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覆面姫と溺愛陛下  作者: ao
閑話
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魔女の導き、聖女の寿ぎ①

 グレンとニアが想い合っていることは、何となく察している。その二人の憩いの時間をつぶしておるのも分かってはおるのじゃ。そう恨めしそうに我を見るでない、グレン! 我がこうしておるのは、愛弟子ニアに頼まれたからじゃ。誰が好き好んで馬に蹴られたいと思うか!

 まぁ、そんなことよりもじゃ。想い合っている二人が、未だ結婚できていない理由はとんとわからん。

 我が人の世を離れ、長き時間が過ぎた。想い合う二人が一緒になれぬのは哀れじゃ。そうじゃな、ちと聞いてみるか。


『のう、エリオットとやら。何故、あの二人はまだ結婚しておらんのじゃ?』


 締まりの無い顔をしたグレンの後ろに控えるエリオットが、肩を揺らし、驚いた顔で我を見る。

 はて? 我は何かおかしい――念話をつこうてしもうたようじゃ。


『すまんの。つい念話をつこうてしもうた。思うだけでよい。答えて欲しいのじゃ』

『……そうですね。えっと、実は――』


 なんと、今世のニアの父はそれほどまでに娘を溺愛しているのか。それで反対されておると……しかも、神殿の聖女の寿ぎを貰わねば結婚できないとは……なんと面倒な……。

 三老? そんなご隠居までおるのか!

 

「……ありえぬ」

「……? リリアさん、どうかなさいましたか?」

「いや、なんでもないのじゃ! そう、なんでもない」

「そうですか?」


 つい、本音がぽろりと零れてしまったのじゃ。気をつけねば。

 我としては唯一の生き残りであり、愛弟子のニアの事は可愛い。我ができうる限り、後押しをしてやりたいところじゃ。さて、どうしものか……。


 夜になり、ニアが家へ帰ると言うので共に城を去る。

 去り際のグレンのあの顔はいつ見ても面白い。

 馬車に揺られるニアの横顔をみながら、ふと思い出した。


「のう、ニア。そなた、グレンに好きじゃと言わぬのか?」

「え、あ! り、リリアさん」


 この挙動不審振り、是非グレンに見せてやりたいところじゃな。そこまで思っておるのなら、さっさと告げればよいものを……。


「その、こ、告白したところで、わ、私たち政略結婚なんですよ? グレン様に嫌われていたらと思うと……」

「ナイジャロ」


 ニアはグレンの何をみておるのじゃ……哀れじゃなグレン。全くニアに気持ちが伝わっておらんぞ? と言うか、以前好きだとあれほど言うておった気がするが……あぁ、ニアは気を失っておった。


「や、やっぱり、伝えた方がいいですよね?」

「まぁ、伝えてやればアレの事じゃ、泣いて喜ぶじゃろ」

「いやいや、ないですよー」


 はぁ、この娘は……何故ここまで内気なのじゃ。うーん。これでは何時まで経っても我が解放される事は無い気がする。そうじゃ!!

 

「そうやって、何時までもグジグジしておるのはダメじゃ! そなたに師匠として課題を出す。これが出来ない場合、我とは今生の別れと思え!」

「えぇ!」

「良いな?」

「うぅ、はいぃ」

「よし、課題は『グレンにそなたの思いを伝える事』じゃ!」

「ちょ! はっ?」


 指を鳴らし、馬車から住処の家へと移動する。


「我にはかなわぬ恋じゃったからの。せめてニアだけは幸せになって貰いたいものじゃ」


 グレンによく似た男の顔を思い浮かべ、果たせなかった思いをそっと胸にしまった。


 あの日から二週間、我はニアの元へは行かず二人の様子を監視していた。その間、ニアが我の課題をこなすことはなく。ただただ、甘い二人の会話を聞くはめになっておる。


『ニア、このお菓子好きだろう? ほら、あーん』

『ぐ、ぐぐぐぐれんさま……じ、じじじ自分で食べれますから』


 カチャカチャとした音がなっている。


『くっ、くくく。ニアはいつ見ても可愛らしいな』

『もぅ、からかわないでください』


 これで嫌われていると思い込んでいる方がどうにかしていると言うものじゃ。全く、早う告げれば良いものを……。そうじゃ、我が仕組んだと気付かれぬよう、何か策を考えるか!

 うーーむ、何か良い物は――

 ………………

 …………

 ……

 

「そうじゃ! 聖女じゃ!」


 ハッと思いついて立ち上がる。

 聖女の寿ぎを利用すればいいと思いついた我は、早速移動しようと窓を見た。そして、考えに没頭するあまり、日が暮れていることに気付いた。


「はぁ~、年を取りすぎるとダメじゃな。気が長くなりすぎておる。まぁ、良い。明日、聖女の元へいくとしよう」


 ソファーに座り直し、空間からグレンに貰った菓子を取り出す。

 もぐもぐと咀嚼する度、ほんのりと甘い生地の間から甘い蜜が染み出してくる。


「むはぁ~旨いのじゃ!」


 この一瞬のために生きていると言っても過言ではない。そう思いながら、我は無心で菓子を貪り食った。

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