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第363話 【闇ギルド】からきた冒険者達 2

 16匹のキングビーと交戦する事になった俺達は、時間は掛かったもののなんとか全滅させる事が出来た。

 その代わりに、仲間3人がキングビーの毒針を刺されてしまったが……。


 手持ちのエクスポーションを使用して治療してみた結果、どうやら毒性が強いらしく解毒する事が出来ず焦る。


 刺された部分を見ると紫色に()れ上がっていた。

 この状態は……、もしやエリクサーが必要なんじゃないか?


 くそっ、この依頼は事前情報が無さすぎる!

 もしかして(わざ)となのか?


 刺された仲間の顔色がどんどん悪くなっていく。

 確かターゲットの仲間2人の男性は、優秀な治癒術師だと書いてあった。


 このままここに居る訳にはいかない。

 早く治療しないと、手遅れになる可能性が高い。


 本当は顔を覚えられるリスクを避けるため、地下14階の安全地帯には行かない心算(つもり)だったが背に腹は代えられないので、治癒術師の居る場所へ向かった。


 安全地帯に到着して直ぐ、俺達は地下14階を拠点にしている冒険者から注目を浴びてしまった。

 大型ダンジョンを攻略する冒険者は1度ダンジョンに潜ると、最低でも1ヶ月は地上に帰還する事はない。


 基本的にクランに所属しているので、配達を請け負う階層を移動する事が滅多にないから、大抵同じ階層を拠点とする冒険者とは顔見知りになるのだ。


 俺達は完全に部外者だった。

 顔を知られていないので、こうして注目される事が分かっていたから安全地帯には出来れば寄りたくなかったんだ……。


 冒険者の注目を浴びながら、サラという少女のテントが設置されている場所へと移動する。

 これもご丁寧に依頼主がダンジョン内の地図と一緒に用意したようだ。


 そんな物より、トレインするキングビーの情報をもっと詳しく教えろっ!

 これじゃまるで俺達の事も一緒に口封じに処分したかったんじゃないかと思えてくる。


 情報では少女のパーティーは3時間毎に安全地帯に戻り、怪我をした冒険者の治療をしていると書いてあった。


 少なくともこれから3時間待てば、治療してもらう事が出来るだろう。

 少女の暗殺を受けた俺達の事は、計画が失敗したのだからバレている可能性はない。


 どの面下げてと思うが毒に侵された部分を見ていると壊死(えし)を起こし始めているので、そんな事を気にしてはいられなかった。


「リーダー、ちゃんと解毒してもらえるのか?」

 

 仲間の1人が不安そうに尋ねてくる。


「あぁ、2人とも優秀な治癒術師らしいから大丈夫だろう」


「そうじゃない。キングビーに刺されたのは3人居るんだ。いくら優秀な治癒術師だって、エクスポーションで治療出来ない毒を解毒するにはMPが100以上必要になってくる。この時間なら、これからまだ攻略するのにMPを温存しておきたいだろう。3人目の治療の事を言ってるんだよ!」 


 そう言われて俺は黙ってしまった。

 治癒術師の男性2人は、年若い者だとあった。

 地下14階を攻略しているのなら、まだLvは20くらいだろうか?


 そう考えると、現在のMPは210しかない。

 1人を治療するだけで精一杯だろう。

 それ以上は治療を拒否される。


 パーティーリーダーが許可する事は、まず無いと思っておいた方が良い。


 刺された仲間が段々と焦り出す。

 もしかして自分がその3人目になるかも知れないと、疑心暗鬼(ぎしんあんき)になってしまっているらしい。


 これは良くない兆候(ちょうこう)だ。

 一体、どうしたらいい?


 何の解決策も見出(みい)だせず、そのまま3時間が経過。

 待っていても、少女のパーティーが安全地帯に戻ってこない。


 刺された仲間は、もう待っていられないと地上に引き返す事を主張してくる。

 言いたい事は理解出来るが、このまま地上に引き返すと今回の仕事は完全に赤字になってしまう。


 地上に帰還した所で完全に解毒出来る保証は何もない。

 今から地上に戻るとしても半日以上は掛かるからだ。

 その間に、壊死した部分は更に広がるだろう。 


 もし3人が冒険者活動を続けられない状態になってしまったらと思うと、俺はこのまま少女のパーティーが安全地帯に戻ってくるのを待った方がいいと判断した。


 今直ぐに地上に帰還するべきだと言う仲間の意見を受け入れずにいたら、刺された3人が俺の指示に従わず安全地帯から出ていってしまった。

 

 あいつらっ!


 毒に侵された状態のまま、3人だけで地下14階から帰還するなんて正気か!?

 俺は追い掛けるか10分程迷った。

 けれど結局、リーダーの指示に従わない者を追う事は止める。


 殺しを請け負う仕事をする人間は、他人より慎重にならなければ生きていけないからだ。

 ここで判断を誤る様なら、今後足を引っ張られる可能性が高い。

 

 それにあの3人は、助からないだろう。

 治癒術師を待っている間、刺された部分はかなり(ひど)い状態になっていたからな。


 残酷(ざんこく)だと思うだろうが、俺は3人を見捨てる事にした。

 そうしないと俺達のような仕事をしている人間は生き残っていけない。

  

 治療の必要がないのなら、いつまでも地下14階の安全地帯にいる訳にはいかず地下13階に場所を移動する事にした。


 暗殺の計画自体は失敗してしまったが、顔を覚えられて良い事は何もないだろう。

 地下13階の安全地帯にマジックテントを設置した後は、外に出る事もなくテント内で過ごす事にする。


 初めてのダンジョンで、初見の魔物ばかりと戦闘したために皆疲れきっていた。

 特に最後のキラービーとの集団戦では、命の危険を感じる程だった。


 16匹の魔物と戦う羽目(はめ)になるとは……。


 これは依頼主に契約違反を訴えるべき案件だ。

 地上に帰還したら、事前情報を(おこた)ったとして慰謝料の請求をしてやろう。

 

 その日、テント内で紅茶と簡単な保存食を食べて俺達は早々に眠りに就いた。

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読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。


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