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第534話 椎名 響 10 息子達の結婚報告

誤字脱字等を修正していますが、内容に変更はありません。

 手紙を読み日本で亡くなったと思っていた沙良(さら)賢也(けんや)(しずく)ちゃんと尚人(なおと)君と結花(ゆか)さん、それに妻の母親が異世界で生きている事を知る。


 俺は嬉しさより、ティーナの体に沙良の意識がある事が気になり仕方なかった。

 妻は、約60年振りの親子の再会を果たし涙ぐんでいる。


 しかし(いつき)の妻である結花(ゆか)さんは(しずく)ちゃんと同い年になり、2人は別人の姿になっていた。

 樹が見たらどう思うか……。


 案外、若くなった妻を歓迎するだろうか?

 かなり年齢差がある夫婦になりそうだ。


 いや、それよりティーナの姿をしている沙良に驚くだろう。

 先程の手紙では、リーシャ・ハンフリーとなっていた。

 

 ティーナが生きていたのなら、ティーナ・エスカレードの(はず)だ。

 しかも公爵家の家に生まれた事になっている。

 ハイエルフの子供を養子にしたのか?

 どうもまだ知らない事がありそうだ。


 俺がティーナと沙良の事を考えていると、母親から言われた妻が若返っている事を知る。

 自分の姿は見えないので気付かなかったのか……。

 

 沙良が俺達2人の前に姿見を置く。

 美佐子(みさこ)は78歳から40代の姿に変わった容姿を見ると、嬉しそうにしていた。


 俺は、既に一度経験済みなので驚かない。

 前回は別人だった180歳から30歳に戻ったので、今回の方が全然ましである。

 

 その後、沙良から手紙を渡された。

 読んでみると、賢也が召喚された時と同じような内容だった。

 ある一文を除いて……。


 『なお既に覚えた能力はそのままとさせて頂きます。』


 この文面が示すのは、カルドサリ国王時代に習得した能力の事だろう。

 日本では魔法が全く使用出来ない状態だったが……。

 

 俺は直ぐにステータスを確認した。


 【椎名(しいな) (ひびき) 42歳】

 レベル 125

 HP 1,890

 MP 1,890

 剣術 Lv50

 槍術 Lv50

 魔法 特殊魔法(換金・交易・鑑定)

 魔法 火魔法(ファイアーボールLv10)

 魔法 水魔法(ウォーターボールLv10)

 魔法 土魔法(アースボールLv10)

 魔法 風魔法(ウィンドボールLv10) 

 

 Lvは125のまま魔法がグレー表示から黒へ変わり、沙良から召喚された事で3つの新しい能力が追加されている。


 この特殊魔法ってのは、一体何なんだ?

 魔法は魔術書で覚えるものじゃないのか……。

 やはり、教会は胡散(うさん)臭い。


【特殊魔法】

 ●換金 異世界の通貨を日本円に交換可能です。逆は出来ません。

 ●交易 ホーム内にある物を異世界の通貨と交換可能です。逆は出来ません。

 ●鑑定 物に対して、名称・素材・価値を知る事が出来ます。


 与えられた換金の能力は、異世界の通貨を日本円に換金する事が出来るものらしい。

 何故(なぜ)、日本円?


「おじさん。ちょっといま金貨を1枚、日本円に換金してくれないかな?」


「ああ、いいぞ」  


 尚人君に頼まれ了承すると、金貨を1枚渡される。


「換金」


 と唱えると、手に乗せた金貨が100万円札の束になった。

 これは一体、どんな魔法なんだ?

 それに、日本円に換金しても異世界じゃ使用出来ないだろう……。 


 尚人君は車が購入出来ると()び上がらんばかりに喜んでいるが、意味が分からない。

 不思議に思っていると、妻が沙良へ質問する。


「沙良、手紙の通りならここは異世界なのよね? どうみても自分の家にしか見えないんだけど?」


「あぁ、それはここが私の能力であるホーム内だからだよ。ホーム内は日本と同じなの。人はいないけど……。実家をホームに設定したから、家が新築になっていると思うよ? 家の中にある物は、全て新品の状態になっているしね!」


 何だと!?

