44話:ティアナの部屋へ
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神ケイオスとの話し合った後、俺たちは神々の世界から庭園へと戻ってきていた。
「ふぅ~まさかケイオス様が現れるなんて。しかも――」
「うむ、これは相当な事態だ」
二人はそう言いながら俺の方をじっと見てくる。
二人とも意味深に険しい顔をしていた。
「えっと……何か?」
しばらくの間、沈黙を守っていたが耐えきれずに聞いてみると、
「我は長い間ケイオス様の側近をしているが、ケイオス様自ら眷属を作りたいと言ったのは初めてだ」
「私も立場上、ケイオス様とは何度かお会いしたことがあるけど、あんなケイオス様は初めて見たわ。自分以外の相手に興味を持つなんて……」
二人ともどうも腑に落ちない様子だった。
俺にはよく分からないが、さっきの事態は異常なことだったらしい。
「普段はあんな感じじゃないのか?」
「とんでもない。あの方は神々の世界でも孤高神とも呼ばれるお方だ。普通、神は眷属を増やし眷属系譜を築くことで自身の持つ神力を高めていくのだが、あの方は眷属を作らずとも圧倒的な神力を持っていた。それこそ最上位の神々に対抗できるほどの力をな」
「その上、筋金入りの孤独主義者だったのもあって眷属はおろか同じ神でさえ、近づくものはいなかった」
「でもそれだけの力を持っていれば眷属になりたいっていう輩はいたんじゃないのか?」
「もちろんいたさ。だがケイオス様は全て拒否……いや、拒絶したのだ。自身に眷属など必要ないときっぱりと言ってな」
しかし今回は違った。
そんな孤高の神が自ら眷属にならないかと言ってきたのだ。
そりゃ驚きだわな。
「それで、どうするの?」
「眷属になるか否かってことか?」
「もちろん、受け入れるのだろう? ……断りはせぬよな?」
「いや、それは……」
「せぬよな……?」
圧が……圧が凄い!
受け入れるのが当然と言わんばかりの圧力だな。
「さっき神様にも言ったけど、色々と混乱していて整理がついてない。そんな状態で決断は出来ない」
この庭園に入ってから情報量の多い出来事ばっかりなのだ。
一度整理でもしないと、脳内がよりカオスなことになる。
「まぁ眷属の件は貴方の意志のままに決めればいいと思うわ。その前にケイオス様が痺れを切らすかもしれないけど」
「あり得るな。あの方は一度気に入ればとことん追求するタイプであるからゆえ」
「マジか……」
とはいえ、まずは情報の整理からだ。
眷属になるならないはそれから考えよう。
それに今はこんなことをしている場合じゃない。
「さっきのことはまた改めて考えることにするよ。その前に早くティアナのところに行かないと」
「そういえば道に迷ってこの庭園に入ってきたって言っていたわね。なら私がそこまで案内してあげるわ」
「本当か?」
「ええ、その代わりに今日あったことは他言無用でお願いするわ。たとえ相手がティアナ様たちでもね」
「分かった」
そもそも言ったところで信じては貰えないだろう。
一瞬だけ神々の世界に行って本物の神様に会ってきただなんて。
「よろしい。では……異界よ開け、≪ミニマムワープホール≫」
クリークが手を伸ばした先に小さな穴が形成される。
奥は真っ暗だが、彼女曰くこの穴の先にティアナの部屋に続く扉があるらしい。
「すまない。助かった」
「いえ。ではまた……」
「眷属の件、しっかりと考えるのだぞ!」
ワープホールに入ると同時に二人の声がピタリと止む。
移動は一瞬だった。
「ここ……か?」
気がつけば、俺は大きな扉のある部屋の前に立っていた。