35話:帰城
「む~~っ!」
城に帰ってから早々、俺たちはティアナに目線攻撃を受けていた。
プクーっと頬を膨らませ、如何にもご機嫌斜めな様子だ。
「それで、お二人は街へ何をしに行かれてたんですか?」
「街の案内をしていただけって言っているじゃない。それ以上でもそれ以下でもないわ」
「ならわたしも誘ってくれれば良かったのに」
「あの時間じゃアンタはまだ起きてないでしょ。というか起こしても起きないじゃない」
「うっ! 確かにその通りです……」
そこは否定しないのか。
本当に朝が弱いんだな……
「それよりも、状況は伝わっているかしら?」
「うん。今、例の捕縛者を地下牢獄の拷問室に入れたところ。調査も順調に進んでいるよ」
「そう。ならとりあえず、アタシたちはお父様へ今回のことを報告しにいかないと」
「あー、それなら心配ないと思う……」
「えっ……?」
「うぉぉぉぉぉぉぉぉ! フィオナぁぁぁぁッ!!」
爆声を上げて。
猛スピードでこっちに近づいてくる人影を視認する。
「こ、国王……陛下?」
爆走するアルバス国王はフィオナの前でピタリと止まると、両肩にバンッと手を乗せた。
「フィオナ、大丈夫か!? ケガはしてないか?」
「お、お父様、落ち着いて! アタシなら大丈夫だから! 恥ずかしいっ!」
ブンブンとフィオナの肩を揺らしながら、話す陛下を見る限り、余程不安だったのだろう。
まぁ、一事件あってからまた事件だもんな。
オーバーになる気持ちも分かる気がする。
フィオナはかなり困惑しているみたいだが。
「ふぅ、すまん。少々、冷静さを欠いてしまっていた」
アルバス国王はフィオナの言葉に反応すると、肩から手を下ろした。
「君がフィオナを守ってくれたのか?」
アルバス国王が俺の方を見てそう言ってくる。
「いえ、彼女も共に戦いました。むしろ彼女の助力があって切り抜けられたというべきでしょう」
「そうだったのか」
「お父様、先ほどの一件でご報告があります。少しお時間を貰ってもいいですか?」
「もちろんだ。私も色々と聞きたいことがある。二人ともこっちに来てくれ」
くるりと陛下が背を向ける。
その後にフィオナが続く。
「すまん、ティアナ。ちょっと行ってくる」
「あ、あのボンドさん」
「なんだ?」
「あ、後でわたしの部屋に来ていただけませんか? お時間が出来た時がいいので……」
モジモジしながら、そう言ってくる。
何か話でもあるのだろうか?
「分かった。後でお邪魔させてもらう」
「は、はいっ! 御待ちしていますね!」
ティアナはぱぁ~っと花が咲いたように笑顔を輝かせる。
そのご機嫌さは分かれてもスキップという形で身体に現れていた。
「……一体、何の話をするつもりなのだろうか?」
ティアナの誘いに疑問に思いながらも。
俺は二人の後を追うのだった。
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