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覆面姫と溺愛陛下  作者: ao
本編
59/67

精魔大樹林㉓ 最終決戦②の場合 グレン/センス

 センスたちが位置についたと言う合図が、鏡の反射を利用して知らされた。

 ホルフェスの奥から二度瞬く光を確認したニアが、自ずと私と魔女リリアを守るための結界魔法を施してくれる。


「アストラルバリア」と、彼女が唱えると同時に、ほんのりと温かい魔力が私を包みこむ。水晶から目覚めて以降、ニアには驚かされてばかりだ。


「参りましょう。グレン様」

「あぁ」


 あのタドタドしいニアも可愛くはあったが、今の率先して動くニアも美しく聡明でいい。

 などと、見惚れている場合ではなかった。

 正直な本音を言うなら、今すぐにでもニアにも魔女リリアにはこの場を離れて欲しい。私自身に力があれば、彼女たちを従わせることもできるだろう。だが、今の私では言ったところで、引き下がってはくれない。その事実が、私に重くのしかかっている。

 己の力がないばかりに、愛する女性の身を危険だと分かる置かせてしまった。もっと、私に力があればと、精魔大樹林に来て何度も欲した力を再び思う。

 

「そなたら、何故出て来た!」


 厳しい言葉ながら、思いやり溢れる魔女リリアの言葉に勇気を貰う。

 今のホルフェスに私が敵う訳はない。だが、必ず一矢報いる。


「リリア殿、足手まといなのは分かっているが、是非加勢させてもらいたい!」

「わたくしたちが引きつけますからその間、魔力回復を――マナヒーリング」

「ふん。バカ者どもがっ。……流石……じゃ!」

「ニア、出来るだけ私の後ろへ」

「はい。グレン様」


 まずは一手と行きたいところだが、二人がいるのは上空だ。只人である私が手を出せるはずもない。であれば、ニアに向かう魔法を防ぐべく動こう。冷静であることを常に心がけながら、動けば必ず活路は見いだされる。


 魔女リリアとホルフェスの動き注視しながら、ニアの動きにも気を配る。


「ホーリーハインド」


 ニアの声が聞こえたかと思えば、どこからか現れた金色の光を帯びた二本の鎖が、ホルフェスの身体に巻き付いた。ギリギリと締めるように拘束する鎖に、魔女リリアがニヤリと笑い雷の魔法を見舞う。

 初めて組むはずの二人が、一糸乱れぬ連携を見せた。

 バリバリッとなる雷がホルフェスの身体を穿つ。


「ふはは、なんと拙い魔法だ」と、一言漏らしたホルフェスは、己を取り巻く雷と拘束する鎖を気合いだけで引き裂いた

 だが、しかしそれを見越していたらしいニアが、間髪入れず、シトシトと降り注ぐ雨のような眩い光の雫を降らせる。

 

「良いぞ、そのまま再び拘束じゃ!」


 ニアの動きを褒めつつ魔女リリアが、ニアの使った金色の鎖によく似た魔法を使い再びホルフェスへと巻き付ける。一時的とは言え、ホルフェスを止めるほどの魔法を繰り出す二人。

 一方、その魔法を全身で受けるホルフェスは、忌々しそうに表情を歪めている。


「くっ! こざかしい、雑魚どもめっ! 貴様ら等直ぐに灰にしてくれるわっ」

「ふん。雑魚はどっちじゃ。お前ごとき我と弟子で十分じゃ!」


 ホルフェスが、鎖を引き千切るよりも早くニアと魔女リリアの生み出した氷の槍が、ホルフェスの身体を貫いた。

 緑色の血を垂れ流し、ふらふらしながら高度を下げるホルフェス。


「やった、のか?」

「いいや、まだじゃ。奴の本性はこんなものではない。本性を出す前に沈めるのじゃ!」

「はい」


 魔女リリアの言葉に頷いたニアが、私の横に膝をつくと両手を組んだ。上空では魔女リリアも同じく、膝をつき両腕を組んでいる。

 二人の祈る姿に私は、この世の安寧を願い祈りを捧げる聖女を思い浮かべた。


 美しい。なんと荘厳で、崇高な姿なのだろうか。


 エリオットを救った時と同じく、背に流れ落ちた銀髪がふわりふわりと揺蕩いはじめ、彼女の周りに発光するワタゲのような光の玉が舞う。白いローブがはためき、ここが神殿であるかのような錯覚を起こす。


