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12話:国王陛下2


 さて。

 またも俺は今、とんでもない光景を目の当たりにしている。


 一国の長で騎士王とまで呼ばれた人間が俺の目の前で土下座をしているのだ。

 一平民に過ぎない俺に対して。


「お、お待ちください陛下! いきなり土下座なんて、何を考えているのですか!?」


 これには取り巻きの騎士二人も驚きを隠せなかったようで。

 そう言いながら、すぐにアルバス国王の元に駆け寄った。


 俺も流石にこの状況はマズイと思い、


「そ、そうですよ! じ、自分は当然のことをしたまでです! お顔をお上げください!」


 緊張と混沌とした気持ちのせいか噛んでしまったが、アルバス国王に止めるように迫った。

 だが本人はずっと額を地につけたまま、


「いや、今回の件は土下座だけでは到底足りない事だ。貴殿は、私の命よりも大切と言っても過言ではない娘たちの危機を救ってくれたのだ。本当に何とお礼を言ったらよいか……」


「お、お礼は十分に受け取りましたから! とにかくお顔を上げてください!」


 俺は必死にアルバス国王の顔を上げさせることに注力した。

 

 土下座をされることにここまで罪悪感を感じるなんて。

 こんなに焦ったのは正直、初めてと言っても過言ではなかった。


「お父様は一度こうなると、手が付けられないのよ。情が深いというか」


「深すぎる気もするが……」


 焦る俺に隣にいたフィオナがそっと囁いてくる。

 もちろん、土下座をされて悪い気分はしない。


 けど……なんかよくないことをしている気がしてならなかった。


「ところでボンドくん、君はこの後予定とかはあるのか?」


 土下座を始めて2分くらいが経ち、ようやく顔を上げるとアルバス国王はそう言ってきた。


「いえ、特にありませんが……」


「なら、しっかりとしたお礼を席を設けたい。部屋を変えないかね?」


「あ、はい。分かりました」


 というわけで。

 俺は部屋を変えて、今度は国王陛下と二人きりで話すことになった。


 気が付けば、俺がさっきまで抱いていた緊張感はとうに彼方へと消えていた。




 ♦



 フィオナたちと一度離れ、俺は王宮内にある応接室のような場所にいた。


「騎士団の応接室とは格が違うな……」


 広さだけでなく、天井には超巨大なシャンデリアが吊るされており、周りに置いてある置物もどれも高そうなものばかり。


 貴族騎士団というのもあり、本部の応接室も中々のものだったが、それを遥かに超える空間にまるで別世界にいるような錯覚を受けた。


 テーブルの上には使用人が俺一人の為に用意してくれた食べ物や飲み物で一杯になっているし、本当に何もかもが規格外だ。


(そもそも、一人でこんなに食べられないし……)


 そんなことを思っていると。


「すまない、待たせてしまったか?」


「全然大丈夫です!」


 アルバス国王が部屋内に入って来る。

 今度は取り巻きの騎士はおらず、国王一人だけだった。


「あの、フィオナたちの様子はどうでしたか?」


「二人とも全く問題ないとのことだ。フィオナに関しては、君が早くに病院へと連れていったことが良かったみたいだ」


「そうですか」


 フィオナたちは王宮の医師たちによるメディカルチェックを受けにいっていた。

 病院に行ったとはいえ、もしかしたら何か重大な傷が残っているかもしれないということで再検査を受けたらしいが、どうやら異常は見られなかったみたい。


 とりあえず、何事もなくてホッとした。


「改めて、今回の件は本当に世話になった。上座からだが、礼を申し上げる」


 深々と頭を下げ、改めて礼を言われる。

 さっきはちょっとした騒動になりかけたが、フィオナたちに続き、ここまで真剣に感謝をされるのは気持ちがいい。


 フィオナたちの振る舞いはこの人の存在が大きいんだなということがよく分かった。

 人の上に立つ人間の器の大きさを知ったというか、本当に立派な人だ。


「あの時は本当にどうなるかと思った。見張りの騎士も加勢しようとしたが、一人で対処できる数の魔物ではなかったからな。君が助けに来てくれなければ、もっと酷い結果になっていただろう」


 見張りの騎士も二人の動向を追っていたからか、魔物の存在には気付いていたらしい。

 だが二人に見つからないことが前提にあったため、場所が遠く、加勢するまでに時間がかかってしまった。


 そんな中でタイミングよく俺が入ってきたことで、事なきを得たをというのが今回の件の全貌だ。


 陛下自身はその時の記憶があまりなく、この情報はその場にいた騎士たちから聞いたらしい。

 

 そう言えば確か、心肺停止に近い状態になっていたってさっきの騎士が言ってたっけな。


 その後は見張りを続けながらも、俺の様子も伺っていたらしい。

 

