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ままならない心


 合流を果たした僕達は予定通りボウリングを行う。

「よっしゃ、またストライク!」

 及川は何をやらせても上手いんだな。

 第一ゲームからガンガンストライクやスペアを取り、他の追随を許さない。

 ほとんど及川の独走状態だった。

「あら、ターキーね。ようやくコツを掴めてきたわ」

 そんな及川を追うのが黒城さん。

 最初が壊滅的だったのは自分なりのやり方を探っていたためか。

 第二ゲーム辺りからスペアが増え始め、第三ゲームに至っては及川とそん色が無くなっていた。

「凄いね黒城さん。俺もうかうかしていられないな」

 追いかけられているのを楽しんでいるのか爽やかに笑う及川。

「フフフ、すぐに抜いてあげるわ」

 黒城さんも挑発的な笑みを浮かべた。

 で、残された二人はというと。

「ほっ、ギリギリガーターは避けられましたか」

 毎回一ピン倒すか倒さないかの姫神さんと。

「……また端が残った。これ、無理じゃない?」

 平均五、六ピン--時々スペアを出し、ストライクは未だゼロという僕がいた。

 及川と黒城さんは高レベルすぎてついていけない。

 なので必然的に僕は姫神さんと会話することが多かった。

「ん~、時宮君。何かコツはない?」

「もっと軽いボールにしたら? 速度よりも当てることを考えて」

 華奢な姫神さんはボールを離す際にふらついている気がする。

 あれでは安定しなくて当然だろう。

「でも、黒城さんより軽いボールを使うのはちょっと……」

 見れば姫神さんと黒城さんのボールの重さは一緒。

 どうやら無理をしているらしい。

「いや、姫神さん。変なところで張り合わなくても」

 スコアならともかくボールの重さなんて……

「でも、及川君は黒城さんを見てる」

 姫神さんの視線は及川へ向かっている。

「……」

 ああ、姫神さんは及川しか目に入っていないんだな。

 改めて突きつけられる現実に僕の心は軋みを上げる。

(南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経)

 胸中で題目を必死に唱えて持ち直す僕。

 落ちつけ、姫神さんは及川が好きなのは分かっていたことじゃないか。

 それでも諦めきれないから告白するんだろう?

「……姫神さん。軽いボールにしよう」

 僕は平静を装いながら続ける。

「及川は自分と対等以上な人でないと興味を持たない。ロースコアの姫神さんに及川が興味を向けることはないよ」

「あら? どうして及川君のことを知っているのように話すの?」

 僕の予想外に厳しい言葉に姫神さんは眼を大きく見開いた後、非難するような口調で僕を責める。

「分かるよ、僕には」

 何せ僕は一時、姫神さんが好きな及川のあら捜しをしていたからね。

 姫神さんに勝るとも劣らないぐらい及川のことについて僕は知ってるよ。

「まず僕に勝とうか姫神さん」

 僕は姫神さんに合うだろう軽いボールを渡す。

「そうでないと黒城さんには一生勝てないよ」

 一畳の堀を越えられない者がどうして十畳の堀を越えられようか。

 及川を振り向かせたいのであればまず僕に勝ってもらわないとね。

「……」

 あ、ちょっと僕に興味を持ったな。

 いつも周りに振りまく春の太陽のような温かい視線が、初夏の太陽のようなきつめの視線になっている。

 敵として、障害物として認識されただけのことなのに嬉しさを感じてしまうのは、僕は本当に姫神さんが好きなのだなぁと心の中で笑った。


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