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第542話 椎名 響 18 ガーグ老との再会 4&従魔登録&ダンジョン初攻略

誤字脱字等を修正していますが、内容に変更はありません。

 娘はガーグ老から渡された通信の魔道具が、影衆当主の長男に(つな)がる事へ困惑(こんわく)した様子をみせる。

 まぁ普通に考えたら家族でもない人物が相手になるのは、変だと思うだろう。


「あの……、ガーグ老の息子さんに(つな)がるのは悪い気がするんですが」


「なに問題ない。あぁ、渡すのは長男のゼンだ」


「ゼンさんは王宮で王族の近衛をされているから、連絡しても対処出来ないんじゃ……」


 ガーグ老は家具職人に偽装していたようだが、息子達の職業を聞いてなかった。

 どうやら王族を警護する近衛になっているらしい。

 迷宮都市から王都までは、早馬で駆けても1週間は掛かりそうだが?

 毎週どう稽古を付けてるんだ……。

 ガーグ老が沙良の疑問に対しどう切り抜けるか待っていると、 


「あぁ、今は休職し迷宮都市に戻ってきておるから大丈夫だ」


 なんと息子を休職にしてしまった!

 いやいや、近衛の職を休職する騎士などおらんぞ?

 しかも、それだと無職の状態にならないか?


 沙良達といつ出会ったのか知らないが……。

 その理由では、あまり長く一緒にはいられない。

 娘は休職中の男性と結婚するのか?

 ヒモ状態の婿(むこ)は遠慮したい。


「じゃあ、お言葉に甘えて頂きますね」


 沙良はガーグ老の息子が休職していると聞き納得したのか、お礼を言い俺達と一緒に工房を出た。

 俺の両肩に止まっているポチとタマが、名残惜(なごりお)しそうに離れていく。

 ごめんな、お前達のご主人様を召喚するのに、まだ時間が掛かりそうだ。

 工房を出てホームに戻る途中、娘が話しかけてきた。


「お父さん、ガーグ老達が将棋を指せて驚いたでしょう? 以前仕えていた姫様が教えてくれたんだって。元日本人みたいだから会えなくて残念だね。もらった剣は形見の品だから、大切にしないと駄目だよ?」


 ガーグ老達に、(いつき)が王宮を抜け出すため将棋を教えたと言っていた気がする。

 その姫様と異世界で再会した後、結婚したのは黙っておかないと。

 姫様は当然、樹だ。


 となると家具職人の前は、王族を護衛していた元騎士という設定なんだろう。

 じゃないと稽古を付けるだけの技量があるのは不自然だ。

 武人が家具職人になるのは無理があり過ぎる。

 本当に家具を製作出来るんだろうか?

 俺が譲り受けた剣は樹の形見の品ではなく俺専用の武器だが、ここは同意しておこう。


「あぁ……それは残念だな。剣は大切に使用するよ」


「あとね、ガーグ老が通信の魔道具をくれたの。お父さんに渡しておくから、何かあったら連絡してね。魔力消費が高い魔道具みたい。使用後は、忘れずにハイエーテル飲んだ方がいいと思う」


 予定通り、沙良は俺に通信の魔道具を渡してくれた。

 ホームに戻った後、妻と一緒に食べてと鰻の蒲焼を渡される。

 おお、今日は鰻丼だな~!

 昼はすき焼き、夜は鰻丼なんて最高じゃないか?


 その夜。

 いつになく積極的な妻と仲良く頑張ってしまった……。

 まるで20代の頃に戻った感じなんだが……。


 翌日の月曜日。

 今日から沙良達と初めてダンジョンを攻略する。

 午前中は結花(ゆか)さんが魔物をテイムするらしく、先に妻がテイムした魔物の従魔登録を済ませてほしいと言われた。


 沙良が結花さんと(しずく)ちゃんを連れてダンジョンにいった後、残された俺達は受付嬢へ従魔登録の申請をする。

 再び別室に案内され、ギルドマスターが対応してくれた。

 従魔登録の用紙は代表して俺が書類を記入する。


 テイム魔法か……、出来れば習得したいな。

 沙良の従魔である迷宮タイガーは、白虎だからかなり見栄えがいい。

 ゴールデン(・・・・・)ウルフには沙良が騎乗し、迷宮タイガーには賢也と尚人(なおと)君が騎乗する。

 妻がテイムしたシルバーウルフに2人で騎乗するのか?

 テイムしたばかりの魔物で大丈夫だろうか……。


 記入した書類を渡すと、ギルドマスターから従魔用の首輪を渡される。

 その際、()れた溜息が気になった。

 何だ?

 従魔登録に何か問題でも?


