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25話:勝負の理由


「まだ朝早いのに、賑やかになってきたな」


「そろそろ朝市が始まる時間帯だからね」


 王宮から、早速街へと繰り出すとまだ朝早い時間帯にも関わらず人の出入りが多い。

 それは中心部に進むにつれて、顕著に表れており、フィオナ曰く朝市が始まるからとのこと。


「アルトには朝市なんてなかったな。一応遠征の時に他の都市で見かけたことはあるが……」


「元々ローレンスは商都だったからね。今では騎士の国っていう印象が強いけど、発展出来たのは昔ながらの商取引があってのことだったのよ。だからここでは朝市・昼市・夜市と時間帯に応じて様々な物品の取引が行われているわ」


「そうなのか」


 そう言えばさっきからやたらと荷馬車が通るなと思っていたけど、そういうことだったのか。


「だから欲しいものは基本的に何でも手に入るのよ。ローレンスの良さの一つね」


「なるほどな」


 人々が安心して暮らせる環境を裏で支える要因の一つってわけだな。


「せっかくだし、行ってみる? 朝市」


「そうだな。案内してくれるか?」


「オッケ~!」


 これからこの国で暮らしていくのだ。

 情報はより多く知っておきたい。


 ということで、俺はフィオナに朝市を案内してもらうことになった。


 目指す場所は朝市の始まりの地点になるガルダ商店街というところらしい。

 

「フィオナ」


「ん、なに?」


 俺は目的地に向かう途中でフィオナにあることを聞いてみることに。


「さっきの件だが、何故いきなり勝負をしようだなんて言ったんだ?」


 さっき行った条件付きでの勝負。

 結果は俺が勝ったが、フィオナから悔しさがあまり感じられなかった。


 むしろ清々しい感じを受けたから、少し気になっていたのだ。


 するとフィオナは「あぁ~」と言いながら、


「あんたの実力が本物なのか確かめたかったからよ」


 俺にそう一言、言い放った。


「陛下との一戦に違和感を感じたのか?」


「そういうわけじゃないけど、やっぱりあのお父様が負けたという事実が受け入れられなくてね。自分の手で確かめたいと思ったの」


 フィオナは続ける。


「正直に言えば、少し悔しかったのよ。剣一つでこの国を築いていたお父様が他の騎士に一瞬にしてやられることにね」


「……」


 確かにいきなり余所者が国に入ってきて、あんなの見せつけられれば、不快に思う人もいるだろう。

 フィオナも陛下の娘として色々と思う所があったんだろうな。


「あ、別にあんたが悪いって言っているんじゃないのよ? ただ、自分の中で引っかかるところがあって……」


「その違和感を俺との直接勝負で確認しようと思ったんだな?」


「そういうことよ」


「それで、結果はどうだったんだ?」


 俺がそう聞くと、フィオナはふふっと笑いながら。


「あのお父様でも負けても無理はないと思ったわ。……悔しいのは変わりないけど!」


 最後の一言で語調を強める。

 

「それに、安心もしたわ。正々堂々の勝負でお父様は負けたんだって。変な話だけどね」


 何も不正とかがなく、真っ向からの勝負で負けた。

 このことがフィオナにとっては一番安心出来たことだったらしい。


「条件を付けたのは、もし俺がズルをしていた時に制裁を下すためのものだったのか?」


「もしそうなら、そう使っていたかもね。でもそうじゃなかったら、元々条件を呑むつもりでいたし」


「どういうことだ?」


「初めから、条件を受けるつもりだったのよ。あのお父様でも勝てなかった相手にアタシが勝てるわけがないしね。あくまでアタシが知りたかったのはあんたの実力が正当なものか否かってこと」


「じゃあ、何故条件なんて……」


 俺がそういうと、フィオナは申し訳なさそうな表情で。


「まだ、あの時のお礼が出来てなかったから」


「あの時?」


「魔物から、助けてもらった時のことよ」


「ああ、でもあの件ならもう色々と返してもらったけどな」


 騎士の資格を取り戻してくれたこととか。

 約束通り、指導騎士として職を与えてくれたこととか。


「でも個人的なことではまだ返せてないでしょ?」


「別にそこまで深く考えなくても、俺は気にしてないが」


「アタシが気にするのよ! こっちは命を救われているんだからねっ!?」

 

「お、おぅ……」


 言葉の圧が凄い。

 でもその真剣な眼差しを見て、彼女が心の底からそう思っているのはすぐに分かった。


 その想いを自分の価値観で無碍にするのは、流石に良くない。


「なんか、ごめんな。色々と考えさせてしまったみたいで」


「なんであんたが謝るのよ。全く、お人好しが過ぎるのも問題ね」


 フィオナははぁと呆れ顔で溜息をつく。


「まぁいいわ。今日あんたには何が何でも楽しんでもらうんだから! 覚悟なさいっ!」


 そう言うと、ツカツカと先の方へと歩いていってしまった。


「言葉と行動が一致してないな……」


 それほど本気ってことだろうか。


 でも考えてみれば最近、忙しくて全然自由な時間を過ごせなかったからな。

 

 ストレス発散という意味でも……

 

「今日はフィオナが満足いくまで、俺も楽しむとしよう」

お読みいただき、ありがとうございます!

モチベーションの向上にも繋がりますので、面白い・応援したいと思っていただけましたら是非ブックマークと広告下にある「☆☆☆☆☆」から評価をしていただけると大変嬉しく思います。


宜しくお願い致します。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 主人公が力量を把握しているという点は、追放系では少数派であるため、興味を惹かれました。 指導騎士としての仕事が本格的に始まるのを楽しみにしながら、読ませていただきます。 [一言] 文章最後…
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