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19話:星に願いを


「ここにいたのね」


「フィオナか。陛下のご容態は?」


 その夜。

 王宮内にあるバルコニーで夜風に当たっていると、フィオナが俺の元へとやってきた。


 倒れた陛下の近況報告をしにきてくれたのだ。


「飲み過ぎだったみたい。お酒が回り過ぎて制御不能になったのね。命に別条はないみたいだし、今は王宮医師が治療してくれているわ」


「そうか。ひとまず安心だな……」


 いきなり倒れた時にはどうなるかと思ったけど、無事そうで良かった。

 

「ていうか、お酒の飲み過ぎで倒れるって……ホント、バカな人よね」


「だいぶ酔っていたからな。人格まで変わってたし」


 酒は人を変えるというが、その典型例を見た気がする。


「あれでも一応、この国のトップなんだからもう少し威厳ある行動を心がげてもらいたいものだわ」


「あはは……」


 話を聞いている限り、かなりフリーダムな人だということが分かったから、フィオナの気持ちも何となく察しがつく。


 昼間から街に出て酒をかっくらう国王なんて聞いたことないしな。


「でも、むしろそれがいいのかもね」


「いい?」


「うん。その自由奔放さがこの国を住みやすい場所に変えている。ローレンスは騎士の楽園とはいうけど、それ以外の人もしっかりと豊かなで平和な生活ができるような環境が整っている。もちろん、まだまだ発展途上だけど着実に変化は出てきている。アタシの目からでもそう見えるんだから、間違いないわ」


「フィオナもそういう国づくりを目指していきたいのか?」


「もちろんよ! それがこの国の目指す先だし、それに……お母様の願いでもあるから」


「そうか」


 親の願いを子が継いで願いを叶える。

 とてもいい話だ。


 両親がいない俺にとっては羨ましいとも思った。


「じゃあ、絶対に叶えないとな。天国の王妃様の為にも」


「当然よ! アタシが本気を出せば出来ないことはないわ!」


 自信満々にそう言うフィオナ。

 すると、


「あ、お二人ともここにいたんですね」


 ティアナもバルコニーへとやってきた。


「お二人も流星群を見にきたんですか?」


「流星群?」


「ああ、そう言えば昨日使用人たちがそんな話をしていたわね」


「はい。今日は5年に一度だけ見ることのできるアストレア流星群の日です。星の女神アストレア様が人々の繁栄を祝って星の雨を降らすという伝承があるみたいですよ」


「そうか、どうりで街の人もみんな外に出ているわけか」


 街の様子を眺めていた時にみんな揃って空を見上げていたから、何事かと思っていたが。

 ティアナ曰く、時間的にそろそろ流れ始めるみたいだが……


「あ、お二人ともあそこを見てください! 流星群ですよ!」


「おお……っ!」


「すごい……!」


 俺たちのちょうど真上。

 

 放射線状に広がって流れる光を視認する。

 それらの光が群れをなし、次々と流れていく。


「これが流星群というものか。初めて見たな」


 そもそも空をこんなにも長く見上げたことすらなかったから。


「そう言えば、流星群が流れている時に三回心の中で願いを言うと、その願いが叶うっていう話があったわね」


「そうなのか?」


「あくまで伝承ですけど、本当に夢が叶ったという人はいるみたいですよ」


「じゃあ、みんなで願ってみるか。もしかしたら叶うかもしれないぞ?」


「いいわね! アタシの願いはビッグだから、女神様でも叶えられるかは分からないけど」


「わ、わたしも賛成です!」


 ということで、俺たち三人は流れる星々に向けて合掌し、静かに目を瞑った。

 そして伝承通り、三回自分の願いを心の中で唱える。

 

「よし! これで願いは叶ったな」


「叶ったって……気が早すぎるわよ」


「ふふふっ、でも、叶うといいですね」


 二人とも各々願いを言えたようだ。


「ところで二人は何を願ったんだ?」


「アタシの願いはビッグだからまだ言えないわ。その内、言える時がくるかもね」


「秘密ってことか?」


「そんな感じ」


 どんな話題なのか大体想像はつくが……


「ティアナも何か秘密の願いをしたのか?」


「いえ、秘密ではないですが、わたしはこの国の人々がずっとずっと笑って暮らせるようにって願いました」


「あんたらしい願いね」


「でも素晴らしいことだ。ティアナの願いは絶対に叶うと思う」


「そ、そうでしょうか……?」


 少し照れながらそう言うティアナ。

 すると今度は俺の願いへと話題はシフトする。


「あんたは何を願ったのよ。一番想像が出来ないわ」


「俺か? 俺は――」


 願いか。

 挙げれば色々ある。

 

 でも今は……


「今の生活が続きますように……かな?」


「なんか普通ね」


「でも、とてもいい願いだと思います!」


「だろ? やっぱりティアナは見る目があるな!」


「な、なによっ! これじゃあまるでアタシがあんたの願いをバカにしているみたいじゃないの!」


 騒がしくなるバルコニー。


 でも()()これでいいのだ。


 何事もなく平和に騎士として生活をする。

 それが今の俺にとっては最大の願いなのだから。

お読みいただき、ありがとうございます!

モチベーションの向上にも繋がりますので、面白い・応援したいと思っていただけましたら是非ブックマークと広告下にある「☆☆☆☆☆」から評価をしていただけると大変嬉しく思います。


宜しくお願い致します。

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