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第861話 シュウゲン 42 ダンジョンマスターの正体

※椎名 賢也 79 迷宮都市 不穏な影 1をUPしました。

 興味がある方は読んで下さると嬉しいです。

 誤字脱字を修正していますが、内容に変更はありません。

 30分後、沙良達がテント内に帰ってきた。

 

「沙良ちゃん。突然消えたら心配するだろう! 何処(どこ)へ行ってきたんだ?」


 沙良を見るなり、(かなで)が声を上げる。


「ごめんなさい。ちょっと、ダンジョンマスターに話しをつけに行ったの。でも、そこで予想外の人物と再会したんだよね~。誰だったかは、全員が(そろ)ってから話すよ!」


 にこにこと笑顔で返事をする沙良は、余程その相手と再会したのが嬉しいらしい。

 言い終わった瞬間、儂だけホーム内に移転させられていた。

 そして10分後、響君達と一緒に迷宮都市のダンジョンを攻略していたメンバーを連れてくる。

 

「あっ、シュウゲンさん。驚かないで下さいね! 摩天楼(まてんろう)のダンジョンマスターは、妹の(あかね)でした!」


 いや、驚くじゃろう!! ダンジョンマスターは、儂の孫だったのか!?

 茜は、儂が亡くなったあとに生まれた孫だ。

 美佐子(みさこ)に写真を見せられたが、(ひびき)君似の女の子(・・・)だったな……。


「そうか! して、茜はどこにおるのじゃ?」


「実家に連れてきたから、今直ぐ会えますよ~」


 ダンジョンから行方を暗ましていた間に、ホームへ連れてきたようだ。

 全員で美佐子の家に入ると、2人がお茶を飲みながら談笑していた。

 うむ。写真は髪が短かったが、今は伸ばしているのかポニーテールに結んでいる姿を見れば女性だと分かる。

 彼女が孫の茜だろう。

 大人数の来客に、茜が目を白黒させておる。


「お父さん! 娘の茜よ!」


 儂の姿を見て、美佐子が孫を紹介してくれた。

 儂が異世界に転生している事を事前に話していたのか、茜は席から立ち上がり挨拶してきた。


「初めまして、孫の茜です」


 そう言って一礼すると、握手を求められる。


「儂の名はシュウゲンだ。孫に会えて嬉しい」


 その手を取った途端(とたん)、引き寄せられ耳打ちされた。


「あとで是非(ぜひ)、手合わせを……」


 成程……、確かに儂の血を受け継いでおるな。

 

「了解した」


 祖父として、受けないわけにはいくまい。これは楽しみじゃ。

 それから茜は、異世界で別人になっている奏、結花(ゆか)さん、(しずく)ちゃんの姿を確かめて若くなっている事を知り、(うらや)ましそうにしている。

 ただ、


「娘と母親が同じ年だとややこしいな」

 

 その関係性の変化の感想を述べた。

 最後に初対面のセイと名乗りを交わす。

 その際、目付きが鋭くなったのは、セイの強さを感じ取ったからだろう。

 皆との遣り取りを終えたあと、


「沙良姉さんが生きていて嬉しい。どんな姿でも構わない、ずっと会いたかったんだ……」


 日本で亡くなった沙良を抱き締め涙を(こぼ)す。


「ダンジョンマスターなんて大変だったわね。今日は茜の食べたい物を作るから、楽しみにしてて」


「あぁ、食事をするのも久し振りだから胃が驚かないか心配だ」


 沙良の体を離すと今度は賢也に向き直り、言葉を掛ける。


「兄貴、行方不明になって心配してた。自分が異世界へ転移したから、もしかしたらと思っていたが、姉さんに召喚されてるとは思わなかったよ。しかも皆、若返ってるし……。もしかして私が一番年上になったんじゃないか?」


「茜は今54歳だろ? 両親は42歳になってるから、見た目じゃ一番老けてるかも知れん」


 賢也は笑いながら茜の体を抱き締めた。

 儂を除けば、見た目からすると茜が一番年上に見えるのは難点じゃな。

 

「独りでよく頑張ったな」


 賢也に背中を()でられ、少し恥ずかしそうな様子を見せる。

 これから夕食の支度(したく)をする沙良と美佐子が席を外し、儂達はこれまでの経緯を語り始めた。

 ある程度、美佐子が事情を話しておるだろうが、茜は皆の話に真剣に耳を傾けている。

 特に、自分と同じダンジョンマスターだった尚人(なおと)君に興味があるのか、突っ込んだ話を聞く。

 ダンジョンに召喚した魔物の話題になると、


「俺は、メタルスライム、ハイオーガ、オリハルコンゴーレムだよ!」


 尚人君が得意げに答える。

 メタルスライムとは、聞いた事がない魔物だな。

 オリハルコンゴーレムは、ダンジョンの深層近くに出現するが……。

 確か、尚人君がいたダンジョンは地下10階までしかなかった(はず)じゃ。

 大型ダンジョンでもない浅い階層で、オリハルコンゴーレムが現れたら冒険者は不思議がるだろう。

 冒険者ギルドマスターは、(もう)かってウハウハかもしれんがの。

 ダンジョンマスターだった尚人君がいない現在、そのダンジョンに召喚した魔物は出現するんじゃろうか?


