表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
688/702

第885話 シュウゲン 66 ガーグ老への報告&バールの種族

※椎名 賢也 103 迷宮都市 地下12階 石化の治療&地下12階に来た『白銀の剣』をUPしました。

 誤字脱字を修正していますが、内容に変更はありません。

 沙良が迎えに来るまで、まだ時間がある。

 ヒルダちゃんとガーグ老に話を通しておいたほうが良かろうと思い、工房へ向かった。

 工房の庭ではルシファーが筋トレをさせられており、女官長達の姿もある。

 我が姿を現すと、皆が一斉に振り返った。

 ほんの少しだけ竜気を()らしてみようかの。

 我をエロ(じじい)呼ばわりしたガーグ老に対し意地悪くほくそ笑んでいると、ハッと表情を変えた女官長が即座に(ひざまず)いた。

 ガーグ老は驚愕(きょうがく)に目を(みは)り、動けないでいる。

 そんな中、ヒルダちゃんとルシファーが驚いた様子で歩いてきた。


「えっ? シュウゲンさんは、竜族だったのですか‼」


「風竜王、御前失礼致します」


「風竜王!?」


 ヒルダちゃんとルシファーが次々と口を開く間、我はガーグ老を()め付けた。


「あぁ、巫女姫を探すために転生し記憶を失っていたのでな。驚かせて悪い」


「御方様……。そうとも知らず無礼な態度を取り、申し訳ありませんでした」


 固まったままだったガーグ老が、両手両膝を突き頭を深く下げる。

 そのまま顔を上げようとしない態度に溜飲を下げ、肩に手を置いた。

 そこから伝わる体の震えに後悔を見て取り、満足気に微笑(ほほえ)む。

 まぁ、これくらいで勘弁してやろう。


「皆の者、立ち上がれ」


 儂の言葉にガーグ老がゆっくりと体を起こし、直立不動の姿勢を取る。

 その顔面は蒼白(そうはく)で額には大量の汗を(にじ)ませていた。


「セイから話は聞いておる。巫女姫は記憶がなく我の事を祖父だと思っているから、皆も普段通りに接してくれ。これからも日曜日の武術稽古には参加するでな。バレないよう、気を付けるのだぞ」


「はっ、(かしこ)まりました!」


 声を(そろ)えて返事をする皆を一瞥(いちべつ)し、ヒルダちゃんを呼び寄せて工房へ向かった。

 あとを付いて来た女官長に茶の用意するよう指示を出して、(かお)り高い紅茶が()れられるのを待つ。

 2人分のティーカップに紅茶を注ぎ入れると、女官長は一礼して退出していった。

 

「巫女姫の母親であるヒルダちゃんには話しておこう。記憶が戻ってから、家族の前世が分かった。その……結花(ゆか)さんはフェンリルの女王であった。巫女姫の転生した先に護衛として付いてきたのだろう。何かしら縁があるようだが、そこまでは我にも分からん。そして尚人(なおと)君と(しずく)ちゃんも、女王と血縁関係にあるらしい。(あかね)の種族もフェンリルだったようだが……、こちらは血縁関係にないと思う」


 突然、家族の前世を知らされたヒルダちゃんは口を大きくポカンと開け唖然(あぜん)とする。

 それから聞いた言葉を飲み込むように、頭を押さえて首を振った。


「ええっと……フェンリルの女王には当然、(つがい)となる相手がいますよね? 俺、記憶が戻ったらその相手に殺されるんじゃ……」


「そのような事はないだろう。小夜(さよ)に夫がいても、我は仕方ないと(あきら)めたからの。無論、いい気持ちはせんが……」


 ガタガタと震え出すヒルダちゃんの気を(まぎ)らわせようと、他の家族についても前世の種族を教えてやる。


(ひびき)が獅子王!? 何か俺の相手は大物ばかりだなぁ……。それにしても風竜王は、何故(なぜ)巫女姫を探す必要があったのですか?」


「うむ、儂が愛したのは光竜王でな、周囲に反対されたが卵が生まれた。しかし、その子は風竜だったため母親の魔力で(かえ)す事が出来んかったのだ。そこで、全ての種族に魔力を与えられる巫女姫を探しに行ったのだよ。ちなみに光竜王は小夜で、沙良が見付けた卵が我らの子供だ」


「そんな事情があったのですか……。では娘は風竜王と光竜王の子を育てているんですね」


「目的を達成するために長い時間が掛かったが、結果は大成功といってもよい。ヒルダちゃんの娘は我の孫でもあるが、感謝している。今(しばら)くは行動を共にするので安心致せ」


「いえ、娘は子竜が可愛くて仕方ないようですから、感謝など必要ありません。それにしても、護衛役が多すぎませんかね? 竜族だけで5人とは……」


「何、少ないよりは良かろう。この話はセイしか知らぬ。ヒルダちゃんも内緒にするのだぞ」


「はい、肝に銘じておきます。ええっと……この姿であれなんですが、ヒルダではなく(いつき)と呼んで下さると助かります。俺としては、樹の意識のほうが強いので……」


 人間だった年数より、ハイエルフの王女だった時が長いのに意識は男性なのか??

