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覆面姫と溺愛陛下  作者: ao
本編
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精魔大樹林㉒ 最終決戦①の場合 グレン・フォン・ティルタ・リュニュウス

 魔女リリアとニアの関係が気になるところだ。が、ホルフェスのババァ発言に怒り心頭の魔女リリアはこれでもかと言うほど、魔法を展開し打ち出している。

 一方のニアはその様子をハラハラとした面持ちで魔女リリアを見つめていた。


「あぁ、リリアさん危ないですよ」


 ニアの焦る声に驚きながらも魔女リリアを見る。するとホルフェスから放たれたと思われる青紫色の雷が、彼女の左右を走り抜けるところだった。


 危うく魔女リリアが打たれるかと思った。

 ……桁が違う。私も何か出来ないかと残ってみたが、ただの足手纏いでしかないのかもしれない。直ぐにここを離れるべきだ。だが、ニアはきっと……


「グレン様、お願いがあります」


 ニアの呼びかけに、思考を止めて顔を向けた私は、彼女の瞳に吸い込まれ、息を呑んだ。


「っ……」

「グレン様?」

「あ、あぁ。ど、どうした?」


 こんなことは初めてーーいや、以前にも同じことがあった。そう、エリオットが襲われて大怪我を負った時だ。


「グレン様、今からわたくしが言うことをよく聞いてくださいませ」


 言葉が出てこない私は、頷くことで了承を表す。


「不敬とは存じておりますが、事は一刻を争います。まず、確認なのですが、グレン様の腰にある剣の名はレアニマシオンで間違いないでしょうか?」

「あぁ、そうだ。そうだが、何故ニアがそれを知っている?」

「申し訳ございません。今は説明している時間がないのです。後ほど、後ほどしっかりとご説明させていただきますから、どうか今は聞かないで下さいませ」


 冷静になれと己に言い聞かせ、一度目を閉じるとニアへ視線を向けた。

 彼女が後で話してくれると言うのなら、信じて待つのみだ! と、心の中で意気込んだのも束の間、彼女はとんでもないことを口にした。

 

「ありがとうございます。では僅かな間で構いません、そちらのレアニマシオンをお借りしてよろしいですか?」


 魔剣レアニマシオンは使う事に制約があり、詠唱文言をしらない者には扱えない代物だ。反旗を翻し、王族を殺し国を乗っ取ろうともこの剣が私の手の中に有る内は、何人たりとも神殿や各国に王として認められない。

 実際、私も戴冠するときにその文言を覚えさせられたほどだ。


「ニア、待ってくれ、これをそなたが使う事はできないぞ?」

「はい。分かっています。わたくしはただ、その剣に魔力を流したいだけなのです」

「魔力……ですと?」


 私たちのやり取りを聞いていたセンスが、驚いた表情で会話に割り込んだ。


 あぁそう言えば……ニアが魔法を使えると言う事をエリオットと私は知っているが、センスは知らなかったな。

 ニアが魔力を魔剣に流すと言ったのは、私が魔剣を使うことになるからだろう。

 だが、初代様以降、王位を継ぐ者に引き継がれて来たこの魔剣が、その力を示したことはない。確か……数代前の王が、魔獣の討伐に魔剣を使おうとして失敗した記録が文献に残っていたな。

 私に魔剣が答えてくれるかはわからないが、ニアを守り、魔女リリアの一助になるのであれば使わない訳にはいかないだろう。


 思考に陥っていた私は、頭をガシガシ掻くセンスへと視線を流した。


「後で、説明してくださいよ」

「あぁ、わかった」


 ニアに剣を渡しながら、センスに答える。剣を受け取ったニアは、それを大事そうに抱え、眼を閉じた。


 暖かい魔力がニアを中心に波打ちながら広がって行く。ゆっくりとした動きだったそれは、徐々に感覚が狭まり、波紋の中に白とも金ともつかないキラキラとした小さなワタゲが揺蕩う。と、それらは全て魔剣レアニマシオンへと吸い込まれていった。 


「大丈夫です。この子はちゃんとグレン様を慕っています」

「そ、そうか」

「これ、ありがとうございました。それで、早速なのですがお話しを聞いていただいてもよろしいでしょうか?」

「あ、あぁ」


 ニアの考えた作戦はこうだ。

 魔女リリアが攻撃を仕掛けている内に、ニアと私でホルフェスを気を逸らす。

 その間に木の上に寝かされているベルゼビュートをセンスたちが確保すること。ベルゼビュートを確保したら、彼の首、手首、胸などを調べ赤もしくは黒の魔法陣が施された法具がないかを確認する。法具があった場合は、即座に壊すこと。ない場合は、体内にある可能性があるためニアもしくは魔女リリアを呼ぶ。


 次にホルフェス戦だが、これについては私の魔剣レアニマシオンを使いたいそうだ。彼女曰く、魔剣レアニマシオンは、再生と復活、蘇生を意味する魔剣である。魔人であるホルフェス――エリゴールには、この魔剣で受けた傷を癒すことが出来ないと言う。


「ニアミュール嬢。何故、奴が傷を癒すことができないと言い切れるのですか?」

「魔人と名の付く悪魔には、再生や蘇生、復活と言った光魔法系統の魔剣や魔法は天敵……と言いますか、唯一の弱点になるのです。神殿にある文献にも書かれている通り、神に背いた悪人の成れの果てが魔人と言われていますから」

「なるほど……」

「陛下、インフォルマーツ揃いました」

「わかった」


 整列するインフォルマーツの面々の顔を見渡し、エリオットへ視線を向ける。彼が強く頷いたのを確認して、センスを見ればこちらもドンと胸をたたいた。

 最後に、ニアへと向けば「全員揃って、王都へ帰りますわよ」といたずらっぽい笑みを浮かべる。


「皆、己の命を惜しめ! 誰一人、死ぬことは許さん」

「「「「「「はい!」」」」」」

「これより作戦を決行する! センス、エリオットはこのメンバーを二班に別け、それぞれの配置へ着け。ニアの合図を機に、ベルゼビュートを確保せよ!」

「「はっ!」」


 気合の籠った返事が上がり、それぞれが配置につくため移動を始めた。

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