椎名 賢也 83 迷宮都市 地下10階~地下11階 7パーティー集結
誤字脱字を修正していますが、内容に変更はありません。
月曜日。
地下10階は今週で最後となる。
沙良がリーダー達に、来週から地下11階へ拠点を移す話をしていた。
子供達の支援を通じて、この階層のリーダー達とは仲良くなったから、会えなくなると寂しそうにしている。
話を聞いたリーダー達が、メンバーと何やら相談しているようだが?
「地下11階を楽しみにしとけよ!」
彼らから口々にそう言われ、地下11階では珍しい魔物でも出現するのかと気になった。
アマンダさんとダンクさんのパーティーは、来週から地下11階へ移動すると決めたらしい。
アマンダさんはクランリーダーなので階層を移っても問題なさそうだが、ダンクさんのパーティーは配送を請け負っているのに勝手に変更して大丈夫なのか心配になる。
沙良は顔見知りの冒険者パーティーが地下11階に移動すると聞き、嬉しそうにしていた。
5日後。冒険者ギルドで換金を済ませ、肉うどん店へ寄りホームに戻った。
翌週、月曜日。
冒険者ギルドで地下11階の迷宮地図(金貨1枚・銀貨10枚)を購入し、ダンジョンへ向かう。
地下10階を通り過ぎ地下11階に到着した俺達は、そこで見た景色に目を瞠る事となった。
これまで迷路状のダンジョンだとばかり思っていたのに、目の前に広がるのは森だ!
呆気に取られて視線を上に向ければ空がある。
ここだけ別空間になっているのか?? 太陽は流石にないようだが……。
沙良の先導で安全地帯へ行き、マジックテントを設置してホームに戻る。
「いきなり森の中になって驚いたね~。リーダー達が楽しみにしろって言ってたのは、この事かぁ~」
家に入るなり、沙良が興奮した様子で話し出す。
「うん、俺もビックリしたよ! リースナーのダンジョンは地下10階までだから、迷路状の階層しかなかったのかな?」
旭も沙良に賛同して声を上げる。
「ファンタジー世界だから何でもありなのか、まさか森になっているとは思わなかった」
俺も驚いた事を伝えてから、地下11階の常設依頼を皆で確認した。
【ダンジョン地下11階 常設依頼 C級】
ゴブリンアーチャー1匹 銀貨1枚(魔石)
ゴブリンソルジャー1匹 銀貨1枚(魔石)
フォレストキャット1匹 銀貨1枚(魔石)
フォレストウルフ1匹 銀貨50枚(魔石・本体必要)
フォレストベア1匹 金貨1枚(魔石・本体必要)
フォレストボア1匹 金貨1枚(魔石・本体必要)
フォレストスネーク1匹 金貨1枚~(魔石・本体必要)
ここでゴブリンの上位種が出てくるとは……。
名前の多くにフォレストと付いているのは、森の中に出現する魔物だからだろう。
沙良がゴブリンは無視して、他の魔物を索敵しそうだな。
俺も魔石取りが必要な魔物は面倒だから丁度いい。
テントの外に出ると、アマンダさんとダンクさんのパーティーが挨拶に来た。
その時、沙良が言った「多分、3ヶ月後には地下12階へ拠点を移しますよ」言葉に、全員唖然としていたが……。
まぁ、3ヶ月毎に階層を移動する冒険者パーティーはいないだろう。
Lvを上げるために俺達は移動を続ける必要がある。
沙良のLvが上がらないと、俺のマンションに行けないからな。
安全地帯から出て最初に会敵したのは、予想外のゴブリンだった!!
なんと沙良は、ゴブリンの頭を石化して魔法Lvを上げる心算らしい。
魔石取りをしても銀貨1枚(1万円)しかならないのに、金貨1枚(100万円)のフォレストベアやフォレストボアじゃなくてもいいのか?
沙良がゴブリンばかり索敵する所為で、俺と旭は魔石取りに追われた。
こんな魔物じゃ、オリハルコン製のナイフが泣くぞ!?
暫くゴブリン狩りが続き、そろそろ他の魔物を見たいと思っている頃、フォレストスネークと会敵した。
木の枝から攻撃される前に、魔石取りのストレスでイライラしていた俺が瞬殺する。
皮が緑色なのは保護色だからか?
居る場所が分からなければ、見付け辛い魔物だな。
フォレストと名の付くウルフ・ベア・ボアも毛皮が緑色かと思えば、こちらは緑色じゃなかった。
初見の魔物であるフォレストキャットを倒すのは、猫好きな俺としては心が痛む。
一瞬、躊躇している間に沙良が倒した。
魔物だしな、仕方ない。
金曜日の攻略終了日までに、顔見知りの5つの冒険者パーティーが増えた。
地下10階に居た7パーティーの冒険者が、地下11階まで移動してきた事になる。
これは、治癒術師2人がいる俺達の治療を当てにしてだろう。
果たして3ヶ月後の移動も付いてこれるか?
冒険者ギルドで換金すると、フォレストスネークは皮の状態がいいから金貨2枚になった。
沙良は換金額が2倍になったと大喜びしている。
そうだろう、そうだろう。
だからもうゴブリンの魔石取りはさせないでくれ! あの醜悪な顔が夢に出てきそうだ。
地下11階の攻略は、ダンジョン内が迷路状から森になっただけで何事もなく終わった。
他領から来た冒険者は地下10階に居るので、俺達が関わる事はないと願いたい。
ホームに戻って旭と居酒屋へ行く。
生ビールを飲んで枝豆を摘まみながら旭が口を開き、
「沙良ちゃんがゴブリンの魔石取りばかりさせるから、手が腱鞘炎になりそう!」
珍しく不満を漏らす。
5日間で150匹以上だからな。
更にフォレストキャットの魔石取りを、60匹以上させられれば気持ちは分かる。
「あ~、悪い。沙良の石化魔法のLvが上がるまで我慢してくれ。あいつは夢中になると周りが見えなくなるから……」
「それは知ってるけど、ゴブリンは嫌い!!」
そう言って旭が生ビールを飲み干す。
今日は好きに飲ませてやろう。
「その内に飽きるだろう。フォレストスネークの皮を高く買い取りしてもらえて喜んでたしな」
「だといいなぁ~。そうだ! ベアがいる森なら、ローリエが採取出来るんじゃない?」
ゴブリン狩りから意識を逸らせたい旭が、以前ベアが居た森でローリエを採取したのを思い出したようだ。
ふむ、上手く誘導すれば沙良が採取したがるか?
「それとなく言ってみよう」
俺の言葉に旭は大きく頷き、だし巻き卵を口一杯頬張った。
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