 この後で結花さんも2匹登録する予定なんだがなぁ。

 よく考えたら7人パーティーで5匹の従魔がいるのは、おかしいかも知れん。

 従魔登録を済ませギルド内で沙良達を待っている間、冒険者達の視線がボブに集中する。

 迷宮都市では従魔が珍しい存在なんだろう。

 王都や摩天楼(まてんろう)のあるダンジョンは普通に見掛けたが……。


 1時間程で、沙良達が新しくテイムした3匹(・・)の従魔を連れ戻ってきた。

 結花さんがテイムした魔物を見て絶句(ぜっく)する。

 どうしてウサギにしたんだ?

 あんな飛び跳ねる魔物に乗るなんて正気じゃない。

 騎獣としては最悪の部類に入るだろう。

 しかも名前を聞いて頭が痛くなった。

 

 アレキサンドリア・リヒテンシュタインと源五郎(げんごろう)とは……。

 結花さんは、妻と同じセンスをしているのかも。

 尚人君が名前を聞き残念そうな顔をしていた。

 まだボブの方がましか……。

 そして沙良は、新たに迷宮タイガーをテイムしたようだ。

 それを見た賢也が顔色を変える。


「沙良、従魔がもう1匹増えているように見えるんだが?」


 おっとこれは、長男のお説教が始まりそうだ。

 きっとボブに2人は乗れないと思い、俺の騎獣をテイムしてくれたんだろう。

 

「魔物のテイムにはMPが必要だったんだよな。悪い、母さんのテイムしたボブに2人乗りは無理そうだから、もう1匹テイムしてくれるよう沙良に頼んだんだ」


 俺はすかさずフォローに回る。


「……分かった。新しい従魔の名前を教えてくれ」 

 

泰雅(たいが)だよ!」


 うん、娘はまた安易な名前を付けたらしい。

 タイガーで泰雅(たいが)とは……。


「サラちゃん、相変わらずまんまの名前を付けたんだ……。でもフォレストウサギの源五郎(げんごろう)よりいいかなぁ」


 尚人君の本音が()れたようだ。


 3匹の従魔登録が済み、いよいよそれぞれの騎獣に乗ってダンジョンへと向かう。

 ダンジョンに到着すると入場料の銀貨1枚(1万円)を払い中に入る。

 スキップ制度を受けたから、ダンジョン内が迷路状なのは既に分かっていた。

 俺達は従魔に乗ったまま移動する。

 

 あぁ、これじゃ沙良の護衛をするのは難しいだろう。

 エルフとはいえ、人型では魔物の速度に追いつくのは不可能だ。

 影衆達は相当苦労しているようだな。

 ドラゴンの風太(ふうた)に騎獣を運んでもらうにしても、その騎獣の数は直ぐに(そろ)わない。

 苦肉の策として、通信の魔道具が役に立つといいんだが……。


 沙良が地下15階までに習得出来る魔法を、俺と妻と結花さんに魔物から受けてほしいという。

 俺は現在4属性魔法のボール系しか覚えていなかったため、その提案には賛成だ。

 その結果、4属性魔法のアロー系・ニードル系、氷魔法、雷魔法、闇魔法、石化魔法、魅惑(みわく)魔法を習得する。


「まじかっ……こんな簡単に!」


 俺はステータス画面を確認し、思わず口にしてしまう。

 教会の儀式を受け魔術書で覚える魔法の仕組みは、どこに消えたんだ?


 地下15階の安全地帯に到着後、沙良がマジックテントを幾つも出していた。

 そんなに数が必要なのか?

 6人用なら1個でいいだろうに……。


 お昼の時間を過ぎていたので、テント内からホームに戻り昼食にする。

 沙良の家で妻と一緒に、これから料理を作るらしい。

 ダンジョン攻略中、妻と娘の手料理が食べられるとは……。

 摩天楼(まてんろう)のダンジョンで提供された携帯食料とは違い過ぎ涙が出そうだ。


 2人が料理を作り始めると、結花さんが「私もお手伝いするわ」と申し出る。

 あぁ、それだけは止めてくれ!

 危険を感じた雫ちゃんと尚人君が、「お母さんは何もしないでいいよ!」と止めに入ってくれ助かった。

 携帯食料より(ひど)い物を食べさせられる所だ。


 ただ何もさせないのは申し訳ないと思ったのか、代わりにお茶を()れてほしいと頼んでいる。

 お茶なら大丈夫だろう。

 出来上がった料理を食べながら、雫ちゃんと結花さんが感動していた。


「ダンジョン攻略中に、美味しいご飯が食べられるなんて夢みたい! もうあの塩味のスープとパサパサのパンとは、おさらばよ!」


「夜はお風呂に入れて、自宅のベッドで眠れるんでしょう? 沙良ちゃんと一緒のパーティーを組めて良かったわ~」


 俺はその意見に激しく同意し、うんうんと(うなず)いた。

評価をして下さった方、ブックマークを登録して下さった方、いいねを押して下さった方。

読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。


応援して下さる皆様がいて、大変励みになっています。

これからもよろしくお願いします。

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