら私は会ってみたいとさえ思います。お2人が所属されている学部にいると上には上がいるといつも思い知らされます。

そんな私が大学のカフェスペースから見てしまったのです。梨沙さんと睦月さんが手を繋ぎながら歩いているところを。2人はとても幸せそうな表情で喋っています。睦月さんは梨沙さんをとても愛おしそうに見ており、私はここが天国かと思いました。

あぁ、話を戻しましょう。といってもどこまで話を戻せばいいのでしょうか?分からなくなっていますが、睦月さんは梨沙さんのことをとてもとても溺愛しており、手放す気はさらさらないことがよくわかります。彼は人の目をあまり気にせず彼女が特別な人であることがわかる行動をよくとります。そんな彼に彼女は照れたり、人が多くいる場所だからと言ったり、なんというかこれは本当に眼福ですね。あら、私の恋人が次の講義のために迎えにきました。そろそろ時間のようです。それでは皆様これにて失礼いたします。

最後までお読みくださりありがとうございました。


昨日、ふと明日バレンタインじゃん!ってところから書き始めたので内容のまとまりがなかったかもしれません。

過去作とは系統を変え、とにかく甘々な物語を作りたかったのですが...少し難しかったです。

機会があればまた挑戦してみたいです!


よければいいねと感想よろしくお願いします。

拙くはありますが過去作も一緒に読んでくださると幸いです。

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[良い点] チョコレートも溶けるほどに暖かくて甘いお話 バレンタイン前に良いもの読ませていただきました〜
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