椎名 賢也 72 迷宮都市 地下9階&スーパー銭湯
誤字脱字を修正していますが、内容に変更はありません。
月曜日。冒険者ギルドで地下9階の地図(銀貨90枚)を購入して、ダンジョンに向かう。
地下9階の安全地帯でマジックテントを設置後、常設依頼を確認した。
【ダンジョン地下9階 常設依頼 C級】
ケンタウロス1匹 金貨10枚(魔石・槍・本体必要)
ユニコーン1匹 金貨20枚(魔石・本体必要)
バイコーン1匹 金貨20枚(魔石・本体必要)
バジリスク1匹 金貨10~13枚(魔石・本体必要)
※イエロータートル1匹 銀貨50~55枚(魔石・本体必要)
※ピンクタートル1匹 銀貨50~55枚(魔石・本体必要)
新しい魔物は色違いのタートルか……。また、沙良がコレクションしそうだな。
安全地帯を出て直ぐ、沙良が索敵した魔物に向かって駆け出す。
魔物の姿が確認出来るまで近付くと、イエロータートルだった。
相変わらず分かり易い妹だ。
ニコニコ顔で笑っているから、全色揃いそうだと思っているんだろう。
俺がライトボールで倒したあと、沙良がアイテムBOXに収納して移動を始める。
次の魔物はピンクタートルで、旭が倒すのを見て満足そうな顔をしていた。
他はリースナーのダンジョンにも出現する魔物だ。
特に気を付ける必要もなく、俺達は淡々と魔物を狩った。
5日後。冒険者ギルドで換金を済ませ、肉屋へファングボアの肉を卸しに行き、肉うどん店に寄る。
母親達に売り上げの確認をしたあと、材料補充をして店を出た。
今回も、怪我人を治療する機会はなく旭の出番はなかった。
ホームへ戻り、沙良に飲みに行くと伝え旭と家を出る。
明日は何も用事がないので、少し帰りが遅くなっても大丈夫か?
「旭、少し歩くが今夜は焼き鳥屋に行こう」
「焼き鳥いいね~。うずらの卵が食べたいなぁ」
旭は俺の提案に賛成したが、焼き鳥じゃない物を食べたいと答える。
それは、うずらの卵を茹でた物を串に刺して焼いたやつか?
大抵、焼き鳥屋のメニューにあるので食べられると思う。
いつもは家から10分程度の居酒屋へ飲みに行くんだが、明日の事を心配しなくていいなら他の店も行きたい。
お小遣いが月に3,000円しか貰えなかった時は、行きたくても金がなかった。
沙良のアパート近くにある店をリサーチしていて良かったな。
30分後、焼き鳥屋の店内に入る。
ダンジョン内を駆け回っているお陰か、30分程度歩くのはなんでもない。
ただ、酔った旭を背負って帰るのは大変そうなので、飲みすぎないよう注意しておこう。
電子メニューを開くと、旭が早速うずらの卵を4本選択している。
そんなに食べたかったのか??
他に、つくね、もも、レバー、砂肝、鳥皮、軟骨、ささみ、手羽先を各4本ずつ注文して、最後に生ビールをタップし、電子メニューを置いた。
テーブルの上に注文した全ての串焼きが出て来ると、俺達は生ビールを乾杯し合う。
「うずらの卵が美味しい~! ほらっ、うずらって白身より黄身の部分が多いから、特した気分にならない?」
最初にうずらの卵を食べた旭が、得意げに語る。
いや、そんな事を言われても……。
「そうか? 殻を剥くのが面倒くさそうだとしか思わない」
「はぁ~、賢也は損してるよ! うずらの卵は、絶対食べておくべきだって!!」
旭に力説されて、仕方なく1本口にした。俺は普通に鶏肉が食べたい。
別に特別美味しい物じゃないだろう?
「ねっ、どう?」
「うずらの卵だな」
俺は、そう感想を言ってつくねを食べた。
聞いた旭が、がっかりした様子で口を尖らせる。
「沙良ちゃんは好きなのに……」
それは俺達と一緒に行くと奢ってもらえるから、卵より高いうずらの卵を注文したんだと思うぞ?
