28話:決闘破り
突然人混みの中から割り込んできた大男。
今回の出張決闘に挑み来た挑戦者のようだが……
「おうおう、この俺様が挑戦しにきてやったぜ!」
前に出ると笑い飛ばしながら、デカい態度を取る。
とんだ曲者が出てきたなと思ったが、どうやらコイツも有名人のようで……
「――お、おい。あれって、デラーズ家の……」
「――ああ、当主様のご子息だ」
「――あの有名な決闘破りの坊ちゃんか!」
更にざわざわし始める周囲の反応に俺は全くついていけない。
そんな様子をフィオナは察したのか、そっと俺に説明をしてくれた。
「あれはガウ=フォン・デラーズ。騎士系貴族家の息子よ」
「あ、あの大男が貴族……」
「巷では決闘破りのガウって呼ばれていて、その名の通り出張決闘に挑んでは連勝を重ねている界隈では猛者認定されているヤツだわ。都じゃ結構名が通っているから、アタシも名前くらいは知っているわ」
なるほど。
王女の耳にすらも名が入って来るということは相当な強者なのだろう。
これは楽しみになってきたな。
「おお、これはこれはガウ様。お噂はお聞きしております」
「なら、俺がここに来た理由も分かるよな?」
「はい。賭け挑戦されるということで宜しいですかな?」
「おうよ! 今回もがっぽりと稼がせてもらうぜ!」
また謎の単語が出てきたぞ。
「賭け挑戦ってのは参加料を支払う代わりに勝利した時に貰える金額を10倍の値で貰うことが出来る制度のことよ。でももし負ければ自分が10倍の金額を支払うことになるわ」
「な、なるほど……」
何も言ってないのに、説明を入れてくれた。
やっぱりこの子はエスパーなんじゃないか?
「承知いたしました。皆さま、最初の挑戦者が決まりました! 今回の挑戦者はあの決闘破りのガウで話題沸騰中のガウ=フォン・デラーズ様です!」
「「「「「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」」」」」
凄い盛り上がりだ。
その一声で更に観戦者が増えたし。
「では少々お待ちください。会場を設置させていただきます」
鳥型仮面がそういうと、詠唱を始めた。
「クリエイト、【簡易コロシアム】」
すると。
広場に一部に小さな決闘場が出来上がった。
恐らく、創造魔法を使ったのだろう。
「ルールは皆さまもご存じの通り、この競技台から落ちるか、降参の合図を出すかで勝敗が決します。武器は剣ならば何でもよし! ただし、魔法の使用は禁じられているので注意してください!」
要するに剣術だけの勝負ってことか。
「それでは、両者とも競技台にお上がりください!」
ガウという大男と黒ローブの男が競技台に上がる。
黒ローブの方はあのまま戦うのか。
有名な騎士家系の人間ならば、身バレを防ぐために素顔を隠すのは致し方ないことだが……
「どうにも違和感があるような……」
ま、そんなことを考えても仕方ないか。
今はこの勝負の観戦を楽しむとしよう。
「では両者、準備が出来ているとのことなので早速始めましょう!」
鳥型仮面がそう口にすると、二人とも剣を構え始める。
黒ローブの方は全く見えないが、ガウとやらは自信に満ちた表情をしていた。
相当、腕に自信があるのだろう。
そして、遂に……
「それでは、始めてくださいッッ!」
その一声と共に勝負の火蓋が切られた。
最初に仕掛けたのはガウの方だった。
自身の体躯を越える大剣を片手に、黒ローブの方へと突っ込んでいく。
「おらおらぁ! まずはご挨拶からだぁ!」
ガシンッと剣と剣がぶつかる音が広場全体に響き渡る。
その勢いある一撃は見る者を圧倒するほど。
初撃だけで観客たちは大いに歓声を上げた。
「悪いが、今日は大事な日なんでな。いつもは遊びに回るが、今回は速攻でケリをつけさせてもらうぜ!」
ガウは初撃から留まることなく。
相手に剣撃を浴びさせていく。
まるで短剣でも扱っているように、重量感ある大剣をブンブンと振り回す。
「典型的なパワー型だな」
だが、面白いことに隙はほとんどない。
流石は名が通るだけはある。
気が付けば黒ローブの方はガウの怒涛の連撃で、競技台の端まで追い詰められていた。
「これで、フィニッシュだぜ!」
ガウは天井から剣を振り下ろし、黒ローブの持つ剣の剣体に攻撃を浴びせる。
が、次の瞬間。
「ぐおっっ!?」
謎の衝撃波のようなものが、ガウの腹部に命中する。
その一撃でガウは一気に吹っ飛ばされると。
あっという間に競技台の外へと投げ飛ばされた。
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