 ギリギリと歯を鳴らすホルフェスが、立ち上がりニアたちへ手をかざすと同時に、黄金にも似た煌めく瞳をホルフェスへ向けたニアと魔女リリアが「「サンクチュアリランス」」と被るように唱えた。


 天空より降り注ぐ巨大な二本の槍が、捻じれ絡み合い美しい一本の槍になると流れ星と同じような速度でホルフェスを脳天から穿つ。


「ぐがhぽjlmぁや!!」


 地に突き刺さる形で止まった槍は、ホルフェスを頭から貫きその身を串刺しにしていた――。



******



「隊長、今が好機かと!」

「行くぞ」


 陛下たちの様子を伺っていた部下の一人が、私を振り返る。部下の言葉に頷き、大木にいるユースリア・ベルゼビュートの元へ移動する。ホルフェスが戦いに気を削がれている間に確保するのが私たちの仕事だ。


 うっそうと生い茂る下草を出来るだけ音を鳴らさないよう踏みながら、これまでの疑問を一つ、一つ、思い浮かべては考査していく。


「センス殿」


 いつの間にか合流していたエリオット殿に名前を呼ばれ、思考を切った私は部下たちを見回した。


「これより、ユースリア・ベルゼビュートを確保する。各々指示通りに動け!」


 頷いた部下たちが、すぐさま大木にロープを巻き付け足場を作った。身軽で知られるライリーが「じゃ、行ってきますよ」と、言い残し行動を始める。


 ユースリア・ベルゼビュートが寝かされている場所は大木の中腹当たりだ。

 そこまでに使用するロープは全部でニ十本以上になるだろう。既に他の者たちが、ずり落ち防止の枝を結びつけたローブに重りとなる石を結び付けているから、数に問題ない。

 後は、上手くやり取りができればいい。そう思いながら見つめる先で、次々と上へ放り投げられるロープをライリーは器用に結び、足場を作って登って行った。


「エリオット殿、陛下方の方は?」

「ニア様と魔女リリアが善戦しています。ホルフェスにかなりの傷を負わせました」

「わかった。ライリーの方は八割がた登り切っている」

「そうで――ハッ!」

 

 陛下たちの方を見たまま私の答えようとしたエリオット殿が、不自然に言葉を切ると空を見上げた。

 そして、慌てたように「全員、その場に伏せろ!」と彼らしからぬ声音で叫んだ。


 理由を問う間もなく、上空から光り輝く巨大な槍がホルフェスを巻き込み音もなく突き刺さる。――次の瞬間、耳を劈き、身体ごと持っていかれそうになる突風が私たちを襲う。

 地に伏せてなお、持っていかれそうになるからだを必死に地へ擦り付けた。


 ふっと風が緩み、顔を上げた私は急ぎ部下たちの安否を確認して、木の上にいるであろうライリーを仰ぎ見た。

「ライリー!」と名を呼べば、すぐさま彼は「大丈夫です。ユースリア・ベルゼビュートを確保しました。これよりローブで降ろします」と返す。


 それにいち早く反応した部下たちが二人一組となり、ライリーの垂らしたロープを手に持つと踏ん張った。それを上から見ていたライリーの「降ろします」と言う声が聞こえ、ロープにつながれたユースリア・ベルゼビュートの身体が宙に放たれる。


 それから五分ほどして、ユースリア・ベルゼビュートの身体が私たちの元へ届く。

 ピクリとも動かないユースリア・ベルゼビュートは、果たして生きているのかすら怪しい。側に居たエリオット殿も同じ考えなのか、寝かされている男の首元に指を当て脈を確認していた。


「ロープを切れ、それから来ている服を脱がせろ」

「はい」

「手首や、首、足、全身くまなく探せ。衣服も調べるのをわすれるな」


 キリキリと指示を飛ばしながら、成り行きを見守る。両手、両足、首、頭、舌、眼球など、全てを無し。後残るは布で隠された下腹部と背中のみだ。

 布を持ち上げ覗き見た部下の「下腹部にはありません」と言う報告に、本当にあるのかと疑いを持ってしまう。


「残るは背中だけか……うつ伏せに」

「「はい」」


 部下たちが二人がかりで彼の身体をうつ伏せに返す。軽い音を立て、現れた背中には、青白い肌には似合わぬ禍々しい魔法陣が浮かんでいた――。

すみません。文字が行方不明になりまして、読み難いかと思います。

少し時間をおいて読み直して修正します。

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