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34話:強さの片鱗


「止まったか」


 地に伏す機械人形を剣先で突いてみるが、ビクともしない。

 どうやら、上手くコア部分を破壊することが出来たみたいだ。


「こんなものが世の中に出回っているなんてな。フィオナは知っていたのか?」


機械人形(オートマタ)に戦闘型があるなんて、聞いたことがないわ。基本的に機械人形は人の生活を補助するために開発されたものだから」


「ほう……」


 これはイレギュラーというわけか。

 一国の王女がそう言うのだから、尚のことだな。


「まぁ、それも奴に聞けば解決する」


 俺は倒された機械人形を見つめる鳥型仮面に目を向けた。


「くそっ、やはり戦闘まで持っていくには、まだまだ調整が必要だったか……」


 ボソッと嘆く鳥型仮面。

 その時だ。


「おらぁ! 貴様、よくもこの俺をコケにしてくれたな。歯を食いしばりやがれッ!」


 戦闘が終わった途端、鳥型仮面に駆け寄るのは激昂したガウだった。


「ぐはっ!」


 ガウの右ストレートが頬に、そして立て続けに腹部にもフックが炸裂する。

 その巨体から繰り出された一撃は傍から見ても凄まじく、鳥型仮面は宙を舞うと、そのまま地面に叩きつけられた。


「う、うぅぅ……」


 相当効いたのか、鳥型仮面はその場で蹲った。

 俺は奴の元へと近寄ると、それに追い打ちをかけるように、剣を構えた。


「さて、とりあえず色々と聞かせてもらおうか」


 こいつが何者なのか。

 そしてあの機械人形は何なのか。


 聞きたいことは山ほどある。


「待って。その仮面人は王宮まで連れていくわ。牢獄に閉じ込めてからの方が安全でしょ」


 その提案は賛成だ。

 フィオナの言う通り、ここで聞くよりも確実に情報を引き出すことが出来るからな。


 逃げ出されたら、困るし。


「分かった。任せよう」


 剣を鞘に戻しそういうと、フィオナは二回手を叩いた。

 すると、後ろからざざっと大人数の騎士たちが鳥型仮面を囲み込んだ。


「その者を穴倉へと連行しなさい。殺傷はせずに、厳重な監視下のもとで拘束すること」


「はっ!」


 騎士の一人が胸に手を当て、返事をすると、他の騎士たちに指示を出す。

 鳥型仮面は鎧を着た集団に手を拘束されると、そのまま連行されていく。



 ふっ……



「ん……?」


 今、笑ったのか。


「どうしたの?」


「ん? ああいや、何でもない」


 確かに鼻で笑ったような……


「二人とも、今回は世話になった。おかげであの野郎に一発くらわせる事が出来た。お礼を後日改めて、させてもらう」


 鳥型仮面が連行された後。

 ガウは俺たちの元へと歩み寄ると、頭を下げてきた。


「気にするな。俺もあの状況を見て、不快に思ったのは同じだからな」


「アタシも別にお礼なんて必要ないわ。この街を汚す悪党を捕まえただけで、十分よ」


「いや、それでは救ってもらった俺の立場がない。謝礼をさせてくれ」


 見た目と性格から、考えられないほどの誠実さである。

 人は見かけによらないとは、このことだな。


「分かった。それじゃあ、後日貴方を王宮に招待するわ。謝礼はその時でいいかしら?」


「構わん。というかさっきから気になっていたのだが、お嬢ちゃんは王宮に所属する騎士か何かなのか? 騎士顔負けの剣の腕いい、国家騎士たちの統率といい、常人ではないとお見受けしたのだが」


「ま、まぁ……そんなとこね」


 ちょっと目線を反らし気味に、フィオナは答えた。

 

 というか、今更だが、街の人間は彼女が王女だということを知らないのか?

 普通に顔出しして歩いて、一度もそんなことを言われなかったから、疑問だったのだが……


「とにかく、今は急いで王宮に帰って報告しないと。今回の件の裏にはまだまだ謎がありそうだし」


「まぁ、引っかかることは色々とあるな」


 ただのはぐれものが暴れたわけじゃないし、この件を放置しておくのは危険だろう。


「そういうわけで、さっさと王宮まで帰るわよ!」


 スタスタと去っていくフィオナ。


「兄ちゃんも大変だな」


「まぁ……」


 まだ会って間もない関係だけど、フィオナは自由気ままなところがあるのはよく分かった。

 

「ところで、兄ちゃんも中々の腕を持っているな。一撃でピンポイントにコアを破壊したのは正直驚いたぜ」


「鍛錬の賜物だ。二度上手くいくかは分からない」


「別に隠す必要はないぞ。あんたの実力はかなりのものだということはよく分かったからな。これでも俺は今まで数えきれないほど多くの歴戦騎士と手合わせをしてきたからな」


「見れば分かる。傷だらけの身体はその勲章なのだろう?」


「ははっ、まぁーな」


 ガハハと笑い飛ばすガウ。

 そして、何の前触れもなく手を差し伸べてくると、


「良ければ、今度手合わせ願いたい。俺はあんたに興味を持った」


「そ、そうか?」


「ああ! 何なら今からでもいいぞ。猛者を目の前にして気持ちが昂るのは騎士として自然のことだからな!」


「いや、今日は止めておこう。また機会があったら、その時でいいか?」


「はははっ、冗談だ。ま、考えておいてくれ。俺はこの街のリーヴァという酒場によくいる。何かあったら、いつでも来てくれ。今日の恩を返すためにも、力になるぞ」


「ありがとう。ちょうど俺もこの街に来たばっかりだったから、色々と教えてくれると助かる」


「おぉ、そうだったのか! なら尚更だな! がははははっ!」


「おーい、何してるのよ! 早く行くわよ」


 道の先の方からフィオナの声が響いてきた。


「おっと、そろそろ行かないと。それじゃ」


「ああ、道中気をつけろよ」


 俺はガウと話し終えると、フィオナの元へと走った。


 かくして。

 事件は幕を閉じ、俺たちは王宮へと帰るのだった。

お読みいただき、ありがとうございます!

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宜しくお願い致します。

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