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第855話 シュウゲン 36 摩天楼ダンジョン30階 セイとの出会い

※椎名 賢也 73 迷宮都市 地下10階 初めての治療をUPしています。

 興味がある方は読んで下さると嬉しいです。

 誤字脱字を修正していますが、内容に変更はありません。

 異世界の沙良の家から、ホームに戻ってきた。

 小夜(さよ)も一緒なので夕食は期待出来そうだな。

 沙良が(かなで)に雪ウサギのマントを注文しに行きたいと店の案内を頼み、それを聞いた(いつき)君は同行したいと言って3人で王都へ出掛けた。

 儂が食べたい料理を小夜に伝えると、美佐子(みさこ)が一緒に食材の買い出しに行こうと誘ってくれた。

 小夜がいるなら儂が車を運転しよう!

 そう思っていたが、美佐子の車はオートマと呼ばれているもので操作方法が違うらしい。

 儂が乗っていた車はマニュアルと言われ、現在の日本では少ないそうじゃ。

 オートマの方が操作は簡単だと言うが、慣れていない儂が事故を起こすわけにもいくまい。

 仕方なく娘に運転してもらった。早急に(ひびき)君から操作方法を学んでおこう。


 30分後。スーパーに到着すると、その大きさに度肝(どぎも)を抜かれた。

 3階建ての店内は広く、儂の知っているスーパーとは大違いだ。

 百貨店のように幾つもの店が入っておる。

 靴屋・本屋・服屋・雑貨屋・パン屋・宝石屋・飲食店……。

 目的の食材を購入する前に、それらの店を通り過ぎる。

 ショッピングカートを引いて、小夜と美佐子が夕食に必要な野菜・肉・魚をカゴに入れていく。

 儂は、それを横目で見ながら値段を確認していた。

 確かに50年で物価は上がったようだな。

 それに総菜の種類が増えておる。弁当が、これ程多く売っておるなら料理が出来ん独り者は助かるだろう。


 会計を済ませたあと、小夜と美佐子が服屋に行くと言うので、儂は大人しく椅子に座りながら待つ事にした。

 女性の買物は長いからの。どっちの服が似合うかと聞かれるのは、毎回困る。しかも、儂が選んだ方を購入する事は滅多にない。ならば何故(なぜ)聞くのだ?

 そう思い、全て似合うと答えれば、今度は溜息を吐かれてしまう。

 儂には女心が理解出来んようじゃ……。 

 まだまだ時間が掛かるだろうと、近くにあった自販機の缶コーヒーを飲む。

 これほど気軽にコーヒーを飲めるようになるとは、コーヒー党の儂にとってホーム内は最高の環境だな。

 今回は意外と早く決まったのか、1時間も掛からず2人が帰ってきた。

 小夜が嬉しそうにしている様子を見て、良い買い物が出来たのだろうと思う。

 スーパーを出て美佐子の家に着くまでの間、2人は楽しそうに孫達の話をしていた。


 王都に行った沙良達が戻り、家族(そろ)って夕食を食べ始める。

 儂の希望通りテーブルには、(ぶり)大根・肉じゃが・きんぴらごぼう・法蓮草(ほうれんそう)の白和え・蓮根(れんこん)の肉詰めフライ・豚汁・御飯が並んでいた。

 大根には味が染み込み、なんとも言えん美味さが口に(あふ)れる。

 あぁ、料理上手な妻を持って儂は幸せだな。

 初めて王都に行った樹君は疲れたのか、少し元気がないようだが……。

 (しずく)ちゃんが美佐子に蓮根の肉詰めフライの作り方を質問した途端(とたん)、目を輝かせた。

 これは相当結花(ゆか)さんの料理の腕が……いや何も思うまい。

 家庭内の不和に繋がる事を突っ込んではいかん。


 食事を終えた小夜が自宅に戻る前に、儂は事前に用意した風呂敷に包んだ土産をそっと手渡す。

 中身は日持ちする甘い物と、いつか再会した時に渡そうと思っていた指輪だ。

 ダンジョンの洞窟で採掘した宝石を職人に加工してもらい、儂が鍛冶魔法で指輪にした。

 ダイヤモンドの代わりに、無色透明な宝石を付けた指輪を気に入ってくれるといいがの。

 次回会う時、着けてきてくれるじゃろうか?

 今の夫に気兼ねして躊躇(ためら)いそうだが、儂の前で一度だけでも指輪をしてほしい。

 そう願いつつ、小夜を見送った。


 日曜日。子供達の炊き出し後、ガーグ老の工房に行き沙良に懐くガルム達を見て、テイムされた可能性があると響君に伝え忘れたのを思い出す。

 沙良は、ガルムから飛翔(ひしょう)魔法を習得する方法を思い付いたと話しておったが……。

 魔物から魔法を体に受けるだけで、新しい魔法を覚えられるのは(うらや)ましい限りだ。

 その方法だと、儂、奏、雫ちゃんは無理だろう。

 そもそも精霊の加護がない人間は、魔法をどのように習得するのかの?

