第39話 絶対の悪の挙動
???
それは果てが見えない巨大な空間とそこに置かれた一つの円卓。
血のように赤い床、頭上にはやはり真っ赤に染まった途方もなく広い空が広がっていた。
円卓に座すのは六席の超越者ども。
「ハンビのとこのパズズと、アンラの側近のアジ・ダカーハが消滅したって本当かい?」
ピエロ姿の男の言葉に、
「ああ、そう報告を受けている」
猛虎の頭部を持つ怪物、ハンビが両腕をくみながら頷くと、
「おいおい、ゲーム開始から十年と過ぎちゃいねぇのに、いきなりに連敗かよ」
赤色の肌の三面の鬼神が肩を竦めて茶化すように呟く。
「うんうん、少佐に過ぎないパズズはともかく、あの中将の三頭竜までやられたのは、流石にマジで洒落になんなくないですか?」
犬歯が一際長い赤髪の美青年の疑問に、
「まあねぇ、一応、限りなく不死に近い竜だったしぃ。妾でも、それなりに面倒に感じる程度には強いわよぉ」
額に二つの長い角に黒色の翼を持つ美女が爪を研ぎながらやる気なく相槌を打ちつつ、己の分析を述べる。
「で? アンラ、テメエのところの役立たずの三頭竜から戦況報告くらい入ってきてるんだろ?」
赤色の肌の三面の鬼神が、不機嫌そうに両腕を組んでいる全身に紅の幾何学模様が刻まれた少年――アンラに問いかける。
「いんや、どういうわけかまったく。ただ、あいつの最後のとびっきりの恐怖の感情だけは入ってきている。どうやら、相当こっぴどくやられたらしいねぇ」
「恐怖? その何者かがアジ・ダカーハを圧倒したってこと?」
眉を顰めてピエロが尋ねるが、
「だから、そう言っているだろっ!」
遂にアンラは、癇癪のような怒声を上げて、そっぽを向いてしまった。
「そう……」
ピエロも両手を頭の後ろで組んで真っ赤な空を眺めるだけで微動だにしなくなる。
「要するに、天軍の奴らに先を越されたってことだろ? その駄竜を討伐した神をぶっ殺せば済む話だ。まどろっこしいのは主義じゃねぇ! 次は俺が直々に行くぜ!」
赤色の肌の三面の鬼神が立ち上がり、首をコキリと鳴らすが、
「お馬鹿鬼、パズズのような雑魚ならともかく、妾達がゲーム盤にそう簡単に介入などできるわけないでしょ」
呆れたように、黒色の翼を持つ美女は三面の鬼神の言葉を直ちに否定する。
「いんや、ゲーム盤には今面白い駒がいるしね。アスラの現界も不可能じゃーないさ」
考え込んでいたピエロが話に混ざり、
「ほう、できるのかっ!?」
期待のたっぷり籠った表情を隠そうともせず、赤色の肌の三面の鬼神――アスラがピエロに詰め寄るが、
「ああ、上手くいけば僕ら全員の現界も可能かもしれない」
口笛を吹く犬歯が一際長い赤髪の美青年に、
「ほう、面白いじゃねぇか、どうやるんだっ!?」
詰め寄る三面の鬼神に、
「ああ、それはねぇ」
ピエロは顏を醜悪に歪ませる。それはまさに御伽噺にでてくる悪神そのものであった。
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