 色々衝撃があり過ぎ、今自分達がいる場所が自宅だという事をすっかり忘れていた。


 娘のホームの能力が規格外過ぎる!

 それなら、日本と同様の生活を送れるという事じゃないか?


 話を聞いた美佐子が早速(さっそく)ピアノの方へ向かった。

 俺は新品の状態になっていると聞き、真っ先に秘蔵の酒を確認する。


 定年退職の祝いに頂いた高い酒は飲んでしまったが、ボトルを記念に取ってある。

 その他にも少しずつ飲んでいた酒の中身を確認すると、全てが未開封の状態になっていた。

 

 おぉ、これは(すご)い!

 室内を見渡すと、家も家具も新しくなっているようだ。


 そこに妻と母親が抱き合い感動している姿を見る。

 我に返り(あわ)てて自己紹介をした。

 そういえば、妻と結婚したのは母親が亡くなってからだ。


 その後、全員で沙良とお義母さんが作った料理を食べる事になった。

 妻の料理と同じ味がしたので、やはり親子なのだなぁと思う。


 沢山料理を作ったのか、中には鰻まである。

 俺の目の前に置いてある量だけが少し多い気もしたが、好きなので沢山食べておいた。


 料理を食べ終わる頃、沙良から爆弾発言が飛び出す。 

 

「お父さん、お母さん。驚かないで欲しいんだけど、お兄ちゃん(・・・・・)()が結婚しました!」


 その余りにも信じがたい内容に、俺は飲んでいたビールを全て口から出してしまった。


 賢也と尚人君が結婚しただと!? 

 2人にそんな素振りはなかったよな?


 異世界で8年を過ごし、染まってしまったんだろうか……。


 俺は動揺しつつ、口から(こぼ)してしまったビールを()く。

 既に結婚済みなら仕方ない。


 心を落ち着かせようとビールを飲んだ時、


「それでね、2人の子供は私が産んであげる事にしたから、孫の事は心配しなくても大丈夫!」

 

 沙良から発された次の言葉を聞いて、再度ビールを全て口から出す事になる。


 あ~それは、非常に不味い!

 理由は分からんが、今の体はティーナで間違いない。


 となると尚人君とは母親違いの兄妹になるから駄目だ。

 

「さっ、沙良。それは……尚人(なおと)君との子供を産むという事かい?」


「別人の姿になっているけど、お兄ちゃんとの子は産めないから当然でしょう?」


「いや……それは理解出来るんだが……。尚人君とは……ちょっと待ってほしい」


 俺にはそう言うだけで、精一杯だった。

 この件は母親の樹に丸投げしよう。

 沙良のLvを早く上げ、樹を召喚してもらわないと……。


 沙良から爆弾発言の後、賢也から別室で事情を聞きほっとする。

 どうやら沙良の勘違いから結婚式を挙げただけのようだ。


 娘の思い込みと勘違いは筋金入りだから、訂正するのは至難の(わざ)だ。

 本当じゃないから安心してほしいと言われ、害はなさそうだったので了解した。


 下手に言い訳すると、沙良が今度は何をするか分からない。

 賢也は、この世界の女性と結婚する気がないそうだ。

 言い寄られると困るので、このままの状態の方が都合がいいらしい。


 まぁ沙良のホームの能力を知られる訳にはいかないだろう。

 

 その夜――。

 賢也に若返った反動があるからと渡された、卵型のお世話になった。

 

 42歳の時、俺はこんなに元気だっただろうか?

 30歳に若返った時は、溜まっていたから理解出来るんだが……。


 こうして沙良に召喚された日は、自宅で眠るという異世界感が(まった)く感じられないものだった。

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読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。


応援して下さる皆様がいて、大変励みになっています。

これからもよろしくお願いします。

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