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27話:伝統遊戯


 それから。

 俺とフィオナはしばらく朝市を楽しんでいた。


「んん~~~っ! このクレープ、凄く美味しいわ! 特にこのホイップクリームとカスタードクリームの二重クリームが良い味を出しているわね!」


 このお姫様は甘いものが大好きなようで。

 幸せそうにクレープを頬張っていた。


「あ、あそこにも美味しそうなお饅頭屋さんがあるわ! 次はあそこに行くわよ」


「ああ……というか、よく食べるな。しかも全部甘い物だし……」


 いつしか俺たちの散策は甘い物巡りとなっていた。

 

 事の初めは朝市のスイーツ区画というエリアに立ち入った時だ。

 名前の通り、このエリアではローレンスの名物から他国の名物に至るまでのスイーツが屋台で販売されている。


 最初は見るだけだったのだが、いつしか隣のお姫様が虜になってしまっていた……というわけだ。


「甘い物なら無限に食べられるわ。デザートは別腹というやつね」


 フィオナは誇らしげにそう言う。

 ちなみにこれでもう、5軒目の屋台訪問である。


(もう当初の目的を忘れてるな……)


 フィオナが楽しめているなら、それはそれで構わないが。

 

「ほら、見てないであんたも食べてみなさいよ。凄く美味しいわよ」


 フィオナが自分と同じクレープを俺に差し出してくる。

 

「アタシの奢りよ。なんか、さっきからアタシばっかり楽しんでいる気がするから……」


 フィオナは頬をほんのり赤くして、照れながらそう言ってくる。

 自覚はあったみたいだ。


「いいのか?」


「奢りって言ったでしょ。は、早く受け取りなさい」


「ありがとう」


 俺はフィオナからクレープを受け取ると、一口。

 クレープを口の中に運ぶ。


「お、本当だ。うまい」


「でしょ? 特に二層のクリームがいいわよね!」


 無邪気な笑顔を見せるフィオナ。

 その姿を見ると、お姫様と言えど中身は年相応の女の子なんだなということを実感させられる。


「ん……?」

 

 フィオナとクレープを食べている中、もう少し先へ行ったところの噴水広場で謎の人だかりを見つける。


「あれはなんの集まりだ?」


「さぁ……?」


 フィオナも疑問符を浮かべている。

 興味本位で近づいてみると、フードを被り剣を持った者と黒い鳥型仮面を被った者が人を集めていた。


「さて、本日もやってまいりました出張決闘! 今回はあのリーベル家の直系騎士が相手だぁ!」


 高らかに告げられると、周りの観客たちが何やらざわめきだした。


「――うわっ、今回はリーベルの直系かよ」


「――そんなのが相手じゃ、誰も勝てないだろ」


「――でもその分、報酬は凄いんだろ?」


 ひそひそと会話を始める観客たち。


 その姿を「あぁ……」と何かを悟ったようにフィオナが見つめていた。


「あれは出張決闘ね。この辺りじゃ、割と頻繁に行われているわ」


「出張決闘?」


「有名な騎士家系の人間を招いて、挑戦者と決闘をするの。勝てば賞金を貰えて、負ければ賞金を支払うという簡単な遊戯よ」


「騎士国家ならではの遊戯だな……」


 アルトにはなかったものだ。


「遊戯といっても伝統があるから、どちらかと言えば文化的な行事に近いわね。こういう人が集まる朝市や催し物(イベント)が行われる時にやることが多いわ」


「伝統的な遊戯か……少し見て行ってもいいか?」


「いいわよ」


 ということで俺たちはその出張決闘とやらを観戦にすることに。

 すると早速、


「よっしゃ、今回は大物だな! まーた、小銭が増えちまうぜ!」


 ドサドサと人混みをかき分けて。

 前に現れたのは大剣を担いだ大男だった。

お読みいただき、ありがとうございます!

モチベーションの向上にも繋がりますので、面白い・応援したいと思っていただけましたら是非ブックマークと広告下にある「☆☆☆☆☆」から評価をしていただけると大変嬉しく思います。


宜しくお願い致します。

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― 新着の感想 ―
[一言] 気のせいかなぁ~。何か不正をしているのをたまたま主人公が見破って逆ギレするのを倒すって言う王道展開が見える気がするのだけれども気のせいかしら?
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