17話:壊滅の始まり【騎士団視点】
ボンドが指導騎士に任命された日の昼頃。
ロンド騎士団の団長室では……
「ぜ、全滅……だとっ!?」
ヴェルナーの声が室内に響き渡る。
その顔色を伺いながら、同じ部屋いた秘書官は続きを話す。
「は、はい。例の緊急依頼の件で第三討伐隊を派遣したのですが、規模が予想以上だったようで。幸いなことに死傷者は出ませんでしたが」
「情報は誰からだ?」
「ルートヴィック騎士連合です。救助をしてくれたのも、たまたま別任務で通りがかったルートヴィックの騎士のようで……」
「な、なんてことだ! よりにもよってあのルートヴィックに……!」
ヴェルナーは眉間に皺をよせ、その事実に唇を噛みしめる。
ルートヴィック騎士連合はロンド騎士団とはライバル関係にある騎士団だ。
歴史もロンド騎士団の次に長く、実績も次点で国から高い評価を得ているなど、ロンド騎士団にとっては絶対に負けてはならない相手。
そんな組織に自分の組織の騎士たちが助けられれば、組織側の落ち度が向こう側に露呈してしまう。
それは、今まで組織が築き上げてきたオンリーワンに傷がつくことを意味する。
同時に、今回の一件でロンド騎士団はルートヴィックに借りが出来てしまった。
そんな屈辱を人一倍プライドの高いヴェルナーが受け入れられるはずがなかった。
「今すぐ他の部隊を現地に向かわせろ! 何としても今回の一件は我々の手で片づけるのだ! それと、第三部隊の連中に全員には今日中に解雇通知をしておけ! 仕事すらまともに全うできない者はこの騎士団に必要はない!」
「で、ですが団長! 今回の依頼は第三部隊だけで背負わせるには重すぎました。彼らは我が騎士団の中でも魔物討伐に特化した精鋭たちです。それでも勝てなかったということは何か裏が――」
「黙れ! これは命令だ! それとも、貴様も奴らと一緒にクビにされたいのか?」
「も、申し訳ありません! 分かりました、彼らにはそう伝えておきます」
「分かったら、早急に対応しろ。何ともしても今日中に事を収めるのだ。国の連中に知らされる前にな」
「しょ、承知致しました!」
秘書官は頭を下げると、慌てて団長室から出ていく。
「くそっ!!」
ヴェルナ―は近くにあったワイングラスを持つと、思いっきり壁に投げつけた。
グラスの破片と中に入っていたワインが地面に飛び散る。
「早急に手を打たなくては……」
ヴェルナーは再び椅子に腰を掛けると、デスクの上に置いてあった水晶玉に手を触れる。
すると水晶玉が光りだし、人の声が聞こえてきた。
「お呼びでしょうか?」
「これから緊急会議を行う。今すぐ全員を集めよ」
「御意」
それだけ言うと、ヴェルナーは水晶玉から手を離した。
「こんなところで私の築き上げてきた名声を汚すわけにはいかん! 何としてもこの事実を抹消しなくては……!」
一人怒りを露わにするヴェルナー。
だがこの出来事はあくまで序章。
本当の悪夢はこれからだということを彼はまだ知らない。
お読みいただき、ありがとうございます!
モチベーションの向上にも繋がりますので、面白い・応援したいと思っていただけましたら是非ブックマークと広告下にある「☆☆☆☆☆」から評価をしていただけると大変嬉しく思います。
宜しくお願い致します。