33 ローズ陥落
ローズちゃんとの繋がりをもちたい私は奥の手を使う。
「ローズちゃん、パンもウサギも、もうちょっと味付けが欲しくない?」
「いや、塩味が利いているし、十分に食えるぞ」
「甘みは好きじゃないの?」
「かなり甘党だが、砂糖もあまり出回ってないし、なかなか手に入らないな」
「ねえ」
「どうしたアヤメ」
「私が手に入れたスキルに、蜂蜜を生み出すミツバチのやつがあるの」
「本当か!」
「うおっ、すごい食いつき」
「あ、いやすまん。あくまで探究心だ。探究心。虫の力を借りて戦うことはあっても、生産スキルを人間が使うのは初めて聞いた。だから驚いてな」
「今、出せるんだけど、ストックもあるんだよ。それに調味料も作っているし」
「ほ、本当なのか。た、た、探究心、あくまで探究心で聞くが、蜂の種類は何だ」
「「極上蜂蜜」で知られる、ミドルハニービー」
「ミドルハニービー!」
もう言葉はいらないと思った。
空間収納「ガマ袋」から塩と少々のハーブと極上蜂蜜を混ぜて煮詰めた「なんちゃって極上ソース」を出して、焼きウサギにかけた。
パンには皿から溢れるくらいに、蜂蜜をかけてあげた。
ローズちゃんは一心不乱にパンとウサギを食べた。
そしてパンとウサギを追加注文して、ちょっと悲しい顔で私を見ている。
「うわ、私にテイマースキルはないのに、何か浮かんできた」
じー。
「ローズが、仲間になりたそうに、あなたの方を見ています。「はい」か「いいえ」を押して下さい?」
こくこく。
右手の人差し指に魔方陣を浮かばせ、「極上蜂蜜」をにじませた。
指を伸ばすとローズちゃんは、至福の表情で私の指をぱっくんした。
「答えは「はい」よ」
にっこ~~。
あまりの可愛さに、理性がとんだ。
女同士なのに、宿屋に連れ込んでメチャメチャにしてしまった。
◆◆◆
考えてみれば、私はラヒドの侯爵家を訪ねる。オスカー様に会えても会えなくても、メダルを返さねばならない。
ローズはあと2か月で20歳になるため、「精霊召喚」の儀式を受ける。だから、一旦はアマゾネスの里に帰らねばならない。
私は港町ブーヨから海岸沿いを西に行く。
ローズは南の連山地帯を避ける街道を通って南西に向かい、そこから東に回って私が前にいたマイリを通ってアマゾネスの里に向かう。
「アヤメ。とりあえず、パーティー登録をしよう。そうすれば、別の街にいても伝言を伝えたりできる」
「合流は2か月後ね。とりあえず蜂蜜をあげるよ」
「くれ。あくまでも探究心のためだ。スキルで出す極上蜂蜜を調べるためだ。食い意地で言っている訳ではないぞ」
「・・浮気しちゃダメよ」
「そっちこそ・・」
仲間に、お尻の先から出した蜂蜜はあげられない。自分用にためておいた「指先版」を木の容器3個分あげた。
また笑顔になるから、キスしてしまった。
にんまりと笑うローズは強烈な美人なのだ。凶器なのだ。
ただ髪の毛がボサボサで残念美人なんだけど。
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