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覆面姫と溺愛陛下  作者: ao
閑話
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魔女の導き、聖女の寿ぎ②

 翌日、朝早くから聖女に会うため転移で神殿を訪れた我は、聖女が居るであろう最上階へと向かった。

 聖女を現す白に金の装飾が入った扉を数回ノックする。


 返事はないようじゃの。中で待たせて貰うとするかの。

 勝手知ったるなんとやらで部屋へ入り込んだ我は、置かれたソファーに座り聖女が戻るのを待つことにした。


 グレンの菓子はうまいのう。毎日食べても飽きが来ぬとは最高じゃ!


 暇つぶしに取り出した菓子を口に運び飲み込んではまた食べるを繰り返していると、扉の前が騒がしくなった。


「聖女様、どうぞご休憩を!」

「……えぇ、そうさせて頂きますわ」


 部屋に入るなり、騎士と思われる男に抱き上げられた聖女がベットに寝かされる。


 我に気付かないほど焦っている様は見ていて滑稽じゃな。それにしてもあのように慌てて何があったのじゃ?

  探るように聖女を見れば、何かの術をはつどうしたのか魔力が枯渇していた。


「何じゃ、大層慌てておるから大病でもしたかと思えば、ただの魔力の枯渇か」

「――!! 何者だ!」


 何者じゃと聞かれても、魔女じゃとしか答えられんわ。騎士の癖に気付くのが遅すぎるとも思うがの。グレンのところの騎士でさえ、我が初めて城を訪れた時は警戒心を出していたぞ?


 今更過ぎる騎士たちの動きに、ついつい本音がポロリと出てしまう。


「……今更過ぎんか?」

「黙れ!! 貴様、ここが大聖女様の部屋と知って入り込んだのか?」

「うるさいのう。聖女の部屋だと知っていたから入ったのじゃ。そなたちと黙っておれ」


 パチンと指を鳴らし、サイレンスを発動すると男の口をふさいだ。口がパクパクしておるだけで動けるから心配せずともよいじゃろ。

 男から視線を逸らし、青い顔をしてベットに横になったまま動かない聖女に歩み寄る。


「さて、聖女よ。そなたに我はちと頼みがあるのじゃ……と、その前にマナヒーリング」


 具合の悪そうな聖女に話をするにしても、これではしんどいだろうと、とりあえず魔力回復魔法をかける。

 徐々に顔色が戻り始めた聖女は、ゆっくりと身を起こすと我に向き直った。


「……貴方様は……」

「我が名は、セルリリア・インクブス。精魔大樹林の魔女じゃ」

「魔女様……セルリリア・インクブス様……」


 我の名を何度も口ずさむ聖女が、ハッとしたように顔を上げたかと思えばベットから素早く降り、その場に膝をついた。


「お初におめもじかない恐悦至極にございます。わたくし、今代の聖女を務めさせていただいております。ベルリーニと申します。まさか、建国の祖のご友人であるセルリリア・インクブス様にお会いできるとは……感無量でございますわ」


 なんと、聖女には我とあやつが友人であった事を知られているようじゃ。アヤツが何か書き残したりしたのか? いや、いや、あやつがそんな面倒な事をするはずがない。


 頭の中でブンブンと首を振り、畏まったまま頭を下げ続ける聖女に思考を切り替える。


「そうかしこまる必要はないのじゃ、我がそなたを尋ねたのは頼みがあってのことじゃ」

「頼みでございますか?」

「そうじゃ! 実はの、我の愛しい子がこの国の王と結婚することになっているのじゃが、そなたの寿ぎをまだ受けていないと言う。それについては、数日後に其方を尋ねてくるはずじゃ。での、その時にちーぃとばかし協力して欲しい事があるのじゃ」


 気のない返事をする聖女に、我は前のめり気味に語った。

 ニアがグレンに思いを伝えられるよう聖女に協力してくれと――。


「では、わたくしが寿ぎを行う前に、ニアミュール様に国王陛下へのお気持ちをお伺いすればよろしいのですね?」

「そうじゃ。是非頼みたい。できるかの?」

「えぇ、それでしたら問題はございません」

「そうか、そうか、ではよろしく頼むのじゃ!」


 聖女の確約を得た我は、パチンと指を鳴らし次なる細工をするために王城のグレンの元へ向かった。


 執務室の窓を叩き、姿を見せればグレンはあからさまに我がまた来たと言う顔をする。

 ほんに可愛げのない奴じゃ。我がここまでしてやっておるに……。


「グレン。そういやそうな顔をするでないわ」

「……すまない」

「して、少し確認したいことがあるのじゃが。お前たちいつ聖女の寿ぎを受けに行くのじゃ?」


 我の問いにグレンが一瞬悩まし気な顔をする。

 もしかして、まだ決まっておらなんだか?


「エリオット」

「そうですね……一応調整はしているのですが、この書類をどうにかしませんと――」

「――と、言う事らしい」


 積み上がった書類を一枚一枚確認しながらサインをするグレンが、エリオットの言葉を引き継ぐように答える。


「何が、と言う事らしいじゃ。そなたニアと結婚する気はあるのか?!」

「当然あるに決まっている! 私がどれほどニアを愛してやまないのかリリア殿ならわかるだろう。どいつもこいつも私の邪魔ばかりしやが――」


 ブチブチと愚痴を零し始めたグレンを我は無視する。こうなっては、我の話も聞きそうにない。

 

 これを処理してからか……何か忘れているような? あぁ、そうじゃ聖女には数日内に来ると言うてしもうたではないか! まずいぞ、これはまずい。どうすれば……あ、そうじゃ。そうじゃ、別にこやつらが行く必要はない。我が聖女をちょ、ちょ、ちょっと、連れて来ればよいだけじゃ!


「グレンよ。三日後、ニアはここにおるのか?」

「ったく、あのクソ爺――あぁ、いるが?」

「そうか、ならば三日後我がそなたに良き者を連れて来るのじゃ!」


 ぱちくりと一度瞬きをしたグレンに「ではの」と手を挙げ我は、再び聖女の元へと飛んだのじゃ。

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