41話:神々の世界
お待たせして申し訳ございません!
「ここが神々の世界の一部……?」
「そう、通称聖域庭園。一応城の通路と繋がっているけど、厳密には全く違う空間。もっとわかりやすく言えば別々の空間を一つにくっつけているってことね」
「そんなことが……」
まるで夢でも見ているかのようだ。
ここが本当に神の世界なんだとしたら、俺はとんでもないところに土足で踏み入れたことになる。
「少しは自分のしたことの重大さを理解したかしら?」
「理解……しました」
「その顔じゃ、してないわね」
無理もないだろ。
そんな夢物語のような話、すぐに信じろという方が難しい。
「じゃあ、一時的にだけどこの世界と神の世界を分離させましょう。これを見れば嫌でも信じるはずだから」
「お、おいクリーク。流石にそこまでしなくても……」
「少しだけよ。王族以外の人間がこの場に立ち入った以上、見せるしかないでしょ」
「それは、まぁ……」
赤鳥も納得はいっていないみたいだが、同意したようで。
「では、行きますよ。空間の引き離しで一瞬だけ身体に負荷がかかるから、せいぜい死なないようにね」
「し、死なないようにってどういう……っ!?」
突然。
辺り一面が黒く染まっていく。
真っ暗で何もない空間。
一筋の光さえ見えない。
「どうなっているんだ? そういえばさっきの二人は……?」
いつの間にか姿が消えていた。
だが次の瞬間、
「な、なんだ……うっ!?」
辺り一面が漆黒に染まった直後、身体に重い力が働く。
まるで誰かに押しつぶされているかのような、そんな感覚だ。
「くっ……!」
耐えるだけで精一杯。
少しでも気を抜けばそのままスクラップな勢いだ。
そういえば、師匠と森の奥で修行していた時も似たようなことをしたことがあった。
確か超合金で出来た巨大な球体を担がされた時だったか?
あの時に匹敵するほどの重圧。いや、それ以上かもしれないな。
だがそれから数秒後、再び景色が変わった。
今度は白く広大な空間。
空には七色に輝いた正方形の物体が浮遊しており、小説の中のような幻想世界が広がっていた。
「あら、空間乖離の重圧に耐えきったのね」
すると、聞き覚えのある声が後ろから聞こえてくる。
クリークというお姉さんの皮を被った人物と、もう一人は……
「あ、あの……お隣の方は?」
「我だ。もう忘れたのか?」
「も、もしかしてあの赤鳥なのか?」
「赤鳥いうな。我は空間を司る神、ケイオス様の偉大な第一側近、空間の使者ベルモット様だ。口の利き方には気を付けてもらおうか」
「か、神の使者って……」
一気に態度が変わったな。
というか、こっちの世界じゃ鳥じゃなくて若い男の姿をしているんだな。
しかも長身金髪のイケメン。
普通に街を歩いたら逆ナンパでもされるんじゃないか?
「これで分かった? 貴方は今、一人族の身分でありながら神の世界にいるの」
「ま、まぁこんなのを見せられたらな……」
信じざる負えないだろう。
夢でもないみたいだし。
「あっ、そこにいるのはクリークじゃない!」
何者かの声が響いてくる。
その声を聞いた途端、クリークの態度が激変する。
「ま、まさかこの声は……!」
焦るクリーク。
さっきよりも明らかに態度の変わりようが可笑しい。
「どうなっているんだ?」
しばらくすると上空から宙に浮かぶ謎の物体が下りてくる。
そしてよく見ると、上に誰かが乗っているようだった。
物体はちょうど俺たちの目線の高さくらいで止まると、
「よいっと、久しぶりねクリーク。元気にしてた?」
上から飛び降りてきたのは紫の髪と瞳を持つ少女。
そして何より目がついたのが、
「つ、翼がついている……だと!?」
背中に生えている二つの白い翼だった。




