47 遊んでる場合じゃなかった
復讐対象6人のうち、4人目を追い詰めた。
「ザハン、プライドを傷つけて悪いけど、昼間に戦ったとき、あなたの剣は私にダメージを与えてなかったわ」
「何?」
「ちょっと都合があって、あそこで死んだふりをしたの」
「なんでそんなことを」
「今日、鬼の牙全員と、ヤリステを殺すことにしたの。だから、アリバイ作りみたいなもの?」
「今度こそ、斬ってやる」
間を詰めてきた。
「スズメバチ版ポイズンニードル。右太もも狙いで」
バシュッ。ザク。
「ぐわああああ!」
「昼間に手加減してても倒せなかったのに、この状態の私を倒すのは無理。だけどチャンスはあげる。ヤリステはどこ?」
「ぐうう、執務室じゃねえか」
嘘を言ったから、足先にスライム酸をかけた。
「魔力ソナーで探知したけど、執務室から誰の反応もなかった。ヤリステも父親の商会長もいないでしょ」
「そ、そこまで分かるのか。どこにいるか教えるから、見逃してくれねえか」
「話によるわね」
「商会長もヤリステも、リーダーも、領主のサハミ子爵邸だ。午前中に捕まえた女を子爵に献上しに行ってる」
「ちっ、まだそんなことをしてるのね。当局に目をつけられてるくせに」
このあと、子爵邸に乗り込んで、助けるか。低級冒険者で昔の顔見知りだったりしたら、なおさら助けたい。
「その子の名前は?」
「ロ、ローズ」
心臓が大きく鳴った。
私と別れたあと、ローズはマイリを通るとは言っていた。彼女本人とは限らない。
「こた、え、ろ。どんな、女、だった」
「皮の水着にボサボサの頭。だけど顔はエルフみたいな美人で、身長は170センチくらいあった」
私の唯一の友達のローズちゃんだ。あの戦闘力なら、こいつらでも軽く蹴散らせる。なんでだ。
「どうして、彼女を捕まえられたの?」
「し、知り合いか?へへっ、俺を見逃すと約束するならな・・」
「うる、さい。今、お前を殺して助けに行けばいいだけだ」
傷口の上からニードルを刺した。
「ぎゃああ!林の中の街道だ。そこでオーガキングが出て、ヤリステさんの馬車が襲われたんだ。護衛に鬼の牙のリーダーもいたが、かなわなかった。そのとき通りかかったローズって女が助けに入った」
「戦いはどうなった?」
「俺はいなかったけど、ローズが勝ったそうだ。だけど、相手はS級の魔物。ローズもかなりのダメージを受けていた。右足が折れていたそうだ」
「そこを襲って捕まえたのね。ローズに助けられておきながら・・」
「ふ、負傷した右足の腱を斬った。不意打ちで後ろから襲ったそうだ」
頭に血が昇って、破裂しそうだった。
「喋っただろ。か、解放してくれ」
無意識だった。
「死ね」
「エレキガン」の触手6本を全部発動させてザハンの胸に当てた。
パンッ。弾けとんだ。
拘束した2人も同じように処刑した。
この街に住んでいたから、サハミ子爵邸の位置は知っている。
倉庫を出ると、10人くらいの男が立ちふさがっていた。
「どけ」
戦闘員なのか、ただの従業員なのか、確認することもなく、エレキガンでなぎ倒して、大通りに出た。
子爵邸まで4キロ。
「1粒300メートル」を連続で使って、あっという間に子爵邸にたどり着いた。
だが、後悔することとなる。




