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覆面姫と溺愛陛下  作者: ao
本編
34/67

噂の事件、その㉙ ベルゼビュート ロバート・サルジアットの場合

 ベルゼビュートと言う家名に、わしは声を荒げずにはいられなかった。


「ベルゼビュート? サルジアット卿?」


 わしを見つめ、陛下が訝し気に顔を歪め話を促す。頭に登った血を下げるように数度、深く息を吸い吐く。気持ちが落ち着き、漸くわしはベルゼビュートについて話す。


「これは、わたしがまだ冒険者をしていた頃の話です」と前置きする。


 冒険者になり十年ほどが経った頃。ある日冒険者ギルドから緊急のクエストが発令された。

 クエスト内容は、”亜竜(ワイバーン)の群れの討伐”だった。

 この国の隣にあるセウベル王国にて、大量の亜竜が発生し国を襲っているという話を聞き、私は急ぎセウベルを訪れた。


 国境を跨ぐなり、見える景色が一変した。

 黒く渦巻いた空を、亜竜の群れが舞い、地上にあるものへ炎を吐き、家が燃え、それから逃げ惑う人々を襲い食らう。

 この世の地獄かと思われるほどの光景に、わしは思わず神へ祈りを捧げたほどだ。


 亜竜の群れの討伐は、各国に所属する冒険者ギルドから集まったBランク以上の冒険者たちによって行われた。最初こそは、こちらが優勢だった。

 だが、倒しても倒しても減らない亜竜に、皆が疲れミスが増え、討伐が終わった時には、笑えないほどの人数しか残っていなかったのだ。


 それでもなんとか倒しきり、国を救った英雄たちに会いたいと言うセウベル国王の言葉に、わしたちは王都を訪れ王への謁見を済ませた。

 後は各自が国へ帰り、ギルドに報告して終了になると言う状況下で、わしたちはとある噂話を耳にすることになった。

 とある宿で、他の冒険者たちは酒場や、ギルドで……皆が口々に噂するのだ。


『ベルゼビュート大公家が、今回の亜竜を呼んだのだ』と。


 噂話を聞いたわしたちはすぐさまギルドに詰めよった。そして――。


「ギルドマスターがこう言ったのです。『今回の件は、ベルゼビュート大公家のご子息で在られるスルーリガ様が、()()()()()()の亜竜の魔石に魔力を注ぎ込んだために起きた事である』と……」

「な、ん、だと? 誤って?」

「陛下の反応が当然でありましょう」


 陛下の反応は常識をわきまえている証だ。

 正直、わしですら、同じように反応した。


 幼い子供でも当然、知っている事だ。

 魔獣から抜き取った魔石には、その魂が宿ると言われている。魔石に宿った魂を浄化して、わしたちが使う魔道具へとするために聖女様がいらっしゃる。

 だが、スルーリガなる人物は、聖女様の祈りを受けていない魔石に魔力を流した。結果、魔石の力に反応して、その種族が仲間を――魔石を取り戻そうとしてスタンピードが起こったのだ。


「大公家の子息が知らぬはずはないだろう?」

「えぇ、わしも同じように考え、そして、生き残った皆で、調べました」


 一度言葉を切り、細く息を吐き出した。

 固唾を呑んで耳をそばだてる陛下の喉元がゴクリと動く。


「知り合いの女冒険者が、大公家の使用人にしこたま酒を飲ませ、聞き出したことですが『スルーリガ様が、実験のために行った』と言う証言が取れております」

「ならば、国王が断罪したのではないのか?」


 首を振り否と答えたわしを見る陛下の目が、大きく見開かれる。


 確かにあの時、わしたちは国へその事を伝えた。だが、返ってきた答えは大公家を庇うものだったのだ。王家が出したその答えに納得ができはずもない。しかし、諦めるしかなかった。

 しがない平民でしかも他国の民であるわたしたち冒険者が、セウベルの先王弟に敵うはずもなく、失意のままその名だけを記憶に残し帰郷した。

 それから十年ほどが経ち、ある日突然セウベル王国は滅ぶ。理由は、ベルゼビュートが関わっているとされているが、未だに詳しい事は判明していない。


「ベルゼビュートと言う家名は、この世界で唯一亡国セウベルの元大公家にのみ使われていました。亡国セウベルが滅びるきっかけとなったこの名は忌み名として、今も元セウベル国民には語りつがれているのです」

「ベルゼビュートに、セウベルか……」


 知る限りの事を陛下にお伝えしたわしは、聖女様の元へ向かうべく扉へと向かう。退室の挨拶代わりに「どうか、お気を付けください。奴らは命を容易く手折ります」と、当時感じたままの言葉を伝え一礼する。

 顔を上げたわしに、陛下は深く頷き、「情報に感謝する」と礼を言って下さった。


短くてごめんなさいー!

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