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10話:ローレンス王国


「あっ、見えてきたわよ!」


 馬車に揺られること5時間が経過し、俺たちはようやく目的地のローレンス王国に到着した。

 次第に見えてくる巨大都市に胸が高鳴る。

 

「あれが、ローレンスの王都ガーディアンか……」


 高い外壁に囲まれたその景観は一見すると要塞都市のよう。

 最奥には都を象徴する巨大城が建っており、近づくにつれてその規模の大きさに驚く。


「うん、一応時間通りに着いたわね。後は――」


 ガタンッ!


「ん、なんだ?」


 突然馬車が停止する。

 かなり雑な止まり方だったので、驚いて思わず外を覗いてみると、数人の騎士が馬車を取り囲んでいた。


「な、なによ! どうなっているの一体?」


「あ、あの……お客様」


 馭者の人がキャリッジとを繋ぐ窓から声をかけてくる。

 内容は騎士たちが俺たちに用があるとのことだった。


「よ、用……って――」


「発見しました! やはりこの馬車だったようです!」


 垂れ幕がサッと上に舞い、騎士たちがぞろぞろとやってくる。

 どうやら俺たちの到着を待ち伏せていたみたいで。


「フィオナ様、ティアナ様、よくぞご無事で!」


「あ、あんたたちいきなり何のつもりよ! 迎えなんて呼んでないわよ?」


「国王陛下によるご命令で参りました。それよりも、至急王宮までご同行願います。陛下がお待ちです」


「えっ、お父様がってちょっと!?」


「お、お姉さま!」


 半ば強引に連れていかれたフィオナ。

 それを追うようにティアナも馬車から飛び降りる。


 そして馬車に取り残される俺。

 そんな中、一人の騎士が話しかけてきた。


「貴殿がボンド殿だな? 貴殿も陛下より呼ばれている。王宮まで来てもらおう」


「えっ、俺もですか……?」


「うむ」


 頷く騎士。

 まさかの俺も陛下直々に御用があるとのこと。


 というわけで、俺も馬車から降りると、門の前には優雅な装飾品で彩られた馬車が止まっていた。


「絵に描いたような馬車だな……」


 王国の国章が馬車の側面に描かれ、外装は宝石みたいな何かでコーティングされていて、やたらとキラキラとしていた。


 そんなまさに王族専用といった感じの馬車に乗り、俺たちは王宮へと向かうことに。

 その道中、一人ブツブツと呟きながら頭を悩ませている者がいた。


「やばいわね……」


 じっと一点を見つめながら、そう口にしたのはフィオナだ。


「どうしたんだ? そんな難しい顔して」


「待ち伏せされていたことよ。まさかこんなことになるなんて思わなかったわ。この焦りよう、もしかすると……」


 俺にはよく分からなかったが、何か彼女の中で引っかかることがあるらしい。

 フィオナは王宮につくまで、ずっとその調子だった。




 ♦




「お帰りなさいませ、フィオナ様、ティアナ様」


 王宮に到着すると、早速使用人が出迎えてくれた。

 立派な髭を蓄えた如何にも執事という風貌の老紳士だ。


 だが驚きはその先にあった。


 窓の外を見ると、大勢の使用人が奥に控えていたのだ。

 

 しかも、その数は一人二人なんてものじゃない。

 何十人と言った使用人たちがズラッと道沿いに並んでいた。



「「「「「お帰りなさいませ!!」」」」」


 

 お姫様二人が馬車から降りると、一斉の「お帰りなさいませ」が飛んできた。

 その圧だけで、身じろぎをしてしまうほどのインパクトが身体を通して伝わって来る。


「陛下が謁見の間で御待ちです。どうぞ、こちらへ……」


 恐らくこの人が執事長か何かの役職を持つ偉い人なのだろう。

 他の使用人たちと比べて手慣れている感じがした。


 何となくだけど。


 人の道を抜け、王宮内部に入ると、そこはもう夢のような世界が広がっていた。

 広々としたロビーに壁には高そうな絵画、天井にはギラギラと輝くシャンデリア、道行く道に置かれている骨董品の数々。


 まるで別世界のような空間が俺の目を奪う。


「ねぇ爺、これはどういうことなの? いきなり強引に連れてくるようなことをして」


「それは(わたくし)の口からは申し上げにくいことですので、直接陛下にお聞きした方がよいかと存じます」


「要するに口封じされているのね。理解したわ」


 俺が感動体験をしている脇では、慣れた会話が飛び交っていた。

 当然だが、二人にとっては見慣れた光景なんだよな……


「ここでいいわ。貴方はもう下がりなさい。他の使用人もね」


「かしこまりました」


 老紳士はフィオナの指示を受けると使用人を引き連れ、去っていく。

 止まった場所は巨大な扉の前。


 この扉の先に国王陛下がいるらしい。


(緊張するな……)


 フィオナたちとの出会いからとんとん拍子でここまで来てしまったから、今まで実感が湧かったが、ここに立つと自分が今からどれほどの人物と会うのかという自覚が芽生えてくる。


 というのも、ローレンス国王と言えば騎士を志すもの、騎士として生きる者なら知らない人はいないほどの有名人だ。


 初めは小国に過ぎなかったローレンスを騎士の国にまで発展させたローレンス王家。


 そして今、玉座に座っているのはその二代目であるアルバス=フォン・ローレンス。

 

 かつて大陸全土で起きた大戦争の英雄であり、その圧倒的な強さはまさに一騎当千だったという。

 そして剣一本で騎士の国ローレンスを大国にまで成長させた人物でもある。


 その功績からついた異名が騎士王(ナイトキング)

 二重の意味を持つその言葉は大陸を横断して他国にも広がっている。


 それどころか、その偉大なる軌跡は様々な歴史書に記載されており、有名人というかもはや偉人といった感じ。


 そんな生きる伝説とも言える人物とこれから面会するのだ。

 逆に今まで冷静でいられたことが不思議なくらいである。


「お父様、入ります」


 フィオナがノックをすると、勝手に扉が開扉する。

 

 最初に目に入ってきたのは部屋の奥まで続く長テーブルだ。


 その最奥に見えるは二人の騎士と手もたれに肘をつけながら、椅子に座る国王の姿。

 両隣には女騎士とガタイの良い男騎士が睨みをきかせて立っている。


(あの人がローレンス国王……)

 

 とてつもない貫禄だ。

 入り口からだいぶ離れた場所に座っているのに感じる圧迫感。


 このオーラは並大抵のものじゃない。

 

 まさに時代を築いてきた人間が放つに納得のいくレベルだった。


「失礼します」

 

 扉が開いた後、俺たちはゆっくりと部屋の中へと入っていく。

 部屋に入った途端、謎の緊張感が空間全体を支配する。


 部屋に入るのと同時に。

 奥に座る国王も椅子から立ち上がると、取り巻きの騎士を連れてツカツカとこちらの方へ歩み寄って来る。


「二人ともよくぞ、戻った」


 俺たちの前、距離として2mないくらいの場所で足を止めると、ギラッと光る眼差しを向けながらそう言う国王陛下。

 その一言でまた空気が一変する。


「た、ただいま……お父様」


「ただいま」


 二人がそういうと国王は小さく頷く。

 

 にしても、さっきからなんなんだこの謎の緊張感は……


 なんかもどかしさがあるというか、ざわざわする。


「あ、あのお父様――」


 均衡を破るかのようにフィオナが口を開いた、次の瞬間だった。



「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!! 二人ともよく無事だったなぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」



 国王は突然膝をつき、二人に抱きつくと、子どもみたいにデカい声で叫び出した。

お読みいただき、ありがとうございます!

モチベーションの向上にも繋がりますので、面白い・応援したいと思っていただけましたら是非ブックマークと広告下にある「☆☆☆☆☆」から評価をしていただけると大変嬉しく思います。


宜しくお願い致します。

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