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2 『神ノ技能』

ゲスどもに追われて、高い崖から落ちた。


「享年19歳・・。死んでない?」


幸運、とは言えないけど、ドロモトカゲに私の体が命中し、落下に巻き込んでしまったようだ。


3メートル級のでかいトカゲのハラワタに私は頭を突っ込んでいた。



「・・前が、良く見えない。足の感覚もない。虫の息ってやつだ」


ラッキースライムも生きていたが、衝撃でどこか裂けたようだ。


「ごめんね・・」


スライムから柔らかそうな触手が出てきて、私の唇に触れた。


『守ろうとしてくれたお礼。虫ならこれかな』


幻聴が聞こえたあと、ラッキースライムの触手が増えて、私の目と耳から入ってきた。


何かを押し込まれた。


頭の中に浮かんだ円形。分裂する円形。分裂を続けて何十、何百、何千、何万、何十万と展開されていく。

その分裂が止まったかと認識した瞬間、無数に感じた円がひとつに重なりあった。



『神ノ技能 魔方陣転写』



「いぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎいいいいぃぃぃ」


とんでもない頭痛で覚醒した。


そして、うまそうな匂い。


「トカゲの心臓、の横の魔石? なんだろう・・うまそう」


最後のめしがこれか。


「・・クソどもに囲まれて崖から落下して、トカゲ・・のハラワタベットで魔石を食って、人生はエンド。いただきます」


魔石に歯を立てた瞬間に、トリップした感覚。魔方陣が頭の中に入ってきた。


・・魔方陣ノフクシャ完了シマシタ・・以後、オシラセハ省略シマス・・


魔法もスキルも使えない私がつぶやいた。


「トカゲの再生」


唱えて、そのまんま意識を手放した。



寝たのはほんの少しだと思う。


「まだ生きてた・・う、生臭い。そりゃそうか、トカゲのハラワタのなかだもんね、あれ?」


痛みが減ってる。左手が動く。試しに体を起こしてみたら、やれた。


「左足は砕けてたけど、治りかけてるような感じた」


ドロモトカゲにひっかけたのか、ズボンが裂けてるのに、中の太もももはきれいになってる。


「パンツ丸出しだけと、傷がない・・」


立とうとしたら、左足の足首が折れたまんまで、こけた。ドロモトカゲの鱗に手を付いて左の手のひらをざっくりやってしまった。


「う~ん、私馬鹿だ。せっかく治ったのに。ええ?」


切れた手のひらを見てると、頭の中で勝手に魔方陣が構築され傷口に集まった。


「トカゲ再生?」


意識すると、傷口に魔方陣が光って傷が治り始めた。


「きっとラッキースライムのお陰だ。魔石を食べて、ドロモトカゲの魔石に刻まれてたスキルが、私の体の中にも刻まれた・・けど、余裕こいてる場合じゃない」


ここは渓谷のようになっているが、谷底じゃない。たまに人も通る。大回りして「鬼の牙」の連中が私の遺体を確認しに来るかも知れない。


来るなら崖を背にして右から。拠点にしていたマイリの街はそっちにある。


「レベル8の私には危険かも知れないけど、左に行くしかない・・」


セチバ森の外縁部に沿って歩けば、川から海に出て、サボサの街もある。


「隠れるとこがある森に入って、何とかするしかない」


ドロモトカゲの魔石を手に入れられたのは偶然が重なったから。それでも、やらなければならないこともある。



「ちくしょう。商人の変態息子もクズ冒険者どもも、絶対に復讐してやる」


採取用ナイフ一本を腰に下げ、森の中に入った。





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