40話:庭園の管理者
更新です!!
突き刺さるオーラ。
感覚としては殺気に近いもの。
それを感じた途端、俺の身体は振り向く前に構えていた。
振り向くと、そこにいたのは一人の女性だった。
髪をサイドテールにまとめた美女だ。
「あ、あれ……」
視界に入った途端、さっきまでのオーラが嘘のように消えていく。
「どちらさま?」
目が合うと向こうが聞いてくる。
俺は慌てて、事情を説明すると。
「なるほど。つまりティアナ様のお部屋に向かう途中で、たまたまこの庭園に迷いこんでしまったと」
「そうだ」
「へぇ。たまたま……ねぇ」
疑っているのか、神妙な顔で見つめてくる。
実際、そうなのだから嘘はついていない。
「ま、その感じだと嘘はついていないみたいね」
良かった。
どうやら分かってくれたみたいだ。
「でもここがどんな場所なのかくらいは分かっているわよね?」
「いや、正直ただの庭園としか……」
「え?」
「え?」
互いの会話が間が生じる。
向こうは既に知っているていで話していたようで、
「ほ、本当にここが何かわかってないの?」
「いや、全く……」
「……」
俺がそういうと、女性は顔を顰める。
そして大きく口を開くと、
「……こらぁぁぁ! 出てきなさい、ベルモットぉぉぉぉっ!」
うわぁ、びっくりした!
「隠れても、無駄よ! はよ出てきなさい!」
見かけによらない大声量。
これだけでもさっきのオーラが嘘ではないという実感が湧いた。
というかベルモットって誰だ?
「そう。あくまでも無言を貫くのね。なら仕方ないですね、後で貴方を斬羽刑に――」
「分かった! 我が輩が悪かった! だから斬羽だけはやめてくれぇぇぇ!」
またもひょこっと現れたのはさっきの赤い鳥。
いつの間にか、隠れていたみたいで全く気が付かなかった。
「ベルモット、これはどういうことかしら? 私の留守の時は貴方にこの庭園の守護を任せたはずだけど?」
「い、いやそれはそうなのだが、今回はイレギュラー的だったというか……」
なんだろう。
さっきまでちょっと威厳があるなと思っていたけど、今はそれが微塵も感じない。
イメージ的には浮気がバレた夫が妻に言い寄られ、審問されているような絵面だ。
「ほう、つまり彼が結界を無視して勝手に入ってきたと?」
「そ、そうだ。我が輩も入ってくるまで全然気づかなかったのだ」
「一応出ていくように忠告もしたと?」
「も、もちろんだとも!」
脅す美女と怯える赤鳥。
そんなシュールな風景の一部始終を見ていると、今度はこちらに目線が向けられる。
「まぁいいわ。貴方、お名前は?」
「ボンドだ。騎士をしている」
「ボンド……ああ、貴方があの爺さんに認められたっていう騎士くんね」
向こうは俺のことを知っている様子。
まぁあれだけ盛大に宣言されれば、そりゃ分かるか。
「私はクリーク。この聖域庭園の守護者にして管理者よ」
「聖域庭園……?」
聞いたことのない単語だ。
聖域というと、神々の住む世界のことを指すが……
「まさか、ここって……」
ボソッと言葉を漏らすと、クリークはそれに答えるように口を開いた。
「そ。ここは現実世界と隔離された場所。貴方の立っているこの地は、神々の世界の一部なの」




