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第752話 旭 樹 再召喚 44 女性化の魔法&女官長達との再会 1 

誤字脱字等を修正していますが、内容に変更はありません。

 翌週月曜日から金曜日までダンジョンを攻略し、地上に帰還する。

 今週は人魚姫姿の噂を聞いた冒険者達が、息子目当てで治療に来るから(しずく)牽制(けんせい)していた。

 これじゃ兄妹の立場が逆だな……。


 明日は花嫁衣裳の試着をするので風呂に入った後、女性化の魔法を使用した。

 鏡に映った自分を見て、懐かしい気分になる。

 そこには生前と変わらぬヒルダの姿があった。

 また女性に戻るとは、なんとも言えない気分だが娘のためだし我慢しよう。

 パジャマを着て寝室に向かう。

 結花(ゆか)へ女性化すると話したから、どんな姿か色々想像しながら待っていそうだ。

 寝室の扉を開けると、俺の姿を一目見た妻が驚き固まっている。


「あ~女性化したんだけど……」


「ビックリしたわ。沙良ちゃんにそっくりじゃない! 顔は同じじゃないのね~」


 そう言って妻は近付き、まじまじと見つめたかと思うと下半身に手を伸ばす。


「あら残念……本当にない」


 次に胸のボタンを外し確認すると、遠慮なく触り出した。

 

「感触も本物みたいね!」


 分かったら、そろそろ()むのを止めてくれ。

 あんまり長く触られると変な気分になって困る。

 あっでも、これはチャンスか?

 俺も妻の胸を触ろうとした瞬間、寝室の扉が開き(しずく)が顔を(のぞ)かせた。


「お父さん。もう女性に……」


 言い掛けた言葉が途中で止まる。

 ああぁぁ~。

 妻に胸を揉まれている姿を娘に見られるとは最悪だ。


「なったみたいだね。ええっと、お邪魔しました」


 雫は顔を真っ赤にし、扉を閉め立ち去った。

 部屋に気まずい沈黙が下りる。

 女性同士なら痛い思いをさせずに済むと思っていたが、またの機会にしよう……。


 翌朝。

 昨夜は、しっかり俺の姿を見ていなかった雫から「沙良お姉ちゃんみたい!」と言われた。

 花嫁の代役だからなと言い訳し(ひびき)の家に行く。

 玄関で出迎えてくれた娘が、ぽかんとした顔をしている。

 

「沙良ちゃん、おはよう。この姿なら、ちゃんと代役が出来るだろう?」


「……もしかして(いつき)おじさん?」


「あぁ、女性化の魔法は自分の思った通り(・・・・・)の姿になれるらしい」

 

 次に息子がやってきた。

 俺の姿を見て言葉も出ないのか、口が開きっぱなしになっている。

 まぁ、父親が沙良ちゃんと似た姿になっていれば驚くだろう。

 俺は苦笑して家の中に入った。

 リビングで女性化した俺を待っていた全員が立ち上がる。

 その顔には、信じられないといった表情が浮かんでいた。

 響からは懐かしそうな視線を感じる。

 しかし、ここで真っ先に義祖父が声を上げた。


「ヒルダちゃんではないか! 儂に、お礼をしに来てくれたのかの?」


「いえ、……(いつき)です」


 ヒルダの姿を知る、シュウゲンさんに気付かれただろうか?


「嘘だろ!? 完全に別人じゃないか!」


「あぁ、沙良の代役が務まるな」


 義父が絶叫し、響が冷静に言葉を続ける。


「なんだか2人が(そろ)っていると親子みたいに見えるわね」


 美佐子(みさこ)さんが近付き、(おもむろ)に俺の胸を触り出した。


「あの、ちょっと……」


「あら、本物だわ」


「妻にも散々触られたので、どうかそれ以上は止めてくれると助かります」


 皆の前で胸を揉まれるのは恥ずかしい。

 

「でも父さんって確か、きょに……もご」


 思った通り(・・・・・)の姿になれると言ったから、息子が俺の性癖を暴露(ばくろ)しそうになる寸前口を塞いだ。 


「お前は余計な事を言わなくていいから!」


 だが少し遅かったようで、娘から生暖かい視線を送られる。

 何も言わずにいた賢也(けんや)君が俺と響を見て、


「まさかな……」


 呟いた言葉にドキリとした。

 勘の良い彼でも、俺達の過去は分からないよな?


「おじさん。これからブライダルショップに行って、衣装合わせをしましょう」


「あぁ……また、花嫁衣裳を着るのか……」


 代役をするため仕方ないとはいえ、げんなりする。

 娘に連れていかれたブライダルショップでは、大した時間も掛けずシンプルな衣装に決めた。

 女性用の下着も必要だろうと言われ購入しに向かう。

 70日間、ノーブラなのは(まず)いか……。

 初めて女性下着専門店に入り、気恥ずかしい思いをしながら下着を選ぶ。

 ついつい、自分が着ると忘れ妻用の物を真剣に選んでしまった。

 しかし女性下着は結構高いな、上下合わせて1万円以上するのか……。

 

 再び響の家に戻り、結婚式の打ち合わせを始める。

 襲撃が予想されるため雫と美佐子さんはホームで待機。

 怪我人が出た場合の治療は、妻と息子と賢也君に任せよう。

 影衆と『万象(ばんしょう)』50人がいれば、まず負ける事はない。

 式に参加する冒険者も全員武装した状態だしな。

 

 沙良ちゃん達が戻り、ガーグ老から会いに来てほしいと言われたのを聞く。

 ヒルダの姿を確認したいんだろう。

 響も一緒に行くと言いガーグ老の工房へ向かった。

 門を開けると、エルフの正装を着たガーグ老達が整列している。

 あぁ、女官長達もいるな。

 俺の姿を確認した瞬間、全員が王族に対する礼をして(あせ)った。

 

「あの……樹ですけど、立ち上がって下さい!」


 演技は、どこにいったんだ!? 娘に不審がられるじゃないか!

 言葉を聞いたガーグ老達が一斉に顔を上げた。

 その目には涙が浮かんでいる。

 ヒルダの姿を見て感激するのは理解出来るが、大袈裟(おおげさ)すぎるよ。

 女官長と目が会うと、彼女は立ち上がり俺の方にゆっくり近付いてきた。


「姫様……。お会いしとう御座(ござ)いました」


 涙を流しながら、亡くなったと思っていた俺を見つめる。

 再び会えて嬉しい気持ちが胸に込み上げてきたが、今は娘がいるから耐えないと。


「にょ……、女人(にょにん)殿。俺は今、樹だと伝えましたが……」 


「ええ、そうでしょうとも。失礼致しました。ガーグ老が私へ内緒にしていたのです。遅くなってしまい申し訳ありません。それと(そば)にいる御方は……?」


「初めまして、沙良の父親の(ひびき)です」


「あぁ、そういう事でしたか……。無事に見付けられたのですね」 


 姿が変わっている国王にも気付いたようだ。

 俺達は離婚した訳じゃないから、まだ夫婦なんだよなぁ。

 それぞれ、別に妻がいると伝えたら女官長が卒倒しそう……。

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読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。


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