 かなり遠くの場所から見ていたのだろう。

 全然気づかなかった。


「助けてくれた君を疑うつもりはなかったのだが、どんな人物が定かではなかったから少し様子を見させてもらった。えっと確か、お弁当を食べているところまでだったか?」


「そこまで見ていたんですね……」


 (高級)焼肉弁当を三人で突き合った時のことだ。

 決して品のあるわけではないことをしていたから、あまり見られたくはなかったな……


「だが、娘たちの笑顔を見て安心した。君はどうやら娘たちに気に入られたみたいだ」


「そう、なんですかね?」


「ああ。検査の立ち合いをしている時にも君のことばかり、話してくれたよ。あんなに嬉しそうに他人の話をする娘たちは久しぶりに見た」


「あまりそういった話はしないんですか? 友達の話とか」


「私はあまり聞いたことがないな。一応騎士学園には通ってはいるから友人の一人や二人くらいはいるはずなのだが、あまりそういう話を耳にしないということは身分が大きく関係しているやもしれん」


「身分……」


 確かに王族が同じクラスとかにいたら、困惑するよな。

 それが原因で他の人と疎遠になったりとかあり得ない話ではない。


 俺も平民の立場から貴族たちと共にいてそういう場面には何度か遭遇したことあるし。


「まぁ、暗い話はこれくらいにして早速本題に入ろう」


 話題は一転して、今度は俺の話になる。


「ボンドくん、此度の君の成果は我が国にあるどの勲章よりも価値のあるものだ。是非とも、君の望みを聞きたい」


「望み……ですか」


「うむ。何でもよいぞ。地位でも領地でも。あ、それかいっそ我がローレンスファミリーに入るか?」


「いやいや、それは流石にスケールがデカすぎますって!」


 最後のとか意味不明だし!


 でも望みか。

 何でもと言われると困ってしまう。


 人っていざこういう時になると何も思い浮かばないんだから不思議なものだ。


 あ、そうだ。

 一つだけあったぞ、望みが。


「陛下、恐縮ながら一つ頼みたいことが……」


「ん、何かね?」


「その、お話が少し長くなるのですが――」


「ああ、騎士証勲(ナイトライセンス)のことならもう手配はしておいたぞ」


「え?」


 話す前に答えが返って来るとは思いもよらなかった。

 どうやらフィオナたちが色々と事情を話してくれたらしく、速攻でライセンス復帰の対応をしてくれたみたいで。


「君の事情は二人から粗方聞いている。本当に災難であったな」


「はい……」


「でも我が国に来たからにはもう安心だ。ここは騎士の楽園、騎士道に生きるものには絶対に裏切らない環境が整っている。きっと君の騎士人生の助けとなるだろう」


「すみません、自分の知らない間に色々としてくださったみたいで」


「ハハハッ! 気にするでない! むしろ君の活躍はこんなことだけでは返しきれないほどだ。他にも私に出来ることがあれば何でも言ってほしい」


 何でも……か。

 

 普通に聞くと夢みたいな話だけど、色々と困ってしまうな。


「あ、それとだなボンドくん」


「は、はい?」


 話は次の話題に。

 この流れでいくと恐らく、例の話だろうか?

 

「娘たちから、君を指導騎士にしたいと要望を受けたのだが……」


 ああ、やっぱりその話か。


「実際どうなのだ? 君は娘たちに剣術を教えたいのか?」

 

 そう聞いてくるアルバス国王。

 この件についてもローレンス行きを決めてから決断していた。

 

 答えは……


「もちろんです。自分はその為にここまで来たのですから」


 迷うことなく、俺は即答する。


 ここまで来たのは再び騎士に戻りたいという理由だけではない。

 フィオナたちの指導騎士になるためでもあった。


 第二の騎士人生を歩む上で人に剣を教えることも悪くないかなとそう思ったからだ。

 もともと人を指導するのは得意分野だし。


 アルバス国王は俺の返答を聞くと、真剣な表情を向けてくる。


「そうか、君の意思は分かった。君は我々の恩人だ。希望は叶えたいと思っている」


 しかし、アルバス国王はここで一呼吸置くと。


「だが、()()()()()()相手に娘たちを託すという判断は簡単には出来ない。どんな人であれ、まずは相手のことを知ることが必要なのだ」


 アルバス国王はまた一拍置くと、静かに口を開いた。


「なので、これから君には試験を受けてもらいたい。指導騎士になるための試験をな」

お読みいただき、ありがとうございます!

モチベーションの向上にも繋がりますので、面白い・応援したいと思っていただけましたら是非ブックマークと広告下にある「☆☆☆☆☆」から評価をしていただけると大変嬉しく思います。


宜しくお願い致します。

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