 ガーグ老相手に槍の稽古を終えると、沙良が昼食の準備を始める。

 響君と樹君はガーグ老と工房内へ入っていった。

 相変わらず、2人の行動が怪しい。


 食後に響君を手招きしてガルムの件を伝えると、先程ガーグ老から話があったと言う。

 どうやらガーグ老は、沙良が10匹を一度にテイムした事を普通ではないと思い内密に伝えたようじゃ。

 懸念(けねん)事項であったガルム達は、笛の指示に従うそうで問題は起きなかった。

 それにしても父親の響君は分かるが、樹君にも話す必要があったのか?

 儂と奏を工房に残して、ガルムの飛翔魔法を習得した皆は今から練習するそうだ。


 空を自由に飛べるのは戦略的にも利が高い。

 何かあった時、逃げる手段が増えるのは良いな。

 知られると(まず)い能力を持つ家族は、飛翔魔法のLvを優先的に上げてほしい。

 まぁ、沙良の場合はホームへ移動するのが最も安全だろう。

 誰にもついていけない場所へ、瞬時に移動可能な能力があるのは安心材料になる。

 孫娘を誘拐するのは至難の(わざ)だ。余程、油断せぬ限り敵に後れは取るまいて……。

 ガーグ老相手に将棋を指しながら、移転の能力がある沙良の護衛をするのは大変そうだなと他人事のように思った。


 月曜日~金曜日の午後は、摩天楼(まてんろう)ダンジョンの洞窟で採掘をする。

 土曜日。響君に車の運転を習ったが、どうにもオートマの操作は慣れぬ。

 こんなに簡単では運転中に眠りそうだわ。

 ホーム内の移動出来る範囲は少ないが、近所の地理を覚えようと適当に車を走らせた。

 振動の少ない車内は、エアコンもかかり快適だのう。

 音楽も聞けるそうで、車の性能は50年前より格段に上がっておる。

 響君が流してくれた昭和歌謡を口ずさみながら、美佐子の家から沙良達が住んでいるマンションの道を往復した。 


 日曜日。子供達の炊き出し後、沙良が「楽器を教えるから、希望する子は残ってほしい」と話していた。

 楽器の演奏が出来るようになれば、冒険者以外の職に就く事も出来るだろう。

 子供の将来のために、色々と考えておるようじゃ。

 沙良を1人残すのは心配だからと、樹君が家に待機すると言う。

 沙良の家は高い塀で囲まれているが、空からの侵入にも警戒した方がいい。

 ガルムのように、飛べる騎獣に乗ってくる可能性も考えられるからの。

 2人を残して、儂らはガーグ老の工房へ移動した。


 沙良がいないため、結花さんが昼食にカレーを作ってくれたが……。

 こんなに甘いカレーを食べたのは初めてだ! 砂糖でも入れたのか??

 皆の様子を見ると、覚悟を決めたように無言で完食していた。

 当然、誰もお代わりはせず、残ったカレーは結花さんのアイテムBOXに収納される。

 樹君が沙良の家で待機すると言った理由は、他にもあったようだな。

 結花さんの料理は、悪いが一度食べれば充分だ。

 

 儂らを迎えに沙良と樹君が工房内へ入ってきた。

 沙良にガルム達が跳びつく姿を見て、事情を知らない賢也が驚き対局を中断して席を立つ。

 

「お兄ちゃん、大丈夫だよ! (なつ)いているだけだから」


 沙良が兄に安心するよう言うと、


「そうなのか? 突然、お前に向かって走り出したから何事かと思った」


 賢也がほっとした表情で肩を下げる。

 その説明で大丈夫だろうか? 

 樹君の両肩に止まる2匹の白(ふくろう)を見慣れているからか、皆は気にしていないようだった。

 ガーグ老の工房を出てホームに戻る。


 少しして、沙良がセイという男性を日本人の転移者だと連れてきた。

 響君が銀行の後輩だと紹介し、奏は摩天楼のダンジョンでパーティーを組んだ事があると言う。

 儂はその不思議な縁に驚きつつ、セイと対面した時に感じた強さ(・・)(いぶか)しんだ。

 この者の種族は何だ? 単純な高Lvではない強者の覇気(はき)が儂に向けられ、一瞬(ひる)む。

 儂がじっと見つめると、視線を受けとめたセイは、(わず)かに体を(すく)ませ目を()せた。

 何やら非常に気になる人物が出てきたな……。

評価をして下さった方、ブックマークを登録して下さった方、いいねを押して下さった方。

読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。

応援して下さる皆様がいて、大変励みになっています。

これからもよろしくお願いします。

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