36話:参加依頼
王宮へ帰った後、俺とフィオナは報告のため、国王陛下含む国の首脳陣と共に緊急会議に参加していた。
「……と、これが事の顛末になります」
「報告ありがとう。だがまさか戦闘型の機械人形が現れたとはな。これは高度に国家的な問題になりかねん」
「そこまでなんですか?」
「戦闘型の機械人形は計画すること自体、大陸法で禁じられているからな。現に数年前、秘密裏に計画をしていた組織があった。今は大陸連盟によって、完全に始末されたとなっているが……」
「その生き残りがいるかもしれない……ということですか?」
「可能性は考えられるな」
機械人形については俺は無知に等しい。
ロンド騎士団に所属している貴族騎士たちから、少し話を聞いたくらいだ。
でも、まさか過去にそんなことがあったなんて……
確かに機械人形のような人ではない物による戦闘兵器は一部の連中に需要はありそうだな。
例えば、どこかと戦争でもしようと企んでいる連中とか。
あまりこんな物騒なことは考えたくはないが……
「今回の話題が世に出回れば、非常に面倒なことになる。この一件は我々の方で極秘に調査を進めることにする。そこでフィオナよ、お前に頼みたい仕事があるのだが」
「頼みたい仕事ですか?」
フィオナが疑問符を浮かべそう聞くと、陛下はニヤリと笑った。
「うむ。この国の王女としての大きな仕事だ」
♦
「ふぅ……やっと解放されたわ」
「お疲れ様」
緊急会議が終わり、俺たちは王宮内の大広間にて休息を取っていた。
周りでは事前に待っていた王宮のメイドたちがおもてなしのためにせかせかと忙しそうにしていた。
「それにしても、まさか演説役をお父様から任されることになるなんて。アタシってそういう柄じゃないのに……」
「そうか? 俺は適任だと思うけどな。そういうのそつなくこなしそうだし」
「簡単に言ってくれるわね。アタシはいちいち堅苦しい文章を考えるのが苦手なのよ。というか堅苦しいってだけでもう無理!」
「まぁ、さっきの会議も最後の方は居づらそうにしてたもんな」
「うっ、そこまで目に見えて分かりやすかった?」
「何となくだ。あ、でも顔には少し出ていたかも」
そういうと一気に不安げになるフィオナ。
でも堅苦しい感じが苦手というのは分からないこともない。
俺も貴族連中に囲まれているだけあって、そういう経験は何度もしてきた。
あの独特な雰囲気や見えない圧は、一般人には許容しにくいものだ。
苦手な人間はそれだけで億劫になってしまうだろう。
「じゃあ、今日の鍛錬は無理そうだな。鍛錬は演説の後に――」
「それはダメ。鍛錬を休むことは出来ないわ」
瞬間にフィオナが遮る。
光の速さの如く、即否定だった。
「でも演説は明日なんだろ? 色々準備とかしないといけないんじゃ?」
「大丈夫、二人でやればそんなものすぐに終わるわ」
「まぁそれはそう……って、今なんて言った?」
「え、だから二人でやれば……」
「まさか、俺も手伝うのか?」
「そのつもりだったというか、アンタにも参加してもらうつもりでいるのだけど」
「参加って……演説にか?」
「ええ。アンタはあの悪夢を断ち切った功労者なのよ。演説するにはもってこいの人材だわ」
「だ、だが俺に演説なんて……」
「大丈夫、大丈夫! アタシも演説は苦手だから、お互いにフォローし合えば何とかなるわっ。死ぬほど嫌なら流石に無理強いはしないけど……」
「そこまで嫌ではないが……」
「じゃあ、頑張りましょ! 二人でこの国の人たちを勇気づけるの!」
「お、おう……」
勢いのまま。
俺も明日の演説の手伝い&参加することになった。
正直、不安しかないのだが……
「なら、今からでも明日のスピーチの内容を練りましょ。夜は鍛錬もしたいし」
「ああ、それなんだが……今からちょっと先約があってな。それが終わったらでもいいか?」
「別に構わないわ。終わったらアタシの部屋に来て。場所はメイドたちに聞けばすぐに案内するよう言っておくから」
「分かった。じゃあ、また後でな」
俺は席を外すと、大広間から去る。
「演説か。俺に出来るのだろうか……」
勢いもあって、深く考えずOKをしてしまったが、結構な大仕事だ。
王族がやるような公務となれば、下手な事は出来ない。
多分、自分が思っている以上に責任の重い仕事だ。
「でもOKを出した以上、やるしかないよな」
男に二言はない。
……ぶっちゃけ、何を言えばいいか分からないが。
そんなことを考えながらも。
俺は広い廊下を抜け、ティアナの部屋へと向かうのだった。
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