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3話:助けの声


 昨日の昼下がり。

 俺は突如として団長室へお呼びだしをくらった。


 そして告げられたのはまさかのクビの二文字。

 

 俺は突如として騎士団から追放されたのだ。


「まさか、騎士証勲(ナイトライセンス)まで剥奪されていたなんて……」


 時は次の日の昼前。

 俺は新天地を求めて騎士協会へと足を運んでいた。


 だが、そこでもまた驚愕の出来事が俺を待っていた。

 

 騎士の権利を剥奪されていたのだ。


 理由は自己都合によるライセンスの返還とのことだった。


 もちろん、そんな申請などした覚えはない。


 だが、受付嬢の人に関連書類の一部を見せてもらったことで全てを悟った。


 その書類の中に以前、団長に頼まれてサインしたものが何枚かあったのだ。

 何も書かれていない紙に何故サインを書く必要があるのかと疑問に思っていたが、ようやく合点がいった。


 俺はどうやら騙されたらしい。


 これは予想だが、俺は()()()に騎士団から追い出されたのだ。


 首謀者は恐らく団長と幹部衆。

 というのもこんなことが出来るのは組織内で絶対的な権限を握る彼らしかいない。


 同時に貴族家の中でも特に力を持ち、色々な業界に根を張った大物ばかり。


 権力を使えば、たとえありもしないことであっても真実に変えることができる。

 一人の人間を沈めることなんて、容易いことなのだろう。


 もちろん、俺もそのまま引き下がりはしなかった。

 その場で騎士協会に誤申請の調査とライセンスの再取得を要求したが、光の速さで断られた。


 俺にはそれを証明する証拠がなかったからだ。

 

 ライセンスに関しても剥奪でも自己破棄でも一貫して最低二年は再取得が不可となる。

 

 これは大陸連盟に加盟している国の騎士たちを管轄する騎士協会が独自に定めた規約だ。

 

 要するに俺は最低でもこの先二年は騎士になることは出来ない、ということだ。


「くそっ、なんで俺が……」


 俺は今まで魔物などの脅威から人々の生活を守るために、剣を振るってきた。

 騎士を志したのも多くの人が安心して日常を暮らせるような、そんな平和な日々を守りたかったからだ。


 ロンド騎士団に入団したのも、歴史があるとかそういう理由というよりかは、多くの人の為に剣を振るえる環境が整っていると思ったからだ。

 実力さえ認められれば、素性は問わないって聞いていたし。


 自分のしたことが、結果的に沢山の人を救えるならそれでいい。

 正直、俺にとって実績なんて二の次だった。


 ほとんど考えたこともなかったし。


 俺はただ単純に、人々の日常を守る騎士でありたい。


 何百人、何千人、何万人、果ては何億人と。


 より多くの人に自分の持つ力で希望を与えていきたい。


 それを目標に今まで地道な努力を重ねてきた。

 

 でもそれも今日で幕引き。

 俺は昨日をもってただの平民になってしまった。


「これから、職探しをしないとな……」


 無念、実に無念だがこうなってしまっては自分に出来ることは何もない。

 恐らく平民が行使できるどんなことをしても、奴らの策略にハメられることになる。


 彼らの陰謀を暴く証拠もない。


 だから俺が再度騎士になるには二年以上の時を待たないといけない。

 最も、再取得にも試験があるので、二年待ったところで再び騎士になれるかは分からないが。


 でもごちゃごちゃと考えて立ち止まるくらいなら前を向いた方が建設的だ。

 

 かつて俺に剣を教えてくれた師匠も言っていた。


 つまづいても、後ろを向くな。前だけを見ろと。


 悔しい気持ちはある。

 理不尽だと訴えたい気持ちもある。


 でもそこで塞ぎこんでしまったら、その時点でボンドという人間の成長は止まってしまう。


 だから深く考えないことにした。

 生きている限り、次はある。


「二年だろうが、待ってやる。俺は立ち止まらないぞ」


 だが、そうはいっても生きていくには職に就かないと。

 流石に気合いだけで乗り切ることは不可能だからな。


 お金は重要だ。


「明日あたりにも職業安定所に行くとするか」


 次に職に就くとしたらやっぱり冒険者とかになるのだろうか。

 まぁでも剣を使う以外の職にも興味はあるし、こればかりは求人とかを見極めて自分に合った職を探すしかない。


 幸いなことに貯金はそれなりにあるから、時間はかけられる。

 もちろん、限界はあるから出来る限り早めに次の職を探さないといけない。


 でも今日は……


「一日、気分晴らしにでも行くとしよう」


 前向きに、と思っても心のダメージが完全にゼロになることはない。

 

 今まで騎士として勤勉な日々を過ごしてきたけど、今日くらいは怠惰に生きても神様に叱られることはないだろう。


 と、いうわけで俺は街角のお弁当屋に寄ることに。

 いつも仕事終わりに寄ったりする行きつけのお弁当屋だ。


 普段は一番安くてボリュームもあるおにぎり弁当を選ぶのだが……


「今日くらいは奮発するか」


 俺はそのお弁当屋で一番値の張る高級焼肉弁当を購入した。

 いつもなら高くて一食では中々手が出せない代物だが、今日の俺は一味違う。


「やっぱりこういう時にこそ美味いもんを食べないとな」


 いつもとは違う袋にお弁当を入れられ、少しテンションが上がりつつも、俺は目的地へと足を動かす。

 

 俺が向かっている場所は都市の中心部から北へ上ったところにある森林地帯だ。

 巷ではセシリアの森と呼ばれている。


 この森の中心には広い湖があり、俺も何度か任務で訪れたことがあった。


 その湖の景色が絶景で、初めて来た時はその圧倒的な綺麗さに心を打たれたものだ。

 だから休みの日とかにちょくちょく行って心を癒しにいっていた。


 俺の中では一番のリフレッシュスポットだ。


「おお、やっぱりいつ見てもここは綺麗な場所だな」


 目的地へと到着すると早速場所取りへ。

 

 とはいっても他に人の姿は見えないから取り放題だ。


 まぁ、この辺は魔物が良く出ると言われている警戒地域でもあるからな。

 近づく人が限られる場所でもある。


 だからこそ、この景色を誰にも邪魔されずにゆっくりと堪能できるわけだから、俺的には最高の場所と言える。


「よし、この辺でいいかな」


 湖が一番綺麗に見える場所を決め、その場に腰を落ち着かせる。

 そしてしばらく姿勢を楽にし、自然を堪能する。


「ああ、なんて気持ちがいいんだ……」


 風で揺らぐ木の葉の音。

 小鳥の囀り。

 湖に反射する日光。


 耳にも目にも優しい環境が俺に心に安らぎを与えてくれる。


 ここにいると何もかも忘れることが出来てしまいそうだ。

 

「……さて、そろそろ弁当でも食べるか」


 そう言って弁当の入った袋に手を差し伸べようとした――その時だった。




「だ、誰か……っ!!」

お読みいただき、ありがとうございます!

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宜しくお願い致します。


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― 新着の感想 ―
[一言] へぇ、前向きじゃんか。そういうの好きだよ、ボンド。
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