49 虐殺の始まり
ローズは何とか、命の危機を脱した。
避難させるため「カプセルホテル」を唱えると、私が9000MPの追加料金を払うことで、「カプセルホテルレベル2」に一緒に入る権利をもらえた。
彼女は足と背中以外にもダメージを負って、本当にギリギリだった。
「ローズちゃん、もう安心だからね。しばらく寝ていて。右足も必ず治すから」
「カプセルホテル」に私だけ外出可能かと念じると「可」の返答。同伴者のローズは私が再び入って一緒に出るか、24時間経過のMP料金切れで強制排出される仕組みだ。
ローズの足はスライムヒールで血止めだけはしたが、ズタズタだった。
治してあげたいが、ついさっき、重症の体を強引に治したばかり。無理に足の治療をしても、心臓に大きな負担がかかってしまう。さすがのローズちゃんでも危険だろう。
こんなにされてしまうなんて。
怒りを通り越した感情が沸いてきた。スキルをくれた獰猛な補食者達が言う。「この屋敷にいる人間と、それに連なる者を皆殺しにしろ」と。
カプセルホテル内から確認すると、私とローズが消えた場所で兵士達が騒いでいる。
このまま出よう。
囲まれても構わない。
どうせ、こいつらを生かして帰す気はない。
私は消えた場所に再び現れた。
いきなり密集する兵士の真ん中に現れた私は、ヘラクレスガードだけ発動していた。
目の前の兵士を見た瞬間にビックアゴーを飛び出させ、そいつの頭を両断した。
パニックになる兵士にポイズンニードルを打ち込んだ。
「魔力ソナー」で探すと、使用人の出入り口があり、そこに人が何人もいた。近付いたが、メイドやコックなどの非戦闘員だった。
私の中の捕食者が殺害命令を出したが、そいつら15人だけは外に逃がし、裏口も封鎖した。
武装した人間は、子爵の警護を命じられたのか、邸内に駆け込んでいった。
ローズと戦って、まだ息があった奴らには止めを刺した。
ローズの捕獲要員、ダンガル商会関係の人間までいるせいか、子爵邸の敷地の中には、まだ武装した人間が30人くらいいた。
邸外の作業小屋などにも人の反応はあった。そこに武装した人間はいなかったから、放っておいた。
そいつらも殺したいが、ローズが喜ばない気がした。
地下室に2人、さらわれた女と思われる反応もあったが、しばらく我慢してもらう。
邸内に入り、入り口を封鎖した。
そのタイミングで護衛3人を連れた女が走ってきた。
「そこをどけ、女。子爵婦人のために道を空けよ!」
「婦人。くそ子爵にくっついてるビッチが。自分だけ逃げるの?」
「この狼藉者。この女を斬ってしまいなさい!」
「はいっ」
護衛3人に1本ずつエレキガンをプレゼントして、倒れた頭にポイズンニードルを撃ち込んだ。
べちゃっ。血が婦人の顔にかかった。
「ひ、ひいいぃ。た、たすけて」
「あなたも評判が悪かったわ。ローズちゃんも足をけがしたから、足を取ってあげる。声を出さず耐えたら許すわ」
婦人の足をつかみ、ひざ裏にローズの背中から抜いたナイフで切れ目を入れ、片方ずつねじ切った。
「がぎゃああ、ぎいああ!」
ぶちぶちぶちいい!
婦人の絶叫でホールに兵士が集まった。
ポイズンニードルのいい的になった。




