表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

55/663

椎名 賢也 55 ダンジョン 地下9階 攻略組が誰も居ない階層 2

 沙良は俺の気も知らず、倒した真っ白のユニコーンをペチペチと叩いている。

 あれは、処女なのに襲ってきた事への抗議(こうぎ)だろうか?


 もう死んでる魔物にしても効果ないぞ?

 旭が見たら微笑ましい姿に映るのかもな。

 兄の俺からして見れば、残念な事この上ない姿にしか見えないがな。


 気の済むまで放っておいたら、満足したのかユニコーンを収納して立ち上がった。


「ふふふっ、剥製(はくせい)になればいいんだわ」


 怖いわっ!

 

 ダンジョンを攻略するようになって、妹の性格が好戦的になったのは気の所為(せい)じゃないらしい。

 こりゃ地下9階のユニコーンは瞬殺される運命にありそうだ。


 元々、売られた喧嘩(けんか)は買う主義の妹だからなぁ。

 それで昔、旭と散々苦労させられたよ。


 不良達に囲まれて啖呵(たんか)切ってる場面に出くわした時は、心臓が止まりそうだった。


 あの時は一緒にいた、妹の(あかね)が不良共を回し()りで再起不能にしていて、それも非常に困った事になっていた。


 これはもう警察が来る前に逃げるしかないと、旭と一緒に妹達の手を(つか)んで遠くまで走った事を思い出す。


 後で訳を聞いたら、カツアゲされそうになったらしい。

 

「金出しな!」


 と言われたので最初に沙良が、


「お金なんか渡す訳ないでしょ!」


 と不良達を(あおり)り、


「痛い目をみなきゃわかんねぇか!」


 と恫喝(どうかつ)された事に茜が憤慨(ふんがい)し、回し()りでリーダーを倒したらしい。


 茜は空手の段持ちだ。

 不良達には相手が悪すぎたんだろう。


 しかも大好きな姉から、金を取ろうとした事も激怒の理由かも知れない。


 あの頃、茜は沙良が1人で外出しようとすると必ずボディーガードの(ごと)く付いていたから、沙良も安心していたんだろう。


 悪い虫も退治していたようで幼馴染の旭まで牽制(けんせい)されていた。

 旭の初恋が実らなかったのは、もしかして茜の所為(せい)か?


 旭が家に遊びに来ると、茜はいつも不機嫌になっていた気がする。

 悪いな旭、今頃気付いたわ。

 シスコンも、ここまで度が過ぎると兄の俺でもどうしようも出来ないぞ。


 沙良が異世界転移したと知ったら、旦那を捨ててきそうで怖い。

 優先順位がおかしな妹が、この世界に転移してこない事を祈ろう。


 沙良が次の魔物を発見したらしい。

 走り出す後ろを付いていくと、バイコーン体長4mが立ち止まって動かなかった。


 沙良は一瞬戸惑(とまど)っていたが、動かない魔物は(ただ)の的だ。

 眉間に魔法を撃って仕留(しと)めていた。


 納得いかない表情で血抜き処理をしている。

 異世界の魔物が、ゲームと同じ仕様とは限らないから仕方ないんじゃないか?


 バイコーンを収納し、地下9階最後の魔物を見付けて走り出す。

 地下8階では活躍(かつやく)出来なかったので、初日の今日は張り切っているらしい。 


 バジリスク体長5mが蜷局(とぐろ)を巻いているのが見えた。

 沙良が嬉々(きき)として魔法を撃ち込む。

 この魔物だけ換金額に差があるので、傷の少ない状態なら高価買取してくれそうだ。


 地下9階の誰もいない広々とした安全地帯に到着。


 マジックテントを中央に設置して、ホームの自宅に戻ってトイレ休憩をする。

 この階層は誰もいないから、いちいちテント内で過ごす必要がない。


 一応ダミーでマジックテントは置いておく事にするが、テント内に入る事はないだろう。


 今回は沙良のLv上げを優先させたいので、俺はアシストに(てっ)する。

 沙良は地下8階とは違い、魔物を倒せてご機嫌な状態だ。

 新しく購入したマジックバッグも役に立ってなにより。


 2回目・3回目の攻略も楽しそうに魔物を狩っていた。

 沙良がダンジョンの攻略を嫌がらずにしてくれると、早くLvが上がるので俺も助かる。


 5日後。

 冒険者ギルドで換金だ。


 ケンタウロス50匹 金貨500枚

 ユニコーン50匹 金貨1,000枚

 バイコーン50匹 金貨1,000枚

 バジリスク50匹 金貨750枚、その他色々


 思った通り、バジリスクは金貨13枚の所を金貨15枚で換金出来た。

 地下8階に比べると稼ぎは少ないが、俺達はもう使い切れない程収入があるので問題ない。


 この日、沙良からもうこのまま夜間に攻略しようと言われて今更変える必要もないかと了解した。


 地下1階の女性冒険者の治療もしてあげないといけないしな。


 誰もいない地下9階の攻略は精神的に楽だった。

 ずっとこうなら良かったのになぁ。


 地下1階での攻略は光魔法を使えると知った女性達に非常にモテたが、生憎(あいにく)と皆年下過ぎて恋愛対象にはならなかった。


 1日中テントの中で休憩する訳にもいかず、テント外では異世界の紅茶しか飲めない。


 地下8階では危うく貞操の危機を迎えそうになった……。

 恋愛に対して、この世界は柔軟過ぎる!


 きっと旭がここに転移していたら、男性にモテモテだったかも知れないな。

 あいつは身長が175cmだから、2m近くある冒険者にとっては保護対象に映るだろう。


 顔も日本人らしく童顔で可愛らしいので、マスコットにされそうだ。

 きっと俺の背に隠れ「お願い賢也、助けて~」と言ってくるに違いない。


 そんな想像をしていたら、ちょっと笑ってしまった。


 旭、お前が冒険者になったら大変そうだぞ?

 良かったな、沙良に召喚されたのが俺で……。



 その後――。

 再会した旭が治療後、テントに連れ込まれる度に俺や沙良が回収する事になった……。


 ヘ・ル・プ・ミーじゃない!

 ちゃんと自分で断れよ! 

評価をして下さった方、ブックマークを登録して下さった方、いいねを押して下さった方。

読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。


応援して下さる皆様がいて、大変励みになっています。

これからもよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