あいつは節約が大好きだからな。
日本にいた頃、食事に連れていってやると言えば喜んで来たし。
「帰りはまた30分歩くから、あまり飲みすぎるなよ」
旭の言葉を無視して、冷めない内に手羽先に手を伸ばした。
そんなに好きなら、うずらの卵は譲ってやるよ。
焼いた手羽先もいいが、胡椒がピリッと効いた揚げた手羽先を今度食べに行こう。
注文した串焼きを食べ終え、店から出て歩き始める。
帰りも同じ距離を歩くと伝えたからか、旭は飲みすぎる事もなく自分の足で歩いていた。
いつもこうだと助かるんだがな。
翌日、土曜日。
沙良に起こされ時計を見ると10時だった。
旭の姿はなく、先に起きていたようだ。
飲んだあとは大抵、俺のベッドに潜り込んでくるので一緒のところを見られずに済み、ほっとする。
「お兄ちゃん。温泉の代わりに、スーパー銭湯へ行きたい!」
Lvが足らず、ホーム内の移動範囲で行ける温泉がないからだろう。
沙良のお願いを聞いてやり、車を出した。
近所にあるスーパー銭湯は、天然温泉なので気分だけでも味わえる。
電子メニューで入浴料と岩盤浴を選び、支払いを済ませて男湯へ向かった。
入口で、そわそわしている旭に釘を指す。
「旭。誰もいないからといって、女湯を覗こうとするなよ?」
「俺は、そんなに変態じゃない! バレたら、沙良ちゃんの好感度が下がるでしょ!」
それは、バレなきゃしたいって事か? 妹が好きな気持ちは分かるが、止めておけ。
告白も出来ないくせに、裸が見たいとは……。兄の前でいい度胸だな。
動こうとしない旭の手を引っ張り、脱衣所に入る。俺が傍で、しっかり監視してやろう。
体を洗い、大浴場・露天風呂・ジェットバス・サウナを堪能したあと、岩盤浴コーナーへ。
といっても既に充分温まっているから、リクライニングルームで漫画を持ち込み体を休めた。
こういった所にある人気の漫画は、沢山の人が読む所為でヨレヨレになっている事が多いが、ホーム内の設備は新品同様で読み易い。
漫画を読むのも随分久し振りだ。
本屋で気になっていたタイトルを読み始めると、意外と面白かった。
少しして沙良と合流し、昼食を食べに行く。
俺は豚カツ定食、旭は刺身定食、沙良は花籠御膳を注文する。
食事の最中、沙良が旭にこの1ヶ月半の感想を質問していた。
旭の大満足だという答えを聞いて、沙良が安心したように微笑む。
ダンジョンマスターだった頃とは違い、今は俺達と行動出来るだけで幸せだろう。
好きな相手も近くにいるしな。
最後にもう一度入浴してから家へ帰った。
夕食後、3人でTV放送のホラー映画を観賞する。
雰囲気を出すため照明を消した事で恐怖が増したのか、俺の両側に陣取った旭と沙良が涙目になりながら、腕をぎゅうぎゅうと締め付けるので痛かった。
そして2人の上げる悲鳴が煩い! 映画は全て作り物なのに何を怖がっているんだ?
旭、お前は医者なんだから傷口が偽物だと分かるだろう!!
大体、音楽で心理的な効果を生み出す場面では、次の予想が出来るじゃないか。
俺はホラーが今一楽しめない性分なので、騒ぐ2人に閉口しながら、今度見る時はアクションにしようと決めた。
その夜、枕を持った旭が部屋に来て「怖いから一緒に寝てほしい」と言う。
お前は子供か!!
俺は溜息を一つ吐き、「ホーム内で幽霊が出る筈ないだろう!」と追い出した。
幽霊の存在を否定している訳じゃないが、沙良の能力で形成されたホームにはいないだろう。
考えれば分かりそうなものだが、怖がりの旭には思いつかなかったらしい。
日曜日。母親達と一緒に教会の炊き出しを終え、「美味しかったよ! また来週ね~」と言う子供達へ手振り返し見送る。
明日から地下10階の攻略をするので、旭が治療する機会がありそうだ。
近い内に子供達の家を購入出来るなと思いながら、旭が治療後どう対処するか気になった。
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