32 ローズと酒場で
ローズちゃんに泣かされた。
ここにきて、やっと分かった。
本当はすごく寂しい気持ちになっていたんだ。
悪いやつらに追われて死にかけた。だけど強力スキルを手にして生き返った。
最低でもこいつらだけには復讐してやろうと思った6人のうち、もう3人も殺した。
危険な森の中で何日も過ごして、精神的にすごく高ぶっていた。
不安な気持ちが沸く前に、強い獣や虫のスキルを手にして、心も強い方に引っ張られた。
「極上蜂蜜」の生産スキルまで手にして、生活することに困らないという確信までできた。
だから一人でも構わないと自分に言い聞かせていた。
侯爵家の人間を救ったときから思うようになった。
人の間で生きていくには強い力を持ちすぎた。だからあまり深く接するなと自分に言い聞かせた。
異形変身をして高揚する気持ちと、変身を解いたあとに感じるようになった不安。
強くなった代償だから我慢しろ、また自分に言い聞かせた。
だけど、
寂しかったんだ。
「アヤメ、一緒にいるというのは、パーティーを組むということか?」
「パーティー登録をしろとは言わない。たまに一緒にご飯を食べたりしたい」
「お前は私に追われるのが、すごく迷惑だったんだろう・・」
「もう迷惑じゃない。えっ、えっ、うえっ」
「泣くな。そもそも、戦闘でもお前の方が強いと思うぞ。その上に高位の回復持ち。アヤメの方にメリットがない」
「うわあああん。ローズちゃんは私が嫌なんだ。やっぱり化け物だから一緒にいたくないんだあ」
仕方ないから、私の手を引いたローズは昼から開いてる酒場に向かって歩き出した。
途中でギルド訓練場で私の殺し合いを見た冒険者と顔を合わせたが、4人を惨殺した私が泣いている姿を見て驚いていた。
◆◆
「ごめんローズちゃん。話をするのでさえ、まだ2度目だったね。最近、殺伐としたことばかりで緊張しすぎてた。気が緩んだら涙が出た」
「いや構わん。正直、私もアヤメの多彩な才能に興味があった」
安酒場でエールを頼んで、焼きウサギ、カチカチパンをつまみにしている。
「私はアヤメ。ギルドカードは作り直しているけど、本名は同じ」
「私は女ばかりの戦闘民族でアマゾネスのローズだ」
軽く乾杯した。
「ところでアヤメの戦闘形態は見事だな。蜂、蜘蛛の能力を高いレベルで取り入れている。それに使える魔法まで多い」
「ごめん。最近まで私はスキルなしだったの。一気に目覚めた感じで、完璧に把握できている能力がひとつもないの」
「ふむ。それでも使いこなしているのだから、それがアヤメ自身の力だ」
気付いたけど、彼女には否定がない。すごく居心地がいい。
「そういえば、ローズちゃんの一族の人も異形の力を借りて戦うんだよね。あなたは何が向いてるの?」
「私は「精霊」だ。母や姉2人のような熊やオオカミに憧れたが、適正はそっち側だった」
「精霊?なんかうらやましい」
「そうか、私はアヤメのいかにも強そうな姿に見とれたぞ」
「ふふふ」
何だか、久しぶりに笑った気がする。
つながりを絶ちたく私はスキルを使った「禁じ手」を使うことにした。
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