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第883話 シュウゲン 64 セイからの事情説明&家族の前世 1

※椎名 賢也 101 迷宮都市 地下12階 沙良の魔石取りの練習&桃の賭け事をUPしました。

 誤字脱字を修正していますが、内容に変更はありません。

 儂が2人の女性問題に頭を悩ませている間に沙良はベスモスを捕獲し、シルバーに(あかね)を呼びに行かせた。

 待っている間、ほんの少しだけ竜気を出して周辺を探ると、直ぐ近くに同族の気配を感じ振り返る。

 セイから聖竜の気が(あふ)れておるではないか!!

 目が合った途端(とたん)、驚きの表情を見せたので彼も我の竜気に気付いたのだろう。

 沙良の手前、礼を尽くすのは(はばか)られたのか目礼された。

 なるほど……巫女姫の護衛には、セイが人族に化け就いておったのだな。

 自分が竜族である事を知らせぬのは、何か訳があるに違いない。 


 その後、戻ってきた茜からフェンリルの気配を感じて思わず目を(みは)った。

 これは一体どういう事だ?

 しかし、後から来たヒルダちゃんと(ひびき)君を見て絶句する。

 エルフのヒルダちゃんは精霊王より上位の者から加護を受けており、響君からは記憶にある獣王の気配がしたのだ。

 獣人の国へ行った際、挨拶を交わした獅子族の王が何故(なぜ)人の姿になっておるのだ?

 しかも、その記憶が本人にはないと見える。

 これは、後でセイに話を聞く必要があるな。

 今は孫娘が混乱しないよう、シュウゲンとして普段通りの態度を見せたほうがいい。

 記憶が戻った事を(さと)られないよう、我は表情を取り(つくろ)った。


 ダンジョンから出ると、黒竜のゼファーが沙良を見ながら笑顔で声を掛ける。


「ベヒモスは、おったか?」


「はい、1匹だけ見付けました」


「あれはS級ダンジョンに1匹しか出現せん魔物だからの。魔界にも、そうそうおるまい」


「他のS級ダンジョンは、ありますか?」


「4つあるS級ダンジョンで、ベヒモスがいるのは残り2つだろう」


 先程、南の大魔王がベヒモスをペットにしていると言っていたな。

 それにしてもゼファーの態度が(しゃく)(さわ)る。

 転生先を選べぬと知っていて、ドワーフの姿をした我を笑うとは……。


「出来れば残りの2匹も欲しいので、また魔界に連れて来て下さいね」


「まだベヒモスが必要なのか? 変なものを欲しがるのぅ……」


「今日は、ありがとうございます」


「久し振りに、ちい姫の顔を見れた。礼なぞ良い。それに、面白いものも見れたしな」


 まだ言うか! 我はもう記憶が戻っておるわ!

