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俺の手に絡まってくる後輩女子がだんだん上の方に絡まってきている

作者: 蹴神ミコト

現実恋愛日間6位!ありがとうございまーす!



 高校へ向かう朝の通学路。コンビニの駐車場で俺を待ち伏せているのは柔道部の後輩女子、まつりだ。短い髪にコンパクトに纏まった肉体を持つエネルギッシュな48kg以下の超軽量級。

 だけどスポーツ推薦で入学しており60kg近い男子生徒とすら互角の戦いをする強者だ。



「先輩おはようございます!勝負ですっ!さぁ剥がしてみてください!」



 いつも元気いっぱいな彼女はそういうと俺の隣に立ち、学校へと歩を進めながら俺の手に指を絡めてくる。指絡みと呼ばれる技だ。指同士を絡めて捻り上げることで相手の指関節を痛めつける…ぶっちゃけ試合で使っていい技ではない。

 俺は祭から毎朝指絡みで勝負を挑まれている。



「毎朝よくやるなぁ…祭はなんでこんな技が好きなんだよ」

「なんででっ!しょうねぇ!あっ痛い痛い先輩ストップ!」



 指絡みは指を絡ませあっているだけなのでやられた側も普通にやり返せる。いくら祭が強者だろうと高校1年生の小柄な女子。高2で90kg以下の中量級男子としては負けられない。

 軽いうめき声を上げながら絡んでない手で俺の体をタップしてギブアップだと伝えてくる。



「あーもう!今日も私の負けですねー休憩休憩っと」



 そういって祭は指に力を籠めるのをやめて、俺の指に絡ませたまま休憩を入れる。『剥がしてみろ』と言われるが反撃したらギブアップしていつも絡んだままのこの形に落ち着く。

 いつもこのまま学校まで指を離さないんだよな、別にいいけど。負けたのにニコニコとして絡んだままの指を大切そうに見ていた祭と一緒に学校へ向かった。







 ある日の事、指どころじゃすまなくなった。

 俺の右腕はガシっと祭の上半身全体で捕らえられた。



「どうですか先輩!こうやられたらどう剥がしますか!?」



 片腕を完全に封じられた…ように見えるが祭は倍近い体重差と俺のパワーを舐めているようなのでわからせてやる。



「っとおおお!先輩!なに右腕一本で私を持ち上げているんですか!?バケモノだったんですか先輩!?」

「お前が軽すぎるんだよ」



 結構大変だったがそこは余裕そうに見せるのが男だろう。

 腕を天へと突き上げても、逆さになりながらしがみ付きつづけた祭すげぇなぁ。

 腕を下ろしてくれなきゃ降りられないって言われた、そりゃそうだすまん。



「怒ったから明日は覚悟していてくださいね先輩?」



 怒ったと言いながら俺の横で、俺の腕に腕を絡めて祭はいつものようにニコニコとしていた。

 なんだこの腕の絡み?休憩?そうか。じゃあ剥がさないでこのまま学校へ行くか。







「せーんぱーい!」



 翌日、祭は俺の後ろから首元に飛んで抱き着いた。裸締めにしては苦しくないし、なぜか頬と頬を合わせてくる。そのまま何もして来ない。放って置くとこのまま学校に着いてしまいそうだ。



「祭?今日は剥がしてみろって言わないのか?」

「…まだ気づかないんですか?私は先輩とずっとくっついていたいだけですよ?」

「それって…」



 祭の方を振り向くと頬が当たる距離、祭の小さな顔と呼吸音すら聞こえる距離で向かい合った。その表情は恋愛のそれではなく、試合の時のように覚悟を決めて微笑んで勝負をかける顔だった



「ちなみに学校では。もう私と先輩は毎朝恋人繋ぎで登校してくるラブラブカップルだと思われていますしその通りだと認めておきました」



 最近、妙に教室や部活で周囲の男から恨めしい視線を向けられていたが祭のせいか。男は敷居を跨げば七人の敵ありというやつだとばかり思っていた。



「俺と祭って恋人だったのか?」

「先輩の返事次第では今日からそうですよ。どうです?…私を剝がしたいですか?」



 試合の時のように強かった顔なのに弱さを見せる目になっていた。俺は鈍感だし恋愛はよくわからないので素直な気持ちを一言だけ言わせてくれ。



「祭を剥がしたことなんて一度もなかっただろうが」



 後ろから抱きしめてくる力がぎゅーっと、離れることを拒むかのように強くなった。剥がさないから安心しろ。祭に絡まれて本当に引き剥がしたいなんて思ったことないんだから。


 祭は満面の笑みで俺に提案をしてきた。




「指絡み、腕絡み、首にも絡んだし次は舌とかどうです先輩?」


 すまん、時と所と場合次第ではやっぱり剥がすわ。

恋!って感じじゃない恋愛もたまにはいいよね

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― 新着の感想 ―
[一言] 舌を絡めて、それを拒まれなかったら、そのままの姿勢で登校するつもりだったのか、それが気になってしまった…
[良い点] とてもいいですねぇ
[良い点] すき
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