37 貴族に絡まれた
速くないけど、空を飛べるスキルが手に入った。
スキルと一緒にトビウオをを手に入れた。食べたくなって、「クラゲユラユラ」のスキルで崖の上に戻った。歩くスピードでも、「上昇速度」で考えれば有能だ。
「せっかくの魚だ。次の港町に続く街道もあったし、旅人用休憩所もあるかも」
海から1キロの獣道を抜けて、幅10メートルくらいの街道に出た。
「ラヒドに向かうのは右だな」
木漏れ日が射す道を20分ほど歩くと、休憩できそうなスペースがあった。
広めのスペースがあったので、ガマ袋から魔道コンロを出して網を乗せた。
3匹を焼いて、いい具合に焦げ目がついてきた頃、私と同じ進行方向に向かう馬車が来た。
この辺の貴族だろうけど、同じ休憩スペースに馬車を停めた。
その距離30メートル。
貴族らしきやつが馬車を出て、従者、メイドがお茶を用意。護衛騎士5人が辺りを見回していた。
私は退くか留まるべきか。当然、退かない。もうすぐ魚が焼けるのだ。
「食ってから退散しよう」
念のためにヘラクレスガードを発動し、空間収納ガマ袋から「蜂蜜塩」を出し、ハケでトビウオに塗った。
ぱちぱちと弾けた音と、香ばしい匂いが辺り一帯に立ち込めた。
貴族側の人が一斉にこっちを見た気がしたが、シカトだ。
「ふうああ~。作っておいて良かった。いただきます」
トビウオを堪能していると、肥満気味の若い男が帯剣した騎士4人を連れて近寄ってきた。
「そこの黒く小汚ない平民女よ。その甘い匂いはまさかミドルハニービーの蜜か?」
もう3匹目にかぶり付いていた私は、上から目線の男を知らんぷりして魚を食べていた。
「こらぁ!答えぬか。俺はマツラ子爵家のシヨーンだぞ」
「蜂蜜で作った調味料。ん?」
マツラ子爵と言えば、確か侯爵家のオスカー様がくれた「メダルを見せて頼りなさい」リストにあった。
試しにメダルを出してみた。
「あの私、カフドルス侯爵家の次男、オスカー様に渡されたメダルを持ってるんだけど」
「見せてみよ」
受け取ったシヨーン君が何か呪文を唱えると発光した。
「へえ、ああやって確かめるんだ」
それを見て、シヨーンに付いてきた護衛騎士の隊長さんみたいな人が頭を下げようとした。
だが・・。
「平民が、どこでこのメダルを盗んだ」
「オスカー様本人に手渡されたんだよ」
「嘘を言うな!」
「あんた、それが本物と確認したよね。それで私を泥棒と言うのね。返してよ」
「返すか!これは我が家で保管する。蜂蜜も出せ」
「オスカー様は繋がりがある貴族に見せれば大丈夫って言ったけど、何の話も行ってないじゃん。こんなメダル、1ゴールドの価値もないよ」
「お待ち下さい!」
護衛騎士の隊長さんか割って入ってきた。
「こらあ!セイル。俺が話をしてるだろうが。この女を斬れ!」
護衛の中の2人が剣の束に手を当てたのを確認して、両手にポイズンニードルを発動させた。心は「補食者側」に引っ張られる。
「計8人か、遺体の処理が面倒だね。けど、殺るか・・」
それを聞いた騎士隊長さんが、青い顔で待ったをかけた。
「みんな、絶対に剣を抜くな! 黒光りする外見、160センチほどの女性、オスカー様のコイン、お名前はアヤメ様とおっしゃるのでは」
「あ、はい。そうです」
「申し訳ありません。私は隣街のキタカ男爵家三男、セイルと申します」
「あ、ご丁寧に」
「申し上げたいことがありますので、誤解なきように。オスカー様からのアヤメ殿に関する「お願い」は、きっちり聞いております」
「あ、そうなんだ。あのシヨーン君の態度見てたら、オスカー様って舐められてるかと思っちゃった」
「ぐ・・面目ない」
「上がアホだと下の人間は大変だね」
「はは、いえいえ。いずれにせよ、本日はシヨーン様の護衛任務に就いている身。アヤメ殿に不快な思いをさせてしまいましたことを一同を代表してお詫び致したします」
自分を飛び越えて話をした隊長さんにシヨーンは怒ってるけど、誰も彼には従わない。
「残念な出会いになったけど、隊長さんはきちんとした対応をしてくれました。そこは感謝します」
「あっ、メダルは」
「マツラ子爵家からカフドルス侯爵家に返して。私は盗賊にメダルを盗まれて侯爵家との縁が切れたから」
言うと同時に、私は「同化」「隠密」「猫足」コンボでドロンさせてもらった。
「あっ、アヤメ殿・・消えた」
オスカー様配下のケント君害っていた通り、貴族ってあまり関わるべきじゃないよね。
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