 他にも、異世界の文明の程度や貨幣価値等を聞いておった。

 沙良が公爵令嬢である事や、奏が伯爵で結花さんがその娘だと知った時は目を見開き驚く。

 儂も、家族に貴族出身の者が3人いるとは思わんかった。 

 名ばかりのドワーフ王とは違い、貴族は完全に世襲制だしの。 

 儂の種族がドワーフで鍛冶が出来ると話してやると、目を輝かせて身を乗り出し「剣を鍛えてほしい」と言う。

 ドワーフの鍛冶魔法じゃ鍛える作業は不要だが、勿論(もちろん)作ってやろう。

 セイの次くらいには強そうな感じだしな。

 そうなると、宝箱にヒヒイロカネが入っておらんかったのが悔やまれる。

 茜がダンジョンマスターだったなら、宝箱の中身は操作出来なかったのかも知れん。

 本人が入れたなら、踊り子の衣装や鬼のパンツは選ぶまい。

 

 夕食には、だし巻き卵、焼き鮭、唐揚げ、エビフライに味噌汁とご飯が並ぶ。

 おかずばかりで野菜が足りないようだが、味噌汁には里芋と大根とネギが入っていた。

 茜は久し振りの和食に感動しながら、ご飯をお代わりする。

 結花さんの料理を食べずに済んだ、(いつき)君、尚人君、雫ちゃんも嬉しそうだな。

 おおっ、エブフライがぷりぷりで旨いのう。2本しかないのか……。

 

「茜は、何年くらいダンジョンマスターをしていたの?」

 

 食事中、沙良が茜に質問する。


「カレンダーがある訳じゃないからおおよそになるが、13年くらい前だと思う」


「13年!?」


 これには、皆が驚きの声を上げた。

 茜が日本で亡くなった話は聞いていない。

 美佐子が沙良に召喚されて3ヶ月くらいなのに、茜が異世界で13年もいるのは時間軸が違うからか?

 儂も、小夜と同じ時期に異世界に転生していない事を考えれば納得だが……。


「まぁ、摩天楼のダンジョンは階層が多いから、攻略のし甲斐(がい)があって楽しかったよ」


 ダンジョンマスターとして召喚されても、茜はダンジョンの攻略を楽しんでいたようだ。


「儂の孫の中で一番Lvが高そうじゃが、幾つになっておる」


 それならと、気になっていたLvを尋ねてみた。


「200だな。それ以上は、このダンジョンの魔物では上がらないみたいだ」


「200……って」


 聞いた皆が絶句し、口をぽかんと開けておる。

 高Lvだと思ってはいたが、そこまでとは……。


「儂より高いとは感心するわい。こりゃ負けておれんな、明日から本格的にダンジョン攻略をしようかの」


 儂は孫に対抗意識を燃やし、Lv上げを決意した。

 奏は姪に負け落ち込んでいるようだが、同じ摩天楼のダンジョンを攻略すれば追い付くじゃろう。

 唯一、雫ちゃんだけは茜を尊敬の眼差しで見つめている。

 親である美佐子と響君、兄の賢也は、さもありなんとばかりに苦笑しておった。


 その後、沙良が賢也と尚人君の結婚を発表した。

 安心せい、それは偽装じゃ。

 儂は初めて聞かされた時、かなり驚いたがな!

 孫と曾孫、しかも同性が結婚するなどありえんわ!!

 しかし話を聞くと、茜は突然笑い出し机をバンバンと叩き始めた。

 更にはニヤリと笑みを浮かべ、


「旭、良かったじゃないか初恋(・・)が実って!」


 2人を祝福するかのような言葉を述べる。

 むむっ、それはどういう意味じゃ? 場合によっては看過(かんか)出来んぞ!

評価をして下さった方、ブックマークを登録して下さった方、いいねを押して下さった方。

読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。

応援して下さる皆様がいて、大変励みになっています。

これからもよろしくお願いします。

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