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8.結果

「鈴城も、なかなか難儀な性格をなさっていますよねー」



「なんでそこで私の話になるのよ」

「なんか知らないけど、ココ最近はいつも以上に力入りすぎ」


 少しだけ真面目なままそんなことを言われる。


 思いがけないセリフだった。私はヒロインをサポートしようかなっていうぐらいの志だ。破滅フラグがある訳でもない。


「別に気を張るようなこともないんだけどな」

「はいはい。自覚ないなら帰って寝てください」


 その日は、早めに勉強にキリをつけ、眠りに入った。いつもよりよく寝れたし、朝起きたら体が軽いような気がした。橘の言う通り余計な力を入れすぎていたのかもしれない。



――――――



 『1位 成瀬恵

  2位 鈴城蒼唯』


 テスト順位は上位50番まで廊下に貼り出される。即ち、生徒なら誰でも見ることができるのである。成績がいつも良かったりすると名前が知られていくし、元々校内の知名度があれば探されてしまうこともある。


 柿原先輩が言っていた『その地位を維持したいのならな』というのもここに由来する。ネームバリューを保つためだ。


「凄いわね」

「ありがとう。想像より良くて嬉しいわ」


 人だかりができる中で、一緒に来た澪と言葉を交わす。


「貴宮梨沙もなかなか凄わよ」


 そう言われて視線を1年生の掲示へ移す。そこには2年以上の人だかりが出来ていて、よく見えない。集まってるのは何も1年生ばかりではない。正直、2年3年の順位なんて同級生組からしたらあまり変わらないし、つまらないものなのかもしれない。


 私自身は、実は初めて取れた2位だ。やれば出来るんだなと思えて喜んでいるのに、あんまり注目されてないのは些か悲しい。ああ、自意識過剰か。


「教えてもらえるかしら」


 自分では見えないし、わざわざ見に行くのも億劫だったので、隣に聞く。


 原作では何位だったか。どんな選択肢でステータスを上げてても、5位以内に入れましたとかそんな感じだったと思う。


「1位よ」


 少なくとも原作で1位の覚えはない。どうやら随分と上振れしてるらしい。


「あらまあ。さすがですね。期待通り、いや、期待以上よ」


 自然と口角があがる。周囲にいた人が1歩退いたのが見えた。その意図は追求しない方が自分の心の平穏のためかもしれない。怖かったなんて言われたら、学校行く意欲が薄れる可能性がある。


「実は、蒼唯の方が悪役令嬢とかなんとかってやつ向いてると思えてきたわ。どちらかというと裏ボスかしら」


「申し訳ないわね、人相悪くて。それに私は至って友好的で穏健よ」


 先程の答え合わせのような事を澪が言う。澪が悪役令嬢かと思えば、私が悪役令嬢。とんだ悪役コンビである。ヒロインのサポートをする気持ちでいる私には非常に耐え難い評価だ。


「次は、3年生方のを見に行きませんか」


 と、近くの女子生徒達が声をかけあって移動し始める。いつも通りの結果になるだろうものでも、やはり気になる人は気になるようだ。


「澪、私達もあちらを見に行かない?」


 流されるように移動すれば、張り出されている結果は見覚えのあるものだった。



『1位 進藤綾人

 2位 柿原直人

 3位 清水拓海』


 原作でしか見た事がないけど、悔しそうな柿原先輩の表情が目に浮かぶ。彼のルートでは、卒業前最後で1位を取るはずだ。それまでは苦い思いをし続ける。この結果に対する彼の実際の心情がどうかまでは私には慮れなかった。


 進藤綾人は相変わらずだ。成瀬といい勝負で完璧な男だ。なんでもこなす。


 そう思うと、やはり清水先輩が凄い。あの雰囲気でこの2人の下につけ続けるのだから。毎度ここでやっぱり凄い人なんだと認識する。


「変わらないわね」

 澪が言う。特に何も無い人達はこの結果に凄いな。としか思わない。誰かのファンがいる場合は、


「見てください!進藤様、また1位ですよ」

「ええ、ええ!さすがですわね」


 実に嬉しそうに見るのだ。憧れの、もしくは好きな人の輝かしい結果を。毎回。


 1年から3年を比較すると分かる。上位3位までは基本的に内部組が占めているんだ。例え学業の特待生でも、それが覆されることは珍しい。


 そう。そんな滅多にないことが今年の1年生では起きた。それもあり、なんだどうだと人が集まっている。


「まあ、会長様よ、橘様や柿原様もいらっしゃる」


 そろそろ、教室に戻ろうかと思った頃、近くの誰かが声を上げだ。


「一緒に女性ははどなたでしょうか」

「あちらは確か件の貴宮梨沙さんよ」


 順位表を見に来た一行に視線が集まり、私の周りでは噂話が展開される。件のという言葉に引っ掛かりを覚える。


 どんな経緯であの4人になったのか分からないけど、大変目立つ。


「随分親しいのね」

「新入生で、しかも特待生ではなかったですか?」

「そうです!一体どんな接点が…」


 嫉妬とはまだいかない。けれど、不審感が波及し始める。


 これは乙女ゲームの裏側。私がすべきなのはこれを抑えること。


 私と同じように、静かに成り行きを見守っている澪と目が合う。若干好戦的な目をしてた。なぜだか楽しそうだ。

悪役令嬢に関するコンテンツをちゃんと調べたらしい澪は、悪役令嬢という評価にやや落胆している蒼唯をみて、「生粋の悪役だったら私なんだけれど、改心したあとの愛され元悪役令嬢って感じなのよね」と呟いていた。本当にちゃんと調べて楽しんだらしい。

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