 腹に据えかね黒竜に歩みよると、周囲に聞こえないよう耳元で(ささや)いた。


「ゼファー、久し振りだな。近々顔を出すから、お前の指輪をくれ」


 すると顔色を変えたゼファーが(あせ)ったように目を泳がせ、黒い指輪を渡してきた。

 この黒い指輪があれば、魔力を大量に消費するが黒竜の(もと)に移転出来る。

 巫女姫だった沙良に渡したのも、同じ物だろう。

 単に黒竜を召喚する物と違い本来は竜族同士しか扱えぬが、魔力は無尽蔵にある巫女姫なら使用可能だからな。


 ゼファーは魔界から元の世界に我々を移動させた後、消えるようにいなくなった。

 そんな彼の姿を苦いものでも見るかのように見送り、ホームへ戻ってくる。

 沙良の家に帰ろうとするセイを引き留め、喫茶店に入った。

 竜族は魔力を(かて)として生きるので飲食は不要だが、人族に転生してから味わったコーヒーは気に入っている。

 儂は見慣れた電子メニューからブレンドコーヒーを2杯注文して口を付けた。


「我が誰だか分かるか?」


「風竜王様、ご記憶が戻られたのですね」


 セイは出てきたコーヒーに手も付けず、我から視線を外して返事をする。


「お主は巫女姫とどういった関係だ?」


「私は、聖竜と火竜の親から生まれた双子の混ざり竜です。そのため母親から魔力を受けられず、巫女姫の下で育ちました。彼女は、私にとって母親も同然の存在です。巫女姫を狙う者から姿を隠す必要があり、他の世界に転生した際、護衛として付いていきました。その時、かなりの獣人や巫女姫に縁のある者達が日本に転生しましたが、皆記憶を封印されています。私は記憶を取り戻した後、世界樹の精霊王に願いそのままにしてもらいましたが……。本来は巫女姫の記憶の封印が解けるまで、記憶が戻らないようになっています」


 なんと、セイは巫女姫に育てられたのか!?

 我とシャーリーンのように、属性違いの親だったらしい。


「では、響君や茜は記憶がない状態なのだな?」


「はい、皆様は前世がどのような種族であったか知らないでしょう」


 巫女姫だった沙良の周囲に、獣王やフェンリルがいる理由は理解した。

 沙良の記憶が戻らぬのは、世界樹の精霊王が封印しているせいだろう。


「記憶の封印を解かぬ理由があるのか?」


「それは……、巫女姫の気配が漏れるのを心配しているからです。アレは非常に執念深い性格ですので、気付いた瞬間に殺そうと襲ってくると思います」


厄介(やっかい)な存在に狙われているのだな。巫女姫は我の孫でもある。守る心算(つもり)でいるが、世界樹の精霊王に話を通したほうが良かろう。事情は把握した。他に知っておくべき事はあるか?」


「ええっと、ご自身で確かめられたほうが良いかと……。皆様は記憶がないので、私には種族しか分かりません。きっと知り合いもいるのではないですか?」


「ううむ、獣王とは既知であったが……。他にも我が知る者がいるかの? まぁ、見れば分かるだろう。セイよ、これまで通り巫女姫を頼むぞ」


「お任せ下さい」


 ようやく我と視線を合わせたセイは最後に力強く言い切り、冷めてしまったコーヒーを飲み干した。

 店を出て美佐子(みさこ)の家に戻ると、リビングのソファーで就寝準備をしている響君と会う。

 彼は(いま)だ娘に許されず、寝室に入れないみたいだ。

 そんな獣王の姿を不憫(ふびん)に思い申し訳なくなったので、美佐子と話そうと寝室の扉をノックした。

 扉が開かれ娘が顔を出した瞬間、獣王の第二王妃の気配を感じる。

 こちらは夫婦で転生したようだ。それなら口を出すのはやめておこう。


「遅くなったが、今帰った」


「あら? お父さん、今日はあまり飲んでないのね」


 飲みに行くと言って出かけたのに、酒の匂いがしない事に気付いた娘からそう言われ、ギクリとする。

 いや……今夜は色々ありすぎて忘れていた。

 

「うむ、今日は控えめにしたからの。起こして悪かった、おやすみ」


「おやすみなさい」


 これ以上何か言われる前に、そそくさと退散して階段を降りる。

 自分の部屋に行く廊下を歩いていると火竜の気配を感じ取り、まさかと思う。

 これは……この竜気は……ガゼインのものか?

 勢いよく扉を開くと、そこに居るのは(かなで)の姿をした懐かしい友だった。

 お前まで転生していたのか……。

 我と同じく属性違いの聖竜を愛した男を思い出す。

 彼女を(あきら)めるような事を言っていたが、(つがい)になったのだろう。

 ついさっきまで一緒にいた、セイに似通った竜気を感じて得心する。

 いやはや、お前が儂の息子として転生するとは驚きだわい。

 前世が何の種族でも不思議と家族には違和感を覚えずにいたが、こればかりは苦笑してしまう。

 ガゼインが記憶を取り戻したら、どうなるか楽しみだな。

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読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。

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