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覆面姫と溺愛陛下  作者: ao
本編
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精魔大樹林⑨ 魔女との交渉の場合 グレン・フォン・ティルタ・リュニュウス

 不意に窓の外へ視線を向けた魔女リリアがぽつりと「お連れさんが来たようじゃ」と漏らした。それから数分後、玄関先が騒がしくなりエリオットが様子を見に行く。

 その間、私と魔女リリアは世間話などをして過ごした。


 遠慮気味にノックされた扉が開き、エリオットがセンスと共に戻る。が、二人の表情が非常に険しい。


「二人ともどうした? 何かあったのか?」

「……そ、それが……」

「何とお伝えすればいいのか……」


 言葉を濁し、瞳を揺らす二人に首を傾げた。


「一体どうしたと言うのだ。……はっ、まさか! ニアに何かあったのか?」

「いいえ、ヴィルフィーナ公爵令嬢には何も! 何もありません。ただ……」


 焦り立ち上がる私を止める二人の声が重なる。

 そして、閉じたはずの扉が、外から開けられた――。


「……なっ、何故ここに!」

「ご無事でなによりです。婚約者(仮)(グレン陛下)


 私の顔が引き攣るよりも早く、ヴィルフィーナ公爵が胸に手を当てた。

 頭を下げる彼の背後には、目の錯覚でなければ人一人余裕で殺せそうなほどのドス黒いオーラが立ち上っているように見えた。


「お義父上、こんなところまで遠路はるばる……(何故、娘馬鹿がここにいるんだ)」

「いやいや、娘が攫われたと聞いていてもたっても居られず来てしまったよ。アハハハ(貴様がしっかりと守らないから、私たちがでばることになったんだ。このマヌケめ! ニアを取り戻したら、即刻婚約を破棄を申請してくれるわ!)」

「そうか。苦労を掛ける(残念だろうが、ニアとの婚約破棄だけはしない)」


 本音を隠した言い合いを見ていた魔女リリアが、不思議そうに頭を傾げ「この者らは、何故本音で語らぬのじゃ」と問いかける。

 苦笑いを浮かべるしかないエリオットとセンスは、ヴィリジット辺境伯へ助けを求めるように顔を向けた。


「ルーゼよ、それぐらいにしておけ。して、そちらのお嬢さんはどなたかの?」

「……チッ」

「ふむ。我は大魔導士にして夢寐の魔女、セルリリア・インクブスじゃ! リリアと呼ぶことを許そう」


 ヴィリジット辺境伯の声に、再び無い胸を張った魔女リリアが鷹揚に答える。このやり取りに既視感を覚えるのは、つい先ほど同じような名乗りを聞いたからだろう。


「これはこれは、夢寐の魔女リリア殿。ご紹介ありがとうございます。儂は、リューセイ・ヴィガ・ヴィリジット。この国で辺境伯をしているものじゃ。そして、隣のは儂の義理の息子に当たる――」

「ルーゼクリュシュ・ジュゼ・ヴィルフィーナと申します。魔女リリアに、拝謁賜り恐縮でございます」

「ほうほう。そうか、よしなに頼むぞ」

 

 互いに名乗り終え、全員でソファーに座る。

 

「言いたいことは山ほどあるが、何時までも時間を使う訳にはいかん。相手はどうも急いでいるようじゃ。ここで少し情報のすり合わせを行うとしよう」


 ヴィリジット辺境伯の宣言に全員が頷き、自分が持つ情報を出し合う。協力を願うつもりの魔女リリアは、静かに話を聞いていた。


「ユースリア・ベルゼビュートが、今夜魔法陣を起動させるのは間違いんだな?」

「えぇ、間違いないでしょう。本人がそう言っておりましたから」


 確認を取った私に、ヴィリジット辺境伯が頷き答える。ヴィルフィーナ公爵もまた頷いている事から、間違いないとみていいだろう。

 しかし、ベルゼビュート側の動きが速すぎる気がする。奴の目的はなんだ? ニアだけならまだしも、パーシリィや他の者たちも捕えていると言う。彼女たちを使って何をするつもりだ? 

 見えてこないベルゼビュートの目的に頭を悩ませている間に、話は進み――。


「洞窟内にニアが囚われている可能性が高いと考えるが、婚約者(仮)(グレン陛下)はどう思う?」

「確かに、可能性は高い。だが……洞窟に居るようには思えんのだ」

「婚約者殿を連れ出した方法がわからないからですか?」


 義父に陛下と呼ばれているが、何故だろう全く敬われている気がしない。と、今はそれどころではない。まずはニア救出を優先させるべきだ。


「私としては、何をおいてもニアの救出を最優先とする。ニアを取り戻した後にセプ・モルタリアを丸ごと潰したくはあるが、現状難しいだろう」


 話し合いも終盤に差し掛かり、今回の目的を改めて言葉にする。

 と、そこへこれまで静かに聞いていた魔女リリアが「セプ・モルタリアとはなんじゃ?」と言葉を挟む。

 同じ魔女である彼女が知らぬはずはないだろうと思っていたのだが、どうやら彼女は知らないらしい。

 彼女は長く寝ていたらしいので知らなくてもおかしくはない。だが、セプ・モルタリアについて今から説明するとなれば、かなりの時間がかかるのは明白だ。


「リリア殿、お願いしたいことがある。対価としてこちらは、リリア殿が望むものを出来る限り用意させていただく。どうだろうか?」

「皆まで言わずともよい。我にセプ・モルタリアを潰して欲しいのじゃろう?」

「セプ・モルタリアについては出来ればで構わない。私が望むのはただ一つ、ニアミュール嬢の救出とユースリア・ベルゼビュート並びに、ホルフェスと名乗る男の捕縛」

「よかろう。その話乗ってやる」


 魔女リリアは、私の望みを聞きニヤリと笑みを浮かべた。

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