 それは予想外だった。


「そっ、そうか……それは悪かったな。これからは樹君と呼ぼう」


「ありがとうございます」


 お互い気まずい雰囲気(ふんいき)のまま、紅茶に口を付ける。

 ちびちびと飲み干したあと、(おもむろ)に席を立った。


「次の用事があるから、我は先に失礼しよう。ガーグ老には、あまり気にするなと伝えてくれ」


「あっ、はい分かりました」


 工房から出ると、ガーグ老達と女官長達が打ち揃って片膝を突く。

 先程、普段通りにしろと言ったばかりなのにこの態度か……。

 大丈夫か不安になってきた。

 ヒルダちゃん……いや樹君の前でも演技が成功しているとは思えん。

 この分だとガーグ老達に期待するのは無理かも知れんな。

 我だけでも、祖父としての態度を崩さぬようにしよう。


 頭を下げたままの皆の前を通り過ぎ、工房を後にした。

 次に向かうのは王都だ。

 バールの種族がずっと気になっていたが、竜気を全開にして範囲を広げると火竜の気配がする。

 同族の風竜ではなく火竜が(そば)に居たのは、ドワーフに転生したからか……。

 後で、火の精霊王にも礼を言わねばなるまいな。

 上空を見上げ、一瞬で高高度まで到達する。

 あぁ、やはり自分で飛ぶのは気持ちが良い。


 少しだけ空の旅を楽しんでから王都の家に降り立つと、我の気配を察したバールが武器屋から移動して来ていた。


御前様(ごぜんさま)、記憶が戻られた事、お喜び申し上げます」


「バールよ。長い間、属性違いの我に仕え大儀であった。火竜王へは、儂から礼を伝えておこう。承知しておろうが、記憶も戻ったし竜谷(りゅうこく)に帰還してよいぞ」


「御前様が巫女姫を探しに行かれたので、当方の王も巫女姫様の恩恵を受ける事が出来ました。属性違いの聖竜王を愛したため、卵が孵らず(なげ)かれていたのです。これは全て、御前様が別の世界で縁をお結び下さったおかげかと存じます。本当に感謝の念に堪えません。私は御前様に仕える事が出来幸せでした。今後も、もしご用命があれば駆け付けますので、遠慮なく呼び出して下さい」


 ちょっと待て。

 火竜と聖竜の番なら、ガゼインとアレクシアの事ではないか?


「あ~、現在の火竜王はガゼインで合っておるか?」


「はい、風竜王様とは仲の良い方でございます」


 なんと、記憶を失っている間に火竜王は代替わりしたらしい。

 卵が孵った事で長老達に認められたのだろう。

 それと同時に、竜王になる事を固辞していたアレクシアも聖竜王となったのだな。

 いやはや、属性違いの竜王が4人も(つど)うとは驚きだ。

 巫女姫には最強の守護者が既に就いておる。

 これなら、彼女を狙う相手とて慎重にならざるを得まい。

 

「そうか、それは知らなんだ。ガゼインはさぞかし喜んでおったろうな」


「ええっと、まぁ……そのようです」


 バールが視線を外して言い(よど)む姿に、何か問題があったのかと首を(かし)げる。

 セイは立派に育っているようだが……。

 そういえば、両親の件には触れなかった事に思い当たった。

 気付いていない(はず)はないし、内緒にするような話でもない。

 はて? 親子関係に問題でも生じているんだろうかの?


「この子が我の子供だ」


 腕に抱いていたシーリーを起こさぬよう、バールに見せてやる。


「巫女姫様の魔力を存分に受け、健康に育っていますね。光竜王も安心されたでしょう」


 すやすやと寝ているシーリーを見つめて、バールが顔を(ほころ)ばせた。

 竜族は絶対数が少ない種族だけに、子竜が生まれる事は滅多にない。

 どの属性でもそうだが、子竜の誕生は大変喜ばれる事だった。

 これから竜谷へ帰ると言うバールを見送り、我も迷宮都市に戻るとしよう。

評価をして下さった方、ブックマークを登録して下さった方、いいねを押して下さった方。

読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。

応援して下さる皆様がいて、大変励みになっています。

これからもよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