第24話 バルセ街東門前荒野での戦闘 イルザ・ハーニッシュ
――バルセ東門前荒野
戦場は主に二人を中心に動いていた。
全身狼の毛皮で身を包み、狼の仮面を被った長身の男――ウルフマンの右拳が双頭の巨大な蜥蜴の背部に突き刺さる。内臓をぶちまけて絶命する双頭の巨大蜥蜴を一瞥すらせずに、ウルフマンは大地をまるで獣のごとき機敏な動きで高速で疾走し、次の獲物たる一つ目の巨人へ迫ると両手の鋭い爪でその頭部を粉々の肉片にまで切り刻む。
家ほどもある鬼が、純白の鎧に身を包んだ青髪の中年男性――アルノルト王国騎士長に地響きを上げつつも突進し、その頭頂部に鉄の棍棒を振り下ろす。
しかし、アルノルト騎士長の大剣が赤く染まり、空に幾多もの赤色の基線が舞う。
鬼の振り下ろした鉄の棍棒は細切れになり、それに一歩遅れて巨大鬼もバラバラの肉片となって地面に落下した。
「すごい……」
Bクラスハンター――イルザ・ハーニッシュの口から出たのは感嘆の声。
今、二人が易々と殺害したのは、あの深域の魔物。本来ならばチーム戦で挑むべき絶対的な強者なのだ。それをこうも易々と屠る。
「あの二人がいれば、例の新人が到着しなくてもこのまま行けるかもな」
ハンター仲間の一人がイルザに近づいてきて、そんな軽口を叩いてくる。
同感だ。そしてあのアルノルト騎士長曰く、あのカイ・ハイネマンはその彼さえも超えるというのだ。正直イルザごときには、その底が想像すらできない。
ともかく、現在、深域の魔物はウルフマンとアルノルト騎士長が倒し、他の雑魚魔物は、イルザたち他の冒険者が請け負うという役割分担となっている。この戦術は殊の外うまく機能し、押し寄せる魔物どもからバルセを守ることができていた。
「気を抜くのは危険だよ! アタイらの役目は、カイ・ハイネマンが来るまでの時間稼ぎ。長期戦になるだろうし、疲れたなら戻って休みなさい!」
「はいはい、相変わらずイルザは真面目だねぇ」
仲間は肩を竦めるとコボルトの集団に向けて走って行った。
「さて、アタイもいこう」
仲間たちにはこうは言ったが、イルザもこのときウルフマンとアルノルト騎士長がいれば、カイ・ハイネマンが不在でもこの危機を乗り越えられる。そう考えてしまっていた。
だが、あの深域の魔物がなぜこのタイミングでこの都市を襲ったのか。その理由を鑑みれば、そんな甘い期待など抱くべきではなかった。もっと気を限界まで張りつめていなければならなかったのだ。
そう。大抵、真の苦難は切り抜けたと思った時にこそやってくるものなのだから。
すいません。昨日、仕事が鬼の様に忙しく、家に帰って直ぐに疲れきって爆睡してしまいました。短いので本日もう一話投稿する予定です。(また疲れて、できなかったら御